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竜の赤ちゃん、拾いました。第一章~第三章  作者: 小川せり
第一章 青の女王
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6. どこから来たの?

6. どこから来たの?


「ねえ、おばあちゃん、それ本当なの?この子は、本当に(ドラゴン)なの?」

リューイは椅子から立ち上がると、(つば)を飛ばしながら聞き返しました。唾が飛んでしまうのも無理はありません。だって、それが本当だとしたら大発見ですから。

――見捨(みす)てないで拾ってきて良かった!

1時間前の自分を全力で()めてあげたい気分です。

――それにしても(ドラゴン)の赤ちゃんを拾うなんて、今日はなんてラッキーな日なんだろう!

リューイは心の中で思わずガッツポーズをしました。

おばあちゃんは眼鏡(めがね)を外すと、(ひたい)に手を押し当てました。

「そうよ。種類にもよるけど、大人になったらすごく大きくなるわよ。」

「やったー、竜だ!本物の竜だ!すごいぞ!」

リューイは灰色の生き物を高く(かか)()げると、テーブルの(まわ)りをぐるぐると(おど)り始めました。(よろこ)びの(まい)です。ガチャガチャのハズレのような生き物だと思ったこの子は、めちゃくちゃレアアイテムだったようです。


おばあちゃんは興奮(こうふん)しきっているリューイを(なだ)めるように言いました。

「でも、すごく大きくなるのよ。最後(さいご)まで責任(せきにん)を持って面倒(めんどう)を見られるかしら?」

「大丈夫だよ!約束(やくそく)する!」

思わず声が大きくなります。先程まで、おばあちゃんにこの子の世話(せわ)をさせようと思っていたことなどすっかり忘れています。

捨てるわけがありません。目の前にいるのは、あの伝説の生き物なのです! おばあちゃんは何もわかっていません!

リューイはテーブルの上に飛び乗ると、精一杯(せいいっぱい)、低い男らしい声で叫びました。

「やったぞ~!ワオォ~~~ン!ぼくは男だ!」

まだ声の高いリューイの雄叫(おたけ)びは、子犬の遠吠(とおぼ)えのようです。

おばあちゃんは(あき)れたように頭を振りました。

「馬鹿な子ね、リューイ。危ないから降りてらっしゃい。まったく……。そういうところ、パパの小さい頃にそっくりね。」

おばあちゃんは、テーブルから降りたリューイの肩を(つか)むと、と溜息(ためいき)()じりに言いました。

「ねえ、リューイ、よく聞いて。」

おばあちゃんの顔が真剣(しんけん)です。

「この子が竜だとしたら、育てるのは本当に大変よ。それにこの子はまだ赤ちゃんなの。ちゃんと育つかどうかは誰にもわからないわ。まだ目も明いてないし、弱っているみたいだから、もしかしたらこのまま死んでしまうかもしれないわ。」


「やだよ!」

リューイは叫びました。

「やだよ、そんなの嫌だよ!おばあちゃん、助けて!どうしたらいいの?」

おばあちゃんは答えてくれませんでした。竜でなくても、野生動物の赤ちゃんは育てるのがとても(むずか)しいのです。ましてや、竜ともなれば育て方を教えてくれる人などいる(はず)もありません。

リューイは先ほどの元気もどこへやら、のそのそとテーブルから下ると、力なく肩を落としました。言われてみれば(たし)かに、竜の赤ちゃんはぐったりとしているように見えます。

とても静かで、「ミ」とも鳴きません。リューイは(すが)るようにおばあちゃんを見詰(みつ)めました。


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