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リリアンローズの物語

 

『ハルトと呼んでくれないの?』


 昔言われた言葉を思い出しました。

 小さい頃、舌足らずで『ハイ、ハルトさま』と呼んでいたのに気がついたハルト様が「ハルトで良いよ」と言ってくださった後のことでございます。


『でも……』


『じゃあ、私はリリアンのことをリリィと呼ぼうかな』


『リリィ?』


『そう、それでもだめ?』


『??』


『ハルトと呼んでくれないの?』


『……ハルト様?』


『ふふ、そう。他の人に呼ばせてはダメだよ?私もそうするから』


 にこにこと笑いながら頭を撫でられ、私も笑っていたような気がします。






 婚約破棄は無いと知ったあの日から、常に私を気遣い、支えてくれるハルト様は、学校の卒業式で最優秀賞を受賞するほどの成績で卒業した後、すぐに私の家に婿修行に入り、お父様と言い争いの毎日を送られておりました。


 残念ながらあまり勉強が出来なかった私も、あの後から猛勉強をしたのは言うまでもありません。思い切り勉強ができる環境は、私にとってとても充実した日々でごさいました。


 私の行いは神託によるものだという通知は学校全域に行われ、卒業後に私を追放しようとしていた者たちはマリア様と共に姿を消したそうでございます。




「リリィ、何か考え事?」


「今、初めてハルト様が私をリリィと呼んでくださった時を思い出しておりました」


「へぇ、私はどうだったのかな?」


「ふふ、全く変わっていないですよ」


 私の為に昔の記憶を渡してしまったハルト様は、私がふいに昔の事を思い出すと、全てを聞いてきて自分の思い出にしようとして下さいます。


「また全部話すのですか?」


「その記憶は私とリリィの物だろう、独り占めはいけないよ」


 結局全てお話はいたしますが、記憶が2人の物だと言ってくださるハルト様のその言葉を聞く為に毎回聞き返しているのは内緒です。






 神託はもう終わりましたが、未だに朝起きるとき、お告げが来るのではないかという恐怖に包まれる時がございます。


 でも、隣に貴方がいてくれるという事実だけで、その恐怖を払拭してくれるのです。


 恐らく、愛おしい貴方の存在が一生私を救ってくださるのでしょう。


 願う事なら、これからも永遠に、この幸せを……




「そうです、ハルト様、お伝えしたいことがあるのです。実はーー」








※ ※ ※ ※ ※







 (わたくし)がこの度、ハイハルト様の妻を務めております、リリアンローズでございます。



 母になる事を伝えた時、ありがとうと抱きしめてくださった貴方の涙は、私の大切な宝物として心に留める事になるでしょう。



 未だに素敵な貴方の隣に立つ事には慣れませんが、でも、偽りない気持ちを貴方や、大切な方々に伝えていきたいと思っております。




 ですから神様、どうか私たちを、愛する者たちを、あたたかくお見守りくださいませ。




リリアンローズ


 

ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。


たくさんの方に読んでいただいた事は、驚きと、恥ずかしさと、それを大きく上回る嬉しさで胸がいっぱいでございます。


感謝感謝です。


ここで終わりには致しますが、書ききれなかった事柄や、設定などをオマケとして投稿していきたいと思っておりますので。

お暇なときにでもお読みいただけたら幸いです。


りょう。

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