ヅラの無い世界に幸せを
女性が胸にコンプレックスを抱くように、男性は髪の毛にコンプレックスを抱く。
女性は胸に視線がいくのを敏感に感じ、男性は頭に視線がいくのを敏感に感じる。
まぁ、なにが言いたいかというとバーコードって事だ。
あん? ちゃんと言え? 察してくれ。
3年付き合った彼女に決死の思いでプロポーズしたが、「ごめんなさい。子供が可哀想」と頭を見ながら振られた。
町を歩けば指をさされ、「あのバーコードの横のさぁ」と、目印に使われる。
今までにヅラで使ったお金は数十万。
だが、結局合わずに付けることも無くなった。
植毛なんて金持ちの道楽だ。
「もう、うんざりだ」
ビルの屋上から足を一歩前に出し、確かな重量を感じると……私は白い世界にいた。
私をもてなしたのは化粧の濃いツインテールの女神。
右頬に痣があるのが印象的だった。
「あなたは無念を持ったまま亡くなりました。
私が貴方の望む転生に協力しましょう」
全てを優しく包み込む雰囲気に、私は素直に吐露した。
「ヅラの無い世界に行きたい」
「ヅラ……ですか? ハーレムな世界や、最強の力を持って転生することも可能なのですよ?」
「私はそれだけで十分です」
女神は私の言葉に頷き、優しく微笑んだ。
「分かりました。貴方の望む世界へと転生させましょう。願いが控えめなのでオプションをつけれますがどうしますか?」
「オプション……ですか?」
「はい。例えば生まれた時から記憶があるコース。
赤ちゃんのフリしておっぱいにむしゃぶりつけます。
5歳コースなら、ギリギリ女湯にも入れます。
15歳コースはある程度の人生経験があるので、チュートリアルを飛ばしたい方向けです」
「じゃあ 15歳で」
こうして私は異世界に転生した。
そして 15歳の時、湯水のように記憶が湧いてきたのだ。
「あぁ、なるほど。確かに望み通りっちゃ望み通りだけど」
私の見る世界には体毛のない人、人、人。
そりゃみんなハゲてるならヅラはいらんわな。
少しだけ女神に感謝した。
【登場人物紹介】
バーコードなおっさん……今作の主人公。念願かなってヅラの無い世界に転生したが、どうにもふに落ちずヅラの製作を始める。これが世界中で大ヒット。ヅラの無い世界に幸せを持ち込み大金持ちとなる。
女神……異世界転生を司る女神。お気に入りの転生者にグーパンを食らい愛(M)に目覚める。現在その転生者を目下捜索中。