7. 欲深きミダス王
7. 欲深きミダス王
ミュウが鳴き始めてから三日目の朝、ミダス王は謁見の間に家臣たちを呼び集めました。
「何をしているのだっ!ドラゴンが鳴きっぱなしじゃないか?うるさくって眠れんっ!どんな事をしてもよいから、早くアレを黙らせろっ!」
エラム国のミダス王は欲深く、残忍な男でした。長年、淫蕩な生活に耽っているミダス王に自制心などあるわけもなく、家臣たちの前でも苛立ちを隠そうとしませんでした。
王の叱責を受けて、家臣の一人が前に進み出ました。
「番兵たちの話では、突然、理由もなく鳴き出したとのことです。鳴き止ませるためにいろいろと試してはいるのですが、何をして黙らせることができません。」
家臣の報告に、王は苦虫を潰したような顔をしました。
「これまでは少しも鳴かなかったのに、突然、理由もなく鳴き出したというのかっ?!」
王の叱責に大臣は身を縮めました。
「はい。恐らく、捕えるときに使った痺れ薬の効果が切れたのではないでしょうか。」
うむっと王は唸りました。
「ならば、殺してしまえっ!と言いたいところだが、まだ殺してはならん。太らせてもっと大きくするのだ。死なない程度に生かしておけ。」
ミダス王は王座の後ろの垂れ幕の奥へと視線を走らせました。
――せめて、この黒竜の三分の二ぐらいの大きさになるまでは......
王は心の中で呟きました。
「生きてさえいれば何をしても構わんから、すぐにあれを黙らせろっ!」
「はっ!」
謁見の間から退出した大臣は、すぐさま番兵たちに命令を下しました。
「すぐにドラゴンを鳴き止ませろ!今日中に鳴き止まなかったら、お前たちの首はないものと思え!」
慌てふためいた番兵たちは石牢に走って戻ると、ミュウが鳴く度に槍で突き始めました。元々(もともと)、残酷なことを好む性質の上に、今では自分たちの命までもがかかっています。番兵たちの手に躊躇いは一切感じられませんでした。
ミュウの身体はたちまち、血だらけになりました。ミュウの身体には薄い鱗が生え始めていましたが、まだ、槍を撥ね返すほど固くはなっていませんでした。
ミュウは突かれる度に悲しげな声を上げましたが、どんなに突かれても人間を攻撃しませんでした。ただ、悲しげに鳴くばかりです。ミュウは助けを求めて、鳴き続けました。
ミュウの鳴き声は、城下まで届きました。ミュウの悲痛な鳴き声とミダス王の兵たちの残虐さを考え合わせると、城の中にいるドラゴンがどんな目にあっているか、町の人達にも容易に想像がつきました。
町の人達が心配している間にも、ドラゴンの声はどんどん掠れて小さくなり、やがて完全に聞こえなくなりました。程なくして、ドラゴンが死んだという噂が町に流れました。




