表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

第二章 妹と同居人 (1)

 一海円が車に戻ると、神山隆二が電話をしているところだった。後部座席にだらけた感じで座ってる。

「ん、終わった。怪我してないってば」

 どこか呆れたような口調。

 それにしても、この男は、彼女との電話の時だけ、やたらと優しそうな顔をしている。気づいていないだろうけど。

 邪魔をしないように黙って、運転席に乗り込む。刀に軽く触れ、呪文を唱えると、刀は消えた。でも、それは見た目だけ。円の指先には、確かに刀がある。

 透明になった刀を助手席に置く。職質をかけられたところで、最終的には家の力でなかったことにできるが、それでも面倒ごとは避けたい。

 ドライビングシューズに履き替えると、大きく伸びをした。あー、疲れた。今日はさくっと片がついた方だが。

 後ろの隆二の相槌だけが聞こえる。電話の向こうの彼女は、またガーっと喋っているのだろう。

 円もケータイを確認すると、メッセージが一通。

「今晩空いてますか?」

 差出人は巽翔。時刻は数分前だった。

「ごめん、仕事」

 ちょっと悩んでから、

「明日はたぶん大丈夫」

 そう付け足すと、

「空けます」

 と直ぐに返ってきた。

 その言い方に少し笑う。実に彼らしい。

「もう帰るから。ここから、四十分ぐらい?」

 隆二がそう言って、顔を上げた。バックミラー越しに目があったので、軽く頷いた。

「あー、ちょっと待って」

 隆二はケータイを少し耳から離すと、

「真緒達、ファミレスに入るところだって」

「じゃあ、そこ行きましょうか。どこのお店?」

 隆二が聞き出した店を、ナビに入力する。

「はいはい。じゃあ後でな。大道寺さんに迷惑かけんなよ」

 そう言って隆二が通話を終える。それを見届けてから、

「神山さん、これ、今回の報酬」

 現金の入った封筒を渡す。

「どーも」

 隆二は封筒を受け取ると、そのまま乱雑にズボンのポケットにしまった。そこそこ厚さがあるのに、適当過ぎるだろ。

「数えないの?」

「あんたがそこで、嘘はつかないだろ」

 欠伸をしながら彼が言う。信頼されてるのか、なんなのか。

「ついたら起こして」

 そして、そのまま、だるそうに目を閉じた。

 肩をすくめることで返事をすると、エンジンをかける。

 この男が、自分が運転する車で本気で寝ることはない。そこまで自分を信用はしていない。

 それは、よくわかっている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ