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第43話 Sクラス冒険者

「直ぐに各地、いや、各国のギルドへ応援要請だ!」


「今動けるSクラスは何名いる!?」


「今回の戦いの被害をまとめろ!」


 ギルドは鉄火場のようだった。

 

「おお、おおおおお!! 皆、英雄が凱旋したぞ!」


「スライムマスター!!」


「ありがとよ!!」


 俺たちに気がつくと、皆手を止めて俺たちを称賛する。

 照れるけど、嬉しい。


「今、どうなっている?」


 応接間に通されてジンゲンとギルドのお偉い人が話している。

 

「各地でも同様に死霊系の魔物が襲いかかってきているみたいだ。

 うちみたいなドラゴンなんて化け物は出ていないから、被害は大きいが、街規模ならなんとかなりそうだ……」


「街規模じゃなければ……」


 ジンゲンの言葉にギルド職員はゆっくりと首を振る。


「残念だが、それと、王都と連絡がつかない……本当に滅ぼされてしまったのか……?」


「帝国や聖国のギルドからの情報は?」


「まだだ。西側も連絡が取れていない」


「コイタルは?」


「無事だ。情報によると、半グレ共が活躍したらしい……」


「そうか……」


 ケイジがひとまず安心している。


「もし、敵が王都から来るのなら、コイタルが抜かれなければ西は平気だろう……」


「何者なんだアレは……」


「……最近王様がおかしかった話は聞いてるだろ?」


「ああ」


「ギルドにも無茶な要求が来ていてな、調査をしていたんだが、全く何も見つけられないばかりか、誰も帰ってこない有様、Aクラスの凄腕も同様でな、とうとうSクラス、静寂のフウサイに頼んだんだ……だけどな、フウサイから王の側に不穏な気配ありって知らせが来てからパッタリと連絡が取れない。それが3日前、そして今日の襲撃……何かがあったのは間違いない。

 この話はギルドでも一部の人間しか知らない」


「Sクラス冒険者が、簡単にやられるとは思えないが、あのプレッシャーの相手となると……」


「衛兵や冒険者も何人も気を失って運ばれていった……

 カゲテル君は凄いな」


「後から思い出すと足が震えますよ」


「まだ一部の者だが、あの悪魔は公爵級以上だと考えている。

 場合によっては魔王の一柱かもしれない」


「喋り過ぎではないのかメトラス」


 ちょうど扉を開け一人の男性が入ってきた。

 ギルドの職員ではない冒険者、見事な長槍を背負っている。

 短く刈られた真っ赤な髪。

 鋭く獲物を捉える鷲のような目。

 年季の入った銀色の鎧、鍛え上げられた肉体。

 只者ではないことはひと目でわかる。


「おお、ラシエル! 来てくれたか!」


「ラシエル? まさか音斬りのラシエル!?」


「隣町にいたんでね、殲滅させてこっちに来たんだが、話は聞いた。

 アンデッドドラゴンを倒した4人とスライムだったか?」


 こちらを値踏みするように見てくる。

 

「B以下は無理だろ今回は」


「ジンゲン氏とケイジ氏は今回の件でAクラスになります。ローザ氏もBクラスに」


「そうなのか?」「おやまあ」「ねーちゃんすげーや」


「おいおい、数だけ増やしても仕方ないだろ」


「カゲテル氏は、史上初の15歳でのAクラス入りだ」


「え?」


「はぁ? こんなガキが? それに、テイマーでスライムだろ?」


「……ガキでスライムしか使えませんけど、弱くはないですよ、俺もスライムも」


 スライムのことを言われるのは気に食わない、ついつい言い返してしまった。


「はっ!? ちょっとドラゴン倒したからって調子に乗ってるのか?

 若い頃はそれぐらいでもいいがな、死んじまったらおしまいだぞ?

 年長者としてそれぐらい教えるのも努めだろお二人さん」


「ところがな、儂よりカゲテルは強いんじゃよ」


「スライムと一緒だと、相手にもならねーんだよな」


「ほう……、ちょっと付き合えよカゲテル、死なねーか確かめてやる」


 ……この人、いい人なのかも。

 基本的に殺気というよりは、言葉の端々から、心配しているのが見える。

 ローザやマシュー、ネイサンを見る目に優しさが見て取れる。

 若い人間が死ぬことが本当に嫌なのかもしれない……


「Sクラスの方に見てもらえるなら、ありがたいです」


「メトラス、地下の方を借りるぞ」


「わかりました」


 ビーチェの街のギルドの訓練場は地下にあった。

 地下とは思えない大きな空間で、魔力を感じる装置が四隅に置かれている。


「一応魔法で守られているが、やべぇ攻撃は上には撃つなよ、街が壊れる」


「わかりました」


『おまたせしました。って戦いですか?』


『Sクラス冒険者だ。全力でいくぞ。もちろん殺すなよ』


『わかりました。新生ナイトジェネラル達の力を存分に味わってもらいましょう』


「さて、いこうか」


 ヒュンヒュンと槍が目にも止まらない速さで回転させる。

 ただ立っているだけのようで、全く隙が見当たらないし、凄まじいプレッシャーを感じる。


「いくぞナイト達!」


 スライム全集合状態のスライムジェネラル。

 火属性ソードナイトジェネラル。

 水属性ランサーナイトジェネラル。

 金属属性アックスナイトジェネラル。

 風属性ボウナイトジェネラル。

 土属性シールドナイトジェネラル。

 闇・死霊属性ダークナイトジェネラル。

 光・聖属性ホーリーナイトジェネラル。

 キングの配下だ。

 攻撃魔法担当ソーサラーナイトジェネラル。

 回復担当プリーストナイトジェネラル。

 補助・阻害担当ビショップナイトジェネラル。

 クイーンの配下だ。

 なんていうか……

 美しく光るクリスタルの彫刻によって作られた人形のようだ……


『造形には徹底的に拘りました』


「ほう……手品の類じゃないな……」


 その一体一体から放たれるオーラを直ぐに感じ取るラシエルさん。


「行くぜ!」


 槍を構えると、一回り身体が大きくなったように見える。

 次の瞬間、ラシエルさんの姿がかき消えた。


 ギィン!!


 巨大な盾が、ラシエルさんの槍を受ける。


「受け止めた!? ちぃ!!」


 直ぐにナイト達が襲いかかる。

 即座にラシエルさんが距離を取るも、矢と魔法が雨のように降り注ぐ。

 それでもラシエルさんはとんでもない動きで攻撃を躱し続ける。


「これは……!! きちい!!」


 さらにラシエルさんが加速する。

 それでも攻撃は全て盾によって阻まれる……


「やることが……ない……」


 完全に戦いはスライム任せになっている。

 

『強くなりすぎじゃない?』


『大量の魔素から大きなエネルギーを得ましたから。

 今ならあのドラゴンゾンビも瞬殺です!』


「ストーップ!!」


 ラシエルさんが、試合を止める。


「十分だ、ここでは俺はこれ以上力を出せねぇが……

 いや、すげーなお前、カゲテルだっけか!?

 これホントにスライムか!?」


 いきなり頭を掴まれてわしわしと撫で回された……


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