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第五章 盾と建前(1)

 車に乗り込むと、円はナビをセットした。

「残念ながら、今回遠い」

「いいよ別に、俺は乗ってるだけだし」

 そんな話をしながら、車は動きだす。

「しかし、別に現場に行っても何もしてないし、送迎してもらってるし、俺、必要?」

「保険は使わないに越したことないでしょ」

「保険料、払ってるのに?」

「あれは、安心へのお金だから。主として、私以外の一海の人間の安心材料」

 盾がいるからというのを理由に、一海の人間としては自分だけが、この件に関与できている。それは、円としては重要なことだ。

「どうでもいい話していいか?」

「どうぞ。先は長いしね」

「そこそこ良い金額いつももらってるけど、あんたのとこって収入源どこなわけ?」

 お祓い産業の金の流れってちょっと気になる、とつけたされる。

「あー、ケースバイケース。色々あったんだけど、今ってこの業界、国からの認可がおりてるかが一つのバロメーターになってて」

「認可って、そりゃあ、妙にそぐわない言葉だな」

「気持ちはわかる。でも、ほら、オカルト的なことに対する認識は表には出さないでも一応、国の偉い人とかの間にはあるわけ」

「陰陽師の名残り、的な?」

「そうそう。それで、認可受けてるところには、国からの依頼があるから、そういうのは国からお金もらってる」

 国からの依頼は、提出書類が多いので、円自身は嫌いだが、それでも手堅い収入源の一つだ。

「個人からの依頼の場合は、まあ実費ぐらいもらっとこうかって感じ。放っておいて厄介なことになったら、困るのこっちだし。ただ、たまに神経質な金持ち相手のときがあって、そういうときはがっつり正規料金もらってる」

 一番の収入源はそこだ。怨みを買いがちなこともあって、結構頻繁に依頼はある。

「正規料金、えげつなさそうだなー」

「まあうちは上手くやってる方だと思う。この業界では後発の割には認可受けてるし。巽とかは歴史長い分プライド高いから、基本個人の依頼受けてなくて、今はカツカツみたい。フリーの祓い屋増えたしねー」

 インターネットの発展で、一般人が業界の人間にアクセスしやすい。その分、家柄ではなく、突発的に霊視能力を手に入れた人間でも、仕事にありつけやすい。フリーはピンキリだし、失敗して余計な仕事を増やしてくれたりするので、できれば取り締まってほしいところだが。

「巽って、あれか、あんたの恋人のとこの。あのちょっと、むすっとした」

「そうそう。この業界、やり方が古臭いのよねー。ってあれ」

 当たり前のように言われたが、

「翔くんと面識あったっけ?」

「前に一度、一海ですれ違った。あの時は、すっげー顔で睨まれたな」

 そう言って、楽しそうに笑う。翔の敵意など、気にもしてない、と言いたげに。実際、彼にとってみれば巽翔など、驚異でもなんでもないんだろう。

「あー、ごめんね、あの子が」

 空回りする翔の敵意を、もっと言ってしまえば隆二に勝てそうにもない自分たち人間のちっぽけさを、哀れみながら苦笑する。

「いや、あっちがフツーの反応だろ。受け入れているあんたらがおかしい」

 淡々と言われた言葉に、思わずバックミラー越しにその顔色を伺ってしまう。

 特になんの感情も、うつしていない顔で、

「化け物を護衛とはいえ雇うなんて、正気じゃない」

 そう続けた。別に怒っているとかではなく、ただ事実を述べているだけのようだ。だから、円はコメントを控えた。

「気になってることわかったから、すっきりした。あとは寝るから、ついたら起こして」

 隆二はマイペースにそう言うと、目を閉じる。

「わかった」

 きっと狸寝入りなんだろうな。そう思いながら返事をすると、代わりにラジオのスイッチを入れた。



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