悪役令嬢の婚約者ⅲ
前の2話だけだと、なんか話し被ってたのでこれも投稿しました。
あの日、彼女の笑顔を見てしまった日、図書館の例の本を探していた。
「あの日は外国語だから詳しく見ていないが……これか『歴史における様々な神の動き』?」
中を見ると、びっしりと文字が並び、全てが難しい言語で書かれている事は明白だった。
しかし、あの時彼女はこの本を読んでいた。頭が悪いというのは嘘ということなのか。
この本の……確か、この辺りを読んでいたはずだと、ページをめくると、昔の勇者達と言われた者たちの話が載っていた。
「神が時折人々に対し、言葉を授ける時がある……」
“ある少年が毎日畑を耕すようにとの言葉を受け、従った結果、財宝が生まれた”
“ある女は毎日ミサに通うようにとの言葉を受け従った結果、魔力が生まれた”
“ある時青年は神からのお言葉を受け、その通りに動いた結果、その王国は守られ平和が訪れた”
“それを神託と呼び、与えられた者は名誉ある事として捉え、神が唱える通りに生きることを義務とし、それが当たり前のこととする定めとした”
「義務……」
もしあれが神託で義務ならば、彼女はあのまま生きなければいけないというのか。
そもそも、彼女があの性格になる事によってこの国の平和に繋がるのだろうか。
結びつかない、彼女が傲慢である必要性を感じない。
その本のページをさらにめくっていく。
“理由は明確ではないが、神を使う人間が居た”
“其の者は神の力によって国の土地に潤いを与え、民からは女神と崇められた”
「神を使う人間……」
神託とはまた違う、確かに魔力では水は出せても限りがある。干からびる土地に潤いを与える程の水は神にしか出せないだろう。
一度、本を本棚に戻す。
神託、昔聞いた事がある。神託を受けた者は、周りに神託を受けて行動していると知られてはいけない。
ただ、神も、其の者に合った神託を降ろすことがほとんどであり、そうでないものは……
なんだっただろう。
これは誰に聞いたのか。
「重要だ。誰だった」
――― 目を瞑る。
ああ。そうだ。
リリアンローズの母親だ。
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