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悲しみの舞台は幕を下ろす

途中から第三者視点が入ります。

読む際はお気をつけください。

 

 いつものように赤い宝石、赤いヒール、赤いドレス、そして最後に真っ赤な口紅を塗って完成です。

 黒い髪は全て結ひ上げ、薄紫の瞳に気合を入れます。



 会場を見渡すとマリア様の姿が見えました。



 手始めにワインでもかけてみましょうか。

 ハイハルト様に見つからなくてはならないのですから。これくらいやって見せましょう。

 あとはそう、近くにグラスを置いて置かなければ。



 目をつぶって考えます。



 いじめてしまった人々に謝罪が出来ないことに心残りがございます。

 そして、父や母に、お別れを言えないこと。

 親不孝をお許しください。


 私は、今日この日を待ちわびておりました。


 悲しむ人はいないだろうけど、でも、私が殺されたことを覚えておいて下さいませ。


 これは私の最後のわがままなのです。




 目を開けると、ヒールを鳴らしながらマリア様に近づきました。意を決して言葉を発します。


「御機嫌よう、マリア様」


「あ、御機嫌よう。リリアンローズ様……」


「あらやだ、なにその貧相な服、どこで買ったのかしら。見て見たいものだわ」


「こ、これは、頂いたもので……」


「なに?では貴方が着ているからそう見えるんでなくて?早く脱いでさしあげたら?」


「な、リリアンローズ様……」


「嫌だわ、なにその表情、まるで(わたくし)が怖いみたいじゃない」


「も、申し訳ありません……」


「何かしら、全く聞こえないのだけれど」


「申し訳ありませんっ……」


 パシャ。


 頭から白ワインをかけました。


 周りがこちらを見ているのが分かります。


 ああ、ごめんなさい、せっかく綺麗に着飾っているのに。



「……あら、手が滑りましたわ、あまりにかけて欲しそうなのですもの、ごめんあそばせ?」


「…………ぅ、ううっ」


 マリア様の瞳が涙に濡れます。

 その時、誰かが近づく音が聞こえました。



「何をしている」


「ハイハルト様っ」


 いつもの黒い服ではなく、濃いスミレ色のスーツを着たハイハルト様は、とてもかっこよくいらっしゃいます。


「あら、ハイハルト様御機嫌よう、マリア様とお話をしていたのですわ」


「話をしていた?」


「ええ、あら嫌だわ、マリア様、どいてくださる?」



 そう、声をかけた瞬間でした。



 ハイハルト様から鋭い言葉がかけられたのは。



 ※ ※ ※



 周りの者達は面白そうな物を見る目で彼等を観ていた。当たり前だ、こんなパーティのど真ん中で口げんか、しかも婚約者同士ときている。



 ただ、この2人が本当に結婚する未来を想像する者はここには居らず、パーティの余興位に考えているのかもしれない。



「ああ!もう、うんざりだリリアンローズ。お前はこのマリアに、数々の嫌がらせをしてきたと聞いている」


「それは、婚約者がいる貴方に近づいたから仕方なくですわ」


「彼女だけじゃない、様々な令嬢達に対しても、見下し、罵り、痛めつけていたそうじゃないか」


(わたくし)が悪いと仰るのですか、ハイハルト様」


「ああ、そうだ、ここに入る前からそうだった。その、無駄に着飾ったドレスがどれほど高価で民を苦しめるか、お前には理解できないだろうな」


「無駄ですって!?(わたくし)は貴方に相応しくあるために!」


「ここに入ってからも、下級のクラスのくせに爵位が低い者たちを虐めるなど、本当に呆れてものも言えない」


「それは、あれらが身分を弁えないからああしたまでで!」


「身分を弁えていないのは誰だ!お前の方だろう!」


「な、な、全て!ハイハルト様のためを思ってやっていたのに……!」


「私のためだ?やめてくれ、反吐が出そうだ」


「な!!!」


「あー、あと、言ってなかったが。もう、お前など、用は無いんだ」


「なん、ですって……!」


 ハイハルトがマリアを腕で隠す。それだけで何が言いたいか理解できたのか、リリアンローズは顔を赤くして怒りで体を震わせている。

 そして、ハイハルトは目を細めてマリアを見た後リリアンローズに向き合った。





「なぁ、もういいだろう、リリアンローズ」




 その瞬間、



 リリアンローズは近くのグラスを手で叩き割り、マリア目掛けて駆け出した。急すぎて皆が動けない。


 マリアが刺されると、皆が思っただろう。



 しかし……


 皆の想像していた事は起きなかった。



 周りは静まりかえる。



 理由は明白だ。



「………………」



 ハイハルトの持つナイフがリリアンローズの胸を刺していた。


お読みいただきありがとうございます。



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