表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/205

第17話 クイーンアント

 その後、しばらく待機していたけど、巣穴に変化はない。

 新たな蟻が出てくることもない。


「何も出てきませんね」


「カゲテル、あの中はどうなってると思う?」


「うーん、酒精で充満しているので、火でもつけますか?」


「そうしないと、入れないよな?」


「そうですね……ちょっと距離を取りましょうか」


「スライムは平気なのか?」


「火に耐性がある子にします」


 封鎖していた壁を壊して、火玉を放り込む。

 ボンっと言う音と共に、炎が吹き出され、地面が少し揺れた。

 火スライムは美味しそうに吹き出した炎を食べた。

 すぐに再び土魔法で塞ぐ。

 こうすることで内部の酸素が一気に消失する。

 蟻だって気門という気管を使って呼吸をしている。

 酸欠になれば、さらに死ぬだろう。


 またしばらく時間を置いて、封印を開放する。


「中を探りますね……」


 念には念を入れたので、ここでスライムを投入する。

 気配察知、隠密に特化したエースを投入する。

 その後に大量の死体を回収するスライムを続かせる。

 スライムは酸素がなくても大丈夫だ。俺は無理だ。

 視界にはおびただしい虫の死体、気分が悪くなる……

 どんどん回収してもらう。

 動いている気配は全く感知できない。

 蟻の巣は複雑だが、こっちは数で探索している。


「外に居た個体と違うでかいやつも居ますね……死んでますけど」


 俺は別にやる必要もないんだけど、左目を手で隠して、いかにも視界を必死に共有してる感じを出してみんなに説明している。

 凄い能力だとみんな感心してくれているけど、こんな事しなくても、たとえ戦いながらでも視界共有は可能だし、複数視点を合成して位置関係を立体的に認識もできる。

 すべての処理はスライムがやってくれてるけど。


「すごく広いところに……なんか焼け焦げてる、芋虫みたいな……

 で、でかい……すごく大きな……下がれ!!」


 気配感知に動くものが感じられた。

 目の前にうつる巨大な蟻が動き出した。

 スライム達を認識している。

 8個の目が、真っ赤に光っている。

 体の下に隠していた芋虫を優しく腕を使って確かめて、全ての虫が死んでいることを確認すると、凄まじい声で叫んだ。


「でかいやつが、叫んで、出てきます!!」


「総員戦闘準備だ!!」


 周囲の都市からも集められた、腕利きの冒険者達が、それぞれ武器を構える。


 スライムを一気に引かせる。

 一直線に出口へと逃げる。

 巨大な腹を自ら切り落として巨大な蟻がガサガサと追ってくる。

 映像で見るだけでも、かなりの恐怖だ。


「もうすぐ出ます!! 気をつけてください!!」


 スライムはどんどん合体して、一つとなってポーンと洞窟から飛び出して俺のもとに戻ってきた。


 ドドドドドドドドドドドド


 地面の揺れがどんどんと大きくなって……


 ドゴーン!!


 洞窟の出口を破壊して、巨大な蟻の女王が外界に姿を表した。 


「でかい! クイーンアント……」


 今までさんざんありって言っていたのに、女王だけはクイーンとか呼ぶのか……

 いらないことが気になったけど、支配人が先手を打つ。


「無限の風刃よ、切り裂け!!」


 球体がクイーンを包み込み、内部では無数の風の刃がギャリギャリとクイーンの身体を傷つけている。


「くそっ、固い!!」


「暴風のケラス、まだ腕はなまってないな!」


「その名前はやめろ!」


「穿ち喰らえ! 餓狼弓!」


「たたっ斬れ!! 斬岩破山!!!」


 冒険者の方々が各々技を放つ。

 

「凄い……」


 Aクラス以上の冒険者の実力を垣間見る。

 ガウさんも、俺を殺すつもりなら、これくらいの芸当は出来たんだ……

 少し強いつもりになっていた事を反省した。

 俺に出来るのは1000体くらいをまとめたスライムによる基本属性魔法の弾幕と、回復魔法による緩やかな援護だ。

 もうみんなスライムボードを使いこなしてクイーンの周囲を移動しながら見事な戦いを繰り広げている。

 確かにクイーンは強い。

 でも、集団の人間の怖さを叩き込んでやる。


「消化液が来るぞ!!」


「飛ばします!!」


 小さなかまいたちを起こす程度の風魔法だって、数千体をまとめれば強風くらい起こせる。

 風による巨大な壁を形成し、液体を押し返す。

 自分で吐いた大量の消化液を自分の身体に全部かかって、怒り狂っている。


「なるほど、そういう使い方が……」


 すぐに支配人も使えるようになった。

 俺は基礎魔法しか使えない。

 確かに、大量に打てる。

 その結果マシンガンのように火球を打ったりすることが出来る。

 ある程度以上の魔法防御が有ると通用しない。

 ダメージ0は何回打ってもダメージ0だ。

 剣技の力は凄い、だが、技術はまだまだだ。

 思考加速でも勝てない世界を今そこら中で見ている。

 模擬戦ではない、殺し合いでは、俺は力は有るが、弱い。

 クイーンとの戦いで、思い知らされた。


「わりぃな、美味しいとこ持ってくぜ!!」


 ぼろぼろになったクイーン、動きが鈍くなったところに、大剣を構えた剣士が突っ込んでいった。


「帝国流剣技、奥の巻……シャイニングファング!!」


 大剣が光り輝き、切り上げの一撃に合わせて、もう一つの斬撃が上部から振り下ろされる。

 光り輝く上下の牙が、クイーンの首を引きちぎる……


 首を落とされたクイーンの巨体は、ゆっくりと大地に倒れ、二度と動くことはなかった……


「やったぞ!!」


「「「「「うおーーーーー!!!」」」」」


 蟻との戦いに、今、勝利した!!

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ