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竜の赤ちゃん、拾いました。第一章~第三章  作者: 小川せり
第三章 悩める旅人
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4. 月の雫

タイトルの「月の雫」は、ドラゴンの涙を指しています。

「月の雫」の画像を貼りたいと思ってインターネットで検索したのですが、スイーツとか、お酒しかヒットせず、良い画像が見つかりませんでした。


4. 月の(しずく)



――ミュウ!

どこかから、(ねむ)りを()()ます声が聞こえます。閉じられた(まぶた)の下で眼球(がんきゅう)(さか)んに動き、四肢(しし)がピクピクと痙攣(けいれん)しました。

――だれ?

ミュウは重たい体を起こしました。

――ボクを呼んでいるのはだれ?

自分でも気づかぬうちに、ミュウは声のする(ほう)へと走り出しました。しかし、(うし)(あし)に何かが引っ掛かって、すぐに転んでしまいました。体が(なまり)を飲み込んだように重く、思うように動かせません。

それでもミュウは本能的(ほんのうてき)に前へと進もうとしていました。誰かが…よく知っているはずの(だれ)かが()んでいます。

――ミュウ!

(ふたた)び自分を呼ぶ声がして、ミュウはやっと声の(ぬし)がわかりました。

――リューイ!

ミュウは必死(ひっし)になって(みじか)(あし)を動かし、なんとか身体(からだ)を起こしました。そして自分が冷たい(いし)(ろう)に横たわったまま、もがいていたことに気が付きました。夢の中で足に引っ掛かった何かは、後ろ足に()けられた重たい足枷(あしかせ)でした。

がらんとした(いし)(ろう)にはミュウの荒い鼻息(はないき)だけが反響(はんきょう)していました。(いし)(ろう)(すみ)にいた一匹の(ねずみ)がミュウの動きに(おどろ)いて一瞬(いっしゅん)、立ち止まり、すぐにどこかへと消えていきました。

――夢か......

強い失望(しつぼう)(おぼ)えたミュウは、ドサッと体を横たえました。

あれから何日が()ったのでしょうか。体の(しび)れは(いま)だにとれず、頭もぼうっとしたままです。

ここに()れてこられてから数日間(すうじつかん)、ミュウはずっと(あさ)(ねむ)りの中を(ただよ)っていましたが、夢はいつも失望(しつぼう)()わりました。

――リューイ......もう会えないのかな?

悪人(あくにん)どもに(さら)われる前の数ヶ月間(すうかげつかん)、ミュウはリューイを徹底的(てっていてき)()けていました。なぜなら、ミュウは(くち)うるさいリューイに嫌気(いやけ)がさしていましたし、人間に合わせる生活も窮屈(きゅうくつ)に感じ始めていたからです。今となっては、あんな状態(じょうたい)のままリューイと(わか)れてしまったことが()やまれてなりません。

――こんなことになるんだったら、もっと仲良(なかよ)くしておけばよかった......

ミュウが急にいなくなって、リューイはどう思ったでしょう。ミュウが自分から出ていったと思ってはないでしょうか。

――リューイ、ボクは勝手(かって)に出ていったんじゃないよ…ボクは…ボクは気が付いたらここに()()められていたんだよ!

あの夜、首に()けるような痛みを感じて――気が付いたときには、暗い(いし)(ろう)に閉じ込められていたのです。いったい、ここは何処(どこ)なのでしょうか。ミュウは自分が()()てにいるように感じていました。

目の前の現実(げんじつ)から目を()らしたくて、ミュウはそっと(ひとみ)を閉じました。その瞬間(しゅんかん)(なみだ)一粒(ひとつぶ)(こぼ)れ落ち、冷たい床に当たって(くだ)けました。(かす)かに()()月明(つきあか)りの中で、(ドラゴン)の子が流した(なみだ)はキラキラと(かがや)くクリスタルの欠片(かけら)になりました。



ちょっと話がずれますが、ドラゴンでさえ、家族が煩わしいと思うことがあるようですね。

多くの人は忘れているようですが、家族とは本来、面倒なものなんです。家族でも、恋人でも、友人でも、面倒なことを乗り越えた先にしか、愛や絆を生まれないと思いませんか。

現代人は面倒なことをできるだけ避けて、簡単に、お手軽に愛を得ようとしてしまいますが、どんなに便利な時代になっても、愛だけは簡単に手に入らないんですよね。

家族って煩わしい。けれど、愛しい。


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