6. どこから来たの?
6. どこから来たの?
「ねえ、おばあちゃん、それ本当なの?この子は、本当に竜なの?」
リューイは椅子から立ち上がると、唾を飛ばしながら聞き返しました。唾が飛んでしまうのも無理はありません。だって、それが本当だとしたら大発見ですから。
――見捨てないで拾ってきて良かった!
1時間前の自分を全力で褒めてあげたい気分です。
――それにしても竜の赤ちゃんを拾うなんて、今日はなんてラッキーな日なんだろう!
リューイは心の中で思わずガッツポーズをしました。
おばあちゃんは眼鏡を外すと、額に手を押し当てました。
「そうよ。種類にもよるけど、大人になったらすごく大きくなるわよ。」
「やったー、竜だ!本物の竜だ!すごいぞ!」
リューイは灰色の生き物を高く抱え上げると、テーブルの周りをぐるぐると踊り始めました。喜びの舞です。ガチャガチャのハズレのような生き物だと思ったこの子は、めちゃくちゃレアアイテムだったようです。
おばあちゃんは興奮しきっているリューイを宥めるように言いました。
「でも、すごく大きくなるのよ。最後まで責任を持って面倒を見られるかしら?」
「大丈夫だよ!約束する!」
思わず声が大きくなります。先程まで、おばあちゃんにこの子の世話をさせようと思っていたことなどすっかり忘れています。
捨てるわけがありません。目の前にいるのは、あの伝説の生き物なのです! おばあちゃんは何もわかっていません!
リューイはテーブルの上に飛び乗ると、精一杯、低い男らしい声で叫びました。
「やったぞ~!ワオォ~~~ン!ぼくは男だ!」
まだ声の高いリューイの雄叫びは、子犬の遠吠えのようです。
おばあちゃんは呆れたように頭を振りました。
「馬鹿な子ね、リューイ。危ないから降りてらっしゃい。まったく……。そういうところ、パパの小さい頃にそっくりね。」
おばあちゃんは、テーブルから降りたリューイの肩を掴むと、と溜息混じりに言いました。
「ねえ、リューイ、よく聞いて。」
おばあちゃんの顔が真剣です。
「この子が竜だとしたら、育てるのは本当に大変よ。それにこの子はまだ赤ちゃんなの。ちゃんと育つかどうかは誰にもわからないわ。まだ目も明いてないし、弱っているみたいだから、もしかしたらこのまま死んでしまうかもしれないわ。」
「やだよ!」
リューイは叫びました。
「やだよ、そんなの嫌だよ!おばあちゃん、助けて!どうしたらいいの?」
おばあちゃんは答えてくれませんでした。竜でなくても、野生動物の赤ちゃんは育てるのがとても難しいのです。ましてや、竜ともなれば育て方を教えてくれる人などいる筈もありません。
リューイは先ほどの元気もどこへやら、のそのそとテーブルから下ると、力なく肩を落としました。言われてみれば確かに、竜の赤ちゃんはぐったりとしているように見えます。
とても静かで、「ミ」とも鳴きません。リューイは縋るようにおばあちゃんを見詰めました。