神のナイフ 1
神がハイハルトにナイフを渡した後、どんな感じだったのかの一幕です。
「いっ……」
酷い頭痛がして目を覚ますと、自分は床に倒れていた。何故床に倒れているのか少しだけ頭で考える。
『リリアンローズの神託の終わらせ方を教えてやろう』
バッと体を起こした。
神の声が蘇る。
「神託の終わらせ方……」
少し目をつぶって思い浮かべてみる。
何も頭には浮かばない。教えてくれるのではなかったのだろうか。
不意に、妙な柄のナイフが目に入った。
「これは……?」
神が来る前には無かった物だ。あの神が置いていった物だろうか。
慎重に手を伸ばし、そのナイフを手に取る。
その瞬間。
『お前は、この世界の悪役令嬢役に定められた』
頭に響く、男の声。
先程の男と同じ声だ。
その後ずっと、永遠にも思えるほどの指令、そして、19歳で私に殺されろという、言葉。
「………………」
彼女はこの指令をいつ聞いたのだろうか。最近だろうか、何年か前だろうか、それとも
初めてこの神託を聞いたときだろうか。
幼い少女に、この運命を突き付けたというのだろうか。
更にこの神託には、罰が決められていた。
この神託を誰かに伝えた場合、自ら死んだ場合、指示を全うしなかった場合。
_____ハイハルトの存在を抹消する。
神はその魂を殺すことは許されていないが、ある一定の条件で神に託させる。全ての意識は神が自由に動かせるようになってしまう。言うなれば神の人形。
そのことを人物の抹消と呼ぶ。
彼女は神の指示だからだけではなく、この罰を防ぐためにもやっていたのかもしれない。
衝撃すぎる悲しみに、体が動かない、目から出る滴が止まらない。
一度、深呼吸をする。
最後に神からの指示が出た。
このナイフで、『悪役令嬢役』を殺せ。
そこには神が整えた舞台上に出て来る役が発表され、最後の幕の下ろし方が示されていた。
お読みいただきましてありがとうございます。
恐らくここでも彼はリリアンローズに惚れております。




