マリアは笑う
最近ハイハルト様の表情が楽しそうだ。
わたくしとの婚約の話が出ているせいだろう。
それはそうだ、だって、わたくしは誰からも愛されるような人物なのだから。
水々しく潤った淡いピンク色の髪、輝くような黄金色の瞳、鼻は小さく、唇は常に紅く色づいている。人当たりも良く、学年でもトップのクラスを維持し、立っているだけで癒されると評判だ。
クラスの皆んながわたくしを褒め称える。
そして、最近になってハイハルト様の婚約者、リリアンローズ様がわたくしに対して嫌がらせをしてくるようになった。
それが困るとハイハルト様にすがると、婚約者が申し訳ない、できる限り守りましょうと言ってくださり、最近では常に一緒に行動している。
放課後になると、どうしても外せない用事があると言っていなくなってしまうが、それでも日中ずっと一緒にいれるなら問題ない。
むしろ、皆んなの目がある時に常に2人でいる事が好都合だ。
学園の庭でハイハルト様が渡してくださったハンカチ。あれを返すタイミングはとても考えた。
そろそろ嫌がらせが始まるだろうと神から聞いた時は飛んで喜んだ。
これで、話しかけるついでに守ってくださいとこの顔で頼み込めば彼だって満更じゃないはず。そしてやはり守ってくださっている。
そもそも、この私が好いていることを光栄に思って欲しいくらいだ。
だって、今までに沢山の求婚はされてきたし、婚約者がいる人たちからも求愛されてきた。
私に落ちない人物なんていないだろう。
「ふふ……」
あの、化粧が顔になったようなブスのお陰で、簡単にハイハルト様を落とせそうだ。本当に感謝している。
だから、
「精々がんばって私をいじめてちょうだいね」
そう言って私は高らかに笑った。
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