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竜の赤ちゃん、拾いました。第一章~第三章  作者: 小川せり
第一章 青の女王
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10. 思いがけない訪問者

10. 思いがけない訪問者(ほうもんしゃ)



赤ちゃん(ドラゴン)はクローゼットの奥に寝かされていました。おばあちゃん(いわ)く、「弱った動物は静かで暗い所を(この)む」のだそうです。

カゴに()けてある布をそっと取ってみると、気のせいか赤ちゃん竜は一回(ひとまわ)り小さくなっているように見えました。皮膚(ひふ)もさらに(しわ)()って、黒ずんでいるように見えました。(さわ)ってみると、体も(かた)く冷たくなっています。何の知識(ちしき)もないリューイにも、赤ちゃん竜が相当(そうとう)、弱っていることがわかりました。

「おばあちゃん、この子は死にかけているの?」

リューイはそっとおばあちゃんに(たず)ねました。

「リューイ…」

おばあちゃんはリューイの肩に手をそっと置きました。

「残念だけど、このまま何も食べなかったら長くもたないでしょうね…」

おばあちゃんは昨日(さくじつ)、リューイが帰った後もなんとか赤ちゃん竜を助けようと、いろいろと手を()くしましたが、赤ちゃん竜は何も受けつけませんでした。

「昔の人は、黄色い竜は(きん)を食べるとか、赤い竜は火を食べるとか言ったけれど、この子は何を食べるのかしら。ねえ、リューイ?」

おばあちゃんは(こま)ったようにリューイを見詰(みつ)めました。

「灰色だから…灰?」

おばあちゃんは無言(むごん)で肩をすくめました。

「そんなわけないよね。」

2人は(そろ)って溜息(ためいき)()きました。

「いったい、何を食べるんだろうね…」

二人の視線(しせん)の先では、赤ちゃん竜が寒そうに体を丸めていました。

赤ちゃん(ドラゴン)はリューイが持ってきたお菓子も木の実もキノコも赤ちゃん(ドラゴン)は全部、食べませんでした。だけど、まだ何か(ため)していないものがある(はず)。この子はまだ赤ちゃんだから、赤ちゃんには…そうだ!おっぱい!赤ちゃんはおっぱいを飲むんだっけ!ベニーの赤ちゃんも弟のフューイも、赤ちゃんはみんなママのおっぱいを飲んでいました!

――ベニー!

そこまで考えて、リューイは初めてベニーがいないことに気が付きました。

「あっ!」

リューイは思わず大きな声を出しました。

「どうしたの、リューイ?」

おばあちゃんが心配そうに(たず)ねます。

「ベニーがいない!途中(とちゅう)まで一緒(いっしょ)にいたのに!」

「まあ、ベニーちゃんって(だれ)なの?」

おばあちゃんはベニーが人間だと思っているようです。

「お(となり)の猫だよ!この子にお(ちち)を飲ませようと思って連れて来たんだよ!」

「そうなの。リューイは優しいのね。」

おばあちゃんは、リューイの頭を優しく()でてくれました。

「でも、竜は卵生(らんせい)だからお(ちち)は飲まないんじゃないかしら。」

「らんせい?」

「そうよ。鳥のように卵から生まれる動物は、(らん)生動物(せいどうぶつ)というのよ。卵生動物はね、お乳を飲まないの。(へび)やトカゲも卵生動物だから、お乳を飲まないわね。この子も卵から生まれた(はず)だから、きっとお乳を飲まないと思うわ。」

「卵生動物…」

リューイががっくりと(かた)()としました。


そのときです。コツコツと(まど)に何かが当たる音がしました。黄金(こがね)(むし)が窓にぶつかったときのような小さい音でした。

リューイが窓のほうに目をやると、そこには先ほどの妖精たちがいました。妖精たちは、一旦(いったん)はリューイから()()したものの、途中(とちゅう)で気になって()(かえ)し、こっそりリューイのあとをつけてきたのでした。

二人は窓の外から赤ちゃん(ドラゴン)を見つけると、大声(おおごえ)でリューイを()びましたが、リューイはまったく気付(きづ)きませんでした。そこで二人は何とかしてリューイに()(かえ)ってもらおうと、先程(さきほど)から何度(なんど)(まど)体当(たいあ)たりをしていたのです。

何度も思い切り体当たりをして、二人の肩が(いた)くなってきた(ころ)、ようやくリューイが振り向きました。






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