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第44話 ラシエル

「まさか、一歩も動かせねぇとか……

 あーカッコわりい!!」


 ラシエルさんは、なんというか、気持ちいい人だ。


「カゲテル自身は、どれくらい強いんだ?」


「えーっと……」


「今お相手したスライムと、まだ出していないスライムの全てを合わせたくらいの力です」


「うおっ!? しゃべるスライム!!

 全部足した……さっきの奴らを?

 ……カゲテル」


「はい?」


「頼みがある。

 外で俺と戦ってくれ」


「え、あ、はい」


 急に調子が変わるから戸惑ってしまった。

 ひどく真剣な眼差しで見つめてくるから思わず返事をしてしまったけど、大丈夫だよな俺……


『大丈夫ですよ、本気の度合いによりますが、互角以上には渡り合えます』


『信じてるぞー』


『お任せください』


 街から少し離れた平原、そこでラシエルさんと戦うことになった。

 スライムはなしだ。

 俺は使い慣れた片手剣を構える。


「剣で良いんだな?」


「はい、一番得意なはずです」


「ははっおもしれぇ答えだ。

 Sクラス冒険者、音斬りのラシエル胸を貸してもらうぜカゲテル!!」


「よろしくおねがいします!!」


 コレがSクラスの本気……

 さっきとは、明らかに違う。

 

 ドンッ!


 土が爆発した。

 ラシエルさんが飛び込むことで、足元が爆ぜた。

 光のような一閃が、俺に迫ってくる。

 疾い!

 穂先を剣で払う、重い!

 まるで穂先が生き物のように剣に絡んでくる。

 このままだと剣を落とされる、巻き落としだ。

 こちらも剣を捻り、槍を弾く、突進から避けるために背後に飛ぶとラシエルさんは大地を蹴りピッタリとついてくる。

 うってかわって無数の突きがまるで津波のように襲いかかってくる。

 剣で受けるが、コレは上手くない。

 このままでは防戦一方。

 ラシエルさんはこちらの間合いの外から一方的に攻撃を続けてくる。

 剣で良いのかと言われた理由がわかる。

 前に出ようにも突きの弾幕がそれを拒む。

 突然目の前から槍の弾幕が消え、その向こうにいたはずのラシエルさんがいない……

 横だ!

 凄まじい螺旋づきが横合いから打ち込まれる。


 ここしか無い!


 俺はその槍を掴み引き寄せ、剣を首元に添える。


「そこまで!!!!」


 ジンゲンの大声が響く。


「……これほどか……」


「ラシエルさん?」


「カゲテル殿、非礼を詫びる。

 思い上がっていたのは私の方だった。

 素晴らしい経験をさせてもらった……

 君の実力はこのラシエルが認める。

 ……正直、こうも一方的に負ける事があるとは……

 いや、世界は広いな……」


「一方的だなんて……」


「最後の一撃、俺の渾身の一撃だった……

 まさか掴まれるとはな!

 しかも、まぁ、なんという馬鹿力だ!

 おかげでこうだぞ」


 見せてもらった手のひらは、ズタボロで血まみれだった。

 直ぐに回復魔法で治す。


「凄いレベルの回復魔法……

 本当は魔法も使えるんだろ?

 いやはや、もう君は一人で軍だな……

 おかげで人間にも光明が見えたがね!

 それにしても、回転する槍を握るのは、辞めたほうが良い、止められた俺が言うのもアレだが、俺の師匠相手なら手が吹き飛ぶ……よな? 多分?」


 ラシエルさんは何かを思い出しながら頭の中であーだこーだと考えている。

 その様子がなんだか面白くて思わず笑ってしまった。


「ふふ、わかりました。次からは何か対策を考えます!」


「そうだな、その方が良い」


 それからジンゲンとケイジもラシエルさんと戦った。

 結構粘ったけど、最終的にはラシエルさんが危なげなく勝利していた。


「驚いたな……Aクラス成り立てとはレベルが違うぞ」


「いえいえ、やはりSクラスの高みは高い!

 やりがいがあります」


「Sクラスと数合に渡って戦えるとは……夢じゃないのか?」


「あれ、ローザはやらないの?」


「私は、人に向かって矢を放つのはちょっと……」


「ほほう、私に当てるつもりとは、相当な腕前……いや、なんだろうな……。

 反省したのだった。ちょっと打ってくれるか?」


 ラシエルさんが近くの石を拾って、思いっきり投げた。

 一瞬で見えなくなるほどの剛速球。

 即座にローザが石を撃ち抜く。

 なんか、レーザーみたいに撃ち抜いたんだけど、矢だよね?


「アハハハハハ、こりゃとんでもないパーティだな!」


 ラシエルさんも笑うしか無いみたいだ。


「はははは、あー笑った笑った。

 さてと、一緒に掃除でもするかね」


「そうですね」


 遠くから、敵の気配がする。

 確実にこちらに向かってきている。

 スライムの索敵でもすでに捉えている。

 倒しちゃっても良かったんだけど……


「ローザ、マシューとネイサンを宿へ、あっちは任せて」


「お願いします」


「やっちゃえカゲテル!」


「がんばってー」」


 俺、ジンゲン、ケイジ、ラシエルのメンバーで走って敵集団へと急襲をかける。

 ラシエルさんの初撃、槍の一突きで直線状に敵がえぐり抜かれていっった!

 俺らも負けじと敵軍を攻撃、ナイツを展開してあっという間に包囲する。

 

「凄いな、いやはや、戦い方の根源を変えるテイマーだなカゲテルは」


「こんな魔物使いはいませんけどね」


「何事も初めてはいるものだ、確実に初めてのSクラス魔物使いは君のものだな」


「スライムマスターカゲテルの誕生であるな」


「確かに、これ以上無いほどカゲテルにピッタリの二つ名だ」


「さて、敵も残り少ない、音斬りの由来でも見せるかね……

 ゆくぞ! 奥義、波打ち跳び!」


 ラシエルさんの超高速チャージの高速反復横跳び、残った敵はなすすべもなくその波に飲まれて粉々になっていく……

 左右で響く悲鳴を切り裂くように戦場を駆けるその姿に音を斬ると評されたのだろう……

 かっこいい……


「他の街も心配だな、見に行きたいけど、距離がなぁ……」


『カゲテル様! 新しい力でスライム間の距離的な問題を解決しました!』 


 トンデモなく大事なことを、このタイミングで知ることになった。

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[一言] どこまで強くなるかなあ・・・
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