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竜の赤ちゃん、拾いました。第一章~第三章  作者: 小川せり
第三章 悩める旅人
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5. 希望と絶望の狭間で

5. 希望(きぼう)絶望(ぜつぼう)狭間(はざま)



気が付いたら(いし)(ろう)の中にいたミュウですが、ここに()れてこられる途中(とちゅう)、大きな黒竜(こくりゅう)背中(せなか)()せられて空を飛んでいた記憶がありました。

――あの(りゅう)はどこにいったんだろう? この近くにいるのかな?

空を飛んでいる間、ミュウは気力(きりょく)()(しぼ)って、何度か(かれ)(はな)()けてみましたが、彼は何も答えてくれませんでした。もしかしたら、言葉(ことば)(つう)じなかったのかもしれません。

その(あと)、ミュウは痛みと寒さで気を(うしな)ってしまい、気が付いたら(ろう)()()められていました。それ以降(いこう)(かれ)に会うことはありませんでしたが、ミュウは時々(ときどき)、あの竜のことを思い出していました。彼も自分と同じように何処(どこ)かから(さら)われてきて、(わる)(やつ)らに無理(むり)やり(はたら)かされているのかもしれません。だとしたら助けてあげなければならない。ミュウは自分自身が捕らわれの身であるにもかかわらず、彼のことを心配していました。






挿絵(By みてみん)






ミュウは彼の(かた)背中(せなか)を思い出しました。黒竜(こくりゅう)の背中には大きな(いわ)のような(こぶ)がいくつもあって凸凹(でこぼこ)しており、そのせいで、ミュウは彼の背中にから何度も落ちそうになりました。その(たび)にミュウは彼の背中に(つめ)を立ててしまったのですが、彼は(いた)がる素振(そぶ)りも見せませんでした。

――あんなにたくさんの(こぶ)があるなんて、普通(ふつう)じゃないよね。何か(わる)病気(びょうき)にでもかかっているのかな?だとしたら、尚のこと、助けてあげなくちゃ。

もしかしたら、(かれ)も自分と同じように劣悪(れつあく)環境(かんきょう)()()められているうちに、悪い病気(びょうき)(かか)ってしまったのかもしれません。(げん)に、ミュウも(いし)(ろう)湿気(しっけ)のせいか、それとも排泄物(はいせつぶつ)(そう)()してもらえない不衛生(ふえいせい)環境(かんきょう)のせいか、全身(ぜんしん)に赤い発疹(ほっしん)のようなものができていました。

――もしも、ここから()られたら…そんなことができるかどうかわからないけど。彼も(かなら)ず助け出してあげよう。

ミュウは、心の中で(ちか)いました。ミュウの心は希望(きぼう)絶望(ぜつぼう)(はざま)(つね)()(うご)いてはいましたが、すべての希望(きぼう)(うしな)うには若過(わかす)ぎました。





この時、ミュウはまだ一歳でした。

どんなに絶望的な状況でも、一晩寝ると、朝には再び希望が湧いてくる…それが若さというものではないでしょうか。


ところで皆さんは、「竜」と「龍」の違いをご存じですか。

厳密な定義はないようですが、日本のファンタジー界では西洋的なドラゴンを「竜」、東洋的なものを「龍」としているようです。


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