番外編 ドラゴンの匂い
番外編 ドラゴンの匂い
「あらっ、三人とも寝ちゃったのね。」
リューイが目を覚ますと、お母さんが目の前に立っていました。お母さんはミュウにもたれかかって眠っていたフューイをそっと抱き上げました。
「ア~」
抱き上げられたフューイは、むずがって体を捩ると、ミュウのほうへと手を伸ばしました。
「フューイはミュウと一緒に寝ていたいってさ。そうだ、フューイのベッドにミュウも一緒に入れてあげたら?」
ほら、ほら、とリューイが冗談混じりにミュウのお尻を押して、お母さんのほうへ行かせようしました。それを見たお母さんがとんでもないと言わんばかりに頭を振りました。
「やめてちょうだい。ベッドがドラゴン臭くなるから。」
お母さんにはそう言い放つと、固まっているリューイを残したまま、さっさと下へおりて行ってしまいました。
「なんだよ…それ…」
しばらくして、リューイは口の中で小さく呟きました。
「ドラゴン臭いって、なんだよっ!」
今度はもう少し大きな声で言ってみました。じわじわと怒りが込み上げてきます。だって、あまりにもあまりな発言ではありませんか。次第に腹が立ってきたリューイは、今更ではありますが、「お母さんのバカ~!ミュウは毎日、お風呂に入っているんだぞ~!臭くなんかないぞ~!」と叫びました。
叫んで少しすっきりとしたリューイは、ミュウに謝りました。
「ミュウ、ごめんね。おかあさんが酷いこと言って。ミュウは全然、臭くないよ。本当にごめんね。」
リューイが優しくミュウの頭を撫でると、ミュウは気持ち良さそうに目を閉じました。
――♪
本人はまったく気にしていないようです。
それにしても…とリューイは思います。
――お母さんってときどき、訳もなくミュウに意地悪になんだよな。ミュウが羽布団をビリビリにしたこと、まだ怒っているのかな?だからってあんな言い方しなくてもいいだろ。ミュウは全然、臭くないのに!
そこまで考えて、リューイはふとある疑問に突き当たりました。
――もしかして、いつも一緒にいると匂いがわからなくなるのかな?本当はミュウは臭いのかな?でも、ドラゴン臭いってどんな匂い?ペットショップの爬虫類みたない匂い?
考えているうちにリューイはどんどん不安になってきました。
――もしかして、いつもミュウと一緒にいる僕もドラゴン臭くなっているのかな?ドラゴン臭いって…ドラゴン臭いって…
好奇心を抑え切れなくなったリューイは、ミュウに気付かれないようにそっと顔を近づけてミュウの匂いを嗅いでみました。しかし、それにはさすがのミュウも傷付いたようで、ぷいっと立ち上がるとベッドの下の潜ってしまいました。
あら、まあ…
おしまい。
お母さんが言う「ドラゴン臭い」という匂いがどのような匂いなのか、結局、リューイにはわかりませんでした。たぶん、ミュウは無臭だと思います。
みなさんはペットの匂いが気になりますか?筆者はペットの匂いが大好きです。
ときどきペットに執拗に「臭い、臭い」と言って、嫌がる様子をYouTubeにアップしている人がいます神経を疑いますね。たとえ相手がペットでも、嫌がっているのに執拗、且つ、故意に傷付ける行為は最低です。「ペットよりもあなたのほうが臭いですよ」と言ってあげたくなります。




