一話
俺は交通事故に遭って死んだ。しかし、気がつけば真っ白な空間に立っていて、そこで女神クレア様に出会った。「これはもしや異世界転生か!?」などと思ったのだが、なんといきなり「助けてください!」と言われたのだ。
まさか死んでからいきなり助けを求められるとは思わなかった。とりあえず話を聞いてみたのだが——
「は? 魔法を創る?」
俺は訳がわからないといった表情で彼女を睨んだ。
「い、いや、いきなりこんなことを言われて混乱するとは思うんですけど、実は女神はそれぞれ一柱につき一つの世界を管理しているんです。もちろん私も管理する世界があるんですけど、どうしても私には魔法が創れなかったんです。でも、管理している世界に魔法が無いというのはかなり酷いことでして……このままじゃ他の女神達になんて言われるか……!」
「わ、わかりました。とりあえず手伝います!」
——まぁそんな感じで、俺は勢いでクレア様の頼みを受けてしまったのだ。
そんなわけで、俺は数年かけて魔法を創った。その結果、自分でも満足のいくものができ、クレア様も大喜びだった。そして、俺に原初の魔創士の称号をくださった。まぁこれがなんなのかは知らないが。
さて、今俺は森の中にいる。なんでそんな場所にいるのかというと……俺もわからない。
確か、魔法を創ったお礼としてクレア様にこの世界で生まれ変わりたいと願ったのだが……赤ん坊スタートではなかったのか?
クレア様の話では、俺はある程度魔法が使える家系の子供に生まれ変わるはずだったのだが……何故か元の姿のままである。何か問題でもあったのだろうか。
とりあえず状況を確認しないと……あぁ、そうだ
「ステータス」
俺がそう唱えると目の前にまるでゲームやアニメの世界にあるようなステータス画面が現れた。
そう、このステータスこそが俺が一番最初に創ろうとした魔法であり、創るのに最も苦労したであろう魔法だ。
異世界に来てステータスがないと知り、そんなの異世界じゃねぇと思い真っ先に創ろうとしたのだが、これが思った以上に難しかった。魂の情報を読み取る必要があるらしく、普通の人間では到底できないのだそうで。
ただ、魂関連はクレア様の得意分野だそうで、そこはまぁなんとかなった。ただ他にも面倒なとこがあって……
「ってそうじゃなかった。俺のステータスはっと」
名前:ソーマ
種族:現人神
加護:創造神の加護
称号:原初の魔創士
スキル:なし
「えーっと、名前はこっちに変えたからいいとして……って、え? 現人神?」
どういうことだ。別に魔法を創るために神になる必要なんてなかったし、ずっと俺の種族は人間だったはずだ。それがなんで現人神なんかに……
というかやっぱり寂しいよなぁ、このステータス。本当はHPとか攻撃力とかを数字で表したかったけど、HPがいくらあろうと首切られたら誰だって即死だし、攻撃力だってどんな攻撃方法が得意かなんて人それぞれだし、それを一人一人判断して値をつけるなんてどうすればいいかわからなかったから、結局こんな面白味のないものになってしまった。
それに俺は創造神であるクレア様から加護を貰ってるし称号もあるからいいが、他の人なんて名前と種族しか表示されないし……って、スキル?
「おぉ! アップデートされてんじゃん!」
俺が創った時にはスキルなんてなかったし、きっと誰かが創ったんだろう。
しかし自分が創ったものが進化していくのは嬉しいが、変わったのが一つだけとは……
大体一万年後に転生させてもらう予定だったが、もしかしてあまり年月が経っていないのだろうか。
「そこのお前!」
そんなことを考えているといきなり声が聞こえ、声の方を向くとそこには弓を構えた女性がこちらを狙っていた。
「貴様人間だな、何故こんなところにいる!」
「え、あ、いやあの、別に怪しいものではなくてですね……」
いきなりだったせいでこんな言葉しか出ず、当然の如く信じてもらえるわけわなく、彼女の弓を引く手に力が入るのが見えた。
「ふざけているのか、質問に答えろ」
「は、はい! えっと、気がついたらここにいて……ッ!」
シュン、と顔の横を何かが通り過ぎた。
「嘘をつくな、この森には結界が張ってある。そう簡単に入って来れるわけないだろう!」
「い、いや、本当に目が覚めたらここにいて、自分にも何がなんやら」
ま、まずい。ここでなんとか信じてもらえないと、新しく始まった第二の人生?が開始数分で終わってしまう! ど、どうしよう。
「はぁ……わかった。なら貴様のステータスを見せてみろ。話はそれから聞いてやる」
た、助かった! ってステータス?
「あの、ステータスを見せるって?」
「なんだ、やっぱり見せられないのか?」
「い、いえ、そうではなくて! どうやって見せるのかが分からなくて!」
だから弓を引くのをやめてください!
「分からないだと? 貴様、今までどうやって生活してきたんだ。普通にステータス画面に魔力を流せばできるだろう」
おお! そんな機能も追加されてたなんて!
ってそうじゃなくて
「ステータス」
そう唱えると、また先ほどと同じ画面が現れ、俺はその画面に触れ魔力を流してみた。
「えっと、これでいいんですかね」
「そうだ、それをこっちに見せてみろ」
言われた通り俺は彼女に自分のステータス画面を見せた。
あれ、そういえば俺のステータス、色々と変なこと書いてあるからあんまり見せない方がいいんじゃ……
「おい、なんでこんなにステータスが短いん……」
そこまで言ったところで彼女の動きが止まり、彼女の顔は見るからに青ざめていった。
「あ、あのー」
「も、」
「え?」
「申し訳ございませんでしたあぁぁぁぁ!!」
そこには先ほどまでの威勢などどこにも見えない、見事な土下座を決めた女性の姿があった。




