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第203話 森羅万象

 たぶん、俺もフランガもニヤけるのが止められていなかったと思う。

 それぐらい、その時間は楽しく、気持ちよく、最高だ。

 敵の斬撃を完璧に見切り前髪をかすめるほどのギリギリで避け、絶妙なタイミングで返す刃が敵を切り裂き、完璧なタイミングでフランガが追撃を食らわせ、連撃の起点を創る……


「飛燕9連撃!!」


「アルティメットミリオンスラッシュ!!」


「絶空螺旋龍昇牙!!」


「ドラゴンマキシマムクラッシュ!!」


「虎爪破竹強襲撃!!」


「インフィニティブラスト!」


 中二病の発表会のように奥義を叩き込み続ける!


「このまま原子のチリとなれ!!」


「消えちまえ!!」


 俺らの猛攻を前に塵となって消えていく天使長……


「やったか!?」


「やってないのわかってるだろ……?」


「まあな……」


 振り返ればやつがいる。

 無傷の天使長がそこには立っている。


「次は違う組み合わせを試しますか」


「いいぜ、なんでも合わせてやる!」


 無敵モードの俺たちは、それから幾度となく天使長を屠る。

 コウメイの代わりに配下のスライムでエネルギーを喰らい続けているせいか、体が熱い。

 興奮とエネルギーの過剰供給で、俺たちは暴走しかけている。


「どこまでも、冷静にだぞフランガ!!」


「血走った目でそんな事言われてもな……だが、わかっている!!」


 なにかのミスで相手の攻撃でも喰らおうものなら、存在の消滅とは常に背中合わせなんだ。

 身体の熱は大事にしながら、頭の中は冷静沈着に立ち回る。

 味方の動き、敵の動き、場の状態を冷静に把握して最適な動きをしていく、人の意思、場の関係、時間の関与、それらすべてを網羅して動き続ける。

 それらが自然と行われていくと、完全な万能感、世界がまるで自分の一部のものになったような全知全能感を感じてしまう。

 フランガと俺はそんな時間を永遠に感じていたかった……


 そして、転機は突然訪れた。


「!?」「!?」


 世界が突然暗転する。

 いや、正確には世界を構成する縁取りが消え、エネルギー体として見える様になる。


「なんだこれは!?」


 天使長の動きが止まっている。


「何が起きた」


「おまたせしました。世界のコントロールを奪いました」


「コウメイ!」


「マスター、あの天使長の構成エネルギーを取り込むように念じてください」


「あ、ああ……」


 俺は巨大なエネルギーの塊に手をかざし、スライムによる捕食イメージでエネルギーを取り込もうとする。ギュンッとエネルギーが身体に取り込まれた。

 

「これ、もしかして……」


「ええ、この世界を構成するすべての物を、吸収することができます。

 ただ、再構築はそれなりの工程が必要なので、不用意に周囲を吸収しないでくださいね。

 お疲れ様でした。この戦い。勝利です」


「……まじ? ノッてきたのに?」


「なんだよ、あっけない幕切れだな」


「これでもかなり苦労したんで、喜んでいただけると嬉しいのですが」


「ああ、すまんすまん。わーい」


「わーい」


「釈然としませんが、まあいいでしょう。

 とりあえず知覚状態を戻しますね」


 コウメイの言葉通り、いつもどおりの視界が戻ってくる。

 そこには天使長の姿はなく、もう現れることもない。

 そう、戦いは終わったのだ。


「マスター、あとはお任せします」


「へ? あと何を……」


 振り返ると、俺は、一人で立っていた。

 いや、立っているのか?

 地面が、天井が、壁が、周囲のすべてが消え失せた。

 浮いているのか沈んでいるのか、何もわからない。

 そもそも、自分の体と周囲との境目もよくわからない。

 見えているのか、聞こえているのか、感じているのか?

 おれは、心の目を閉じて、自分自身と向き合う。

 ユキムラに、似たようなことをされたことがあった。

 自分という存在をきちんと認識することがスタートだと教えられた。

 

「ふむ、合格だね」


 目を開くと、いつの間にか小さな部屋に場所が移っていた。

 俺はいつもの平服、目の前には小さなテーブル、そこには見知らぬ青年と、ユキムラが座ってお茶を飲んでいた。


「良かったよカゲテル、ちゃんと覚えていたね」


「ユキムラ……ここは、神々の居場所ってところかな?」


「その通り、君はめでたく世界を構成する一つの要素から飛び出して、この場所までやってきた。

 物凄く大変なことなんだよ。素晴らしい、やっぱりこういう事があるから止められない」


「やっぱり世界を渡った存在は到りやすいんですかね?」


「そうだなぁ……ただまだ、データが少なすぎて……

 あ、すまない。カゲテル君、君もかけてお茶でもどうだい?

 少し長い話になると思うから」


「わ、わかりました……」


 席につくとユキムラが紅茶を注いでくれた。

 驚くほどいい香りがして、思わず飲み干してしまった。

 不思議と、浮ついた気持ちが落ち着いたようなきがする。


「いいだろ、ユキムラは趣味が良いからね」


「本当はコーヒーがいいんだけど、カゲテルは紅茶のほうが好きだからね。ま、本当はお酒のほうが好きなんだろうけど、こちらのお方もお酒飲むと暴走するので、今日はこれで」


「困るなユキムラ、威厳を持って対応するつもりだったのに……」


「えーっと……とても、お偉い方なのですか?」


「ははは、そうだね、今更だけど、私は根元の創造神と呼ばれているものだ」






 

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― 新着の感想 ―
[一言] ほっ、ほあ~!きたきたきたー!って感じのテンションになりましたw
[一言] じゃあ・・・ うまくすれば、「味方」の神様?
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