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第41話 巨躯と数

 突然発生した黒い球体、その正体は直ぐにわかった。

 べきべきと割れると、そこには巨大な竜が現れた。


「アンデッドドラゴン、死霊を飲み込み召喚したか!」


「悪魔か、死霊使いがいるのは確定じゃな」


「あのコウモリいないんだよね」


「どこかで見学しとるんじゃろ、あいつらにとって、これは遊びじゃからな」


「本気になれば、一人で街に侵入して町の人間全てを殺せる。

 ただ、それは面白くないからこうやって遊んでるんだ!」


「くそっ! 人間をなんだと思ってるんだ!」


【おもちゃだよ】


 頭の中に声が響く。


【今日も新しいおもちゃを見つけた。

 面白いな、せいぜい足掻けよ】


 凄まじい力で頭を揺らされるような感じで声が聞こえる。


「……悪魔じゃな……」


「悪魔だな」


「これが、悪魔」


「怖い……」


 その力の一端に振れただけで、生物としての根源的な恐怖を沸き起こされた……


「やるしかない、ドラゴンだろうがぶっ倒せ!!」


 ナイツだけじゃない、総力戦だ。

 普通のスライムも全て投入する。

 ある程度数をまとめて、強力な力でなければあのドラゴンは倒せない。

 事実魔法攻撃もあまりいい成果は挙げられていない。

 そして、恐ろしいことに、黒い球体はいくつも現れ、巨大な虎やオーガ、ゾンビのような尖兵ではない強力な死霊系戦士を産み出していく。


 突出して突っ込んできた虎型の死霊をようやく撃退する。

 かなりの数を重ねたナイツでようやく対処できた……


 半包囲していた布陣も、押し返され、今では横陣同士がぶつかり合うような状態になっている。

 そして、敵はどんどん補充されていく……そして数が集まると例の球が飲み込み強力なユニットになる。


「くっ……どうすれば……」


 俺たちも前線で敵の対応に手一杯だ。

 ドラゴンとの戦線はケイジとジンゲンが加わってようやく止めている状態だ……


『カゲテル様、死霊を喰らう許可を!!』


「コウメイ! 許す!!」


 俺の許可と同時に先程倒した虎にスライムが群がって捕食していく……


『死霊スライムに変化しました。

 【魔素利用】【霊体変化】【不死】』


 バチッと電気が走ったような感覚がする。


『死霊スライムのスキルは現状スライムマスターに適合しないため保留』


『マスター、周囲の魔素を取り込んでください!』


 無感情なカゲテルの声と、コウメイのカゲテルの声が入り交じる。


「わかった」


 死霊スライムが周囲に立ち込める瘴気、その正体である魔素を吸収する。

 急に理解できたが、魔素は魔力が汚されたもので、魔界に生きるものが利用するエネルギーだ。

 これを死霊スライムが吸収し、全軍のエネルギー源としても利用できる。

 これで、悪魔が魔界から自分の勢力を呼び出し魔素を生み出すほどに、俺らの軍が強くなっていく体制ができあがった。

 そして、濃すぎる魔素はそれを利用できない者にとっては毒になる。

 今、その弱点が消え去った。


「今です!!」『それ私のセリフ!』


 全軍が一気に押し返す。

 敵の最大の強みであった戦力の再生が、魔素を急速にこちらが吸い込み利用してしまうことで思うように行かなくなる。

 更にこちらは大量のエネルギーを手に入れ、さらに増殖していく。

 立場が逆転していく。

 再び半包囲の布陣に押し戻し、俺もローザもドラゴンとの戦いに参加する。


「でかい!」


 近くで見ると見上げるドラゴンの大きさと迫力は凄まじい、流石は最強の種族と言われているだけある。

 たぶん、腐臭がすごいんだろうけど、スライムマスクのおかげで匂いも防げている。

 毒の霧なんかにも有効だし、スライムシャツのまたひとつ有効性が見られた。


「コウメイ! 軍への指示は任せた!」


『お任せください、研究結果と合わせて勝利の報告をいたします!』


 なんだか少し興奮しているコウメイに軍の指揮は任せて戦闘に集中する。

 

「カゲテル、大きいからって遅いと思うな!

 最強種の動き、よく味わっておけ!」


「巨大な敵は端からが基本」


 俺は、大剣を取り出し、両手で握る。

 実は、さっきから身体が熱くて仕方がない……

 大量に吸収した魔素、そして、大量の死霊達の力が、スライムから流れ込んでくるのがわかるほど、この戦いの場に存在していたエネルギーが巨大であることがわかる。

 それは、悪魔が強大であることを示しているのだが……

 今はそれどころじゃない。


「もう、こっちは爆発しそうなんだよ!!」


 鼻先を敵の振り下ろした爪が掠める。

 ちゃんと見えている。

 大地を砕く一撃、しかし、目の前には無防備な腕が晒されている。

 聖魔法を剣に流し込む。

 そして、そのまま、力いっぱい振り下ろす!


「でりゃああああああああああああああ!!」


 ガッ、一瞬固い感覚が伝わるが、ザンっ……

 鱗を断ち、肉を断ち、骨を断った。

 小さな傷は魔素が集まってすぐに直してしまうアンデッド、しかし、切り落とした腕には聖気がまとわりついて傷の回復を阻害する。

 極限までに高めた聖属性の魔力が、魔素と対局の聖気へと変化していた。


『ホーリースライムが誕生しました。

 【聖気操作】【仙気操作】【神聖魔法】』


 聖魔法の上位に存在する神聖魔法……

 神に使える人々が大量に集まって、神の加護を受けて発動する魔法。

 魔力を利用しない、生命エネルギーを極限まで高めたものが至る境地、仙気。

 また、とんでもないものを手に入れてしまったのであった……




 

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[一言] まるっきり、 「神」の領域!
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