第8話 烙印
「んん…此処は……っ」
目が覚めると薄暗い牢屋に居た。なんでこんな所に……っ!
「そうだ…私、アイツと戦って負けて……っ!」
「お目覚めかい?小娘」
「ドレイク……!」
此処に連れてきた張本人が姿を現す。怒りを露わにし、睨み付けるも相手は意に介していないようだった。
「こんなことして…メリアさんが黙ってないよ、貴女はきっと死ぬより酷い目に遭うよ…」
「ふ…負け犬の遠吠えほど虚しいものは無いね、お前のような弱者を側に置いておくほど彼女も愚かじゃないさ…今頃、目が覚めたんじゃないかな?」
「…貴方、私があの人に招かれた理由、何だか分かる?」
「はっ…只の玩具が何を粋がってるのさ、お前に対する愛情なんざ偽りさ」
そう問い掛けるとバカにしたように鼻で笑う。その余裕…いつまでもつだろうかな
「ふふっ…あははっ…可哀想な人。私はね、あの人から直々に花嫁になってくれって言われたの。愛情だっていつも沢山くれるの。ねぇドレイク…貴方はメリアさんに好きって、愛してるって言われたことある?」
余裕の笑みから一変、怒りに顔が歪む。やっぱり…こういうタイプは挑発すると直ぐボロが出る…なら
「私は言われたことあるよ、1日中ずっと…飽きるくらいにね」
「ふざけるな…!出鱈目だ。お前みたいな人間にメリーが愛を囁くなんて!僕は認めない!」
あーあ、ヒステリックになっちゃって…後もう一押しかな
「貴方が認めようが認めまいが事実だよ。つまりメリアさんは貴方に興味なんか無いって事だよ」
「このガキィィ!立場ってものを分からせてやる!」
牢屋の扉を突き破り、此方へ向かってくる。狙い通り……!
「あんたみたいな単細胞、本当扱いやすくて助かるよ…っ!」
目の前まで来たところで手元に隠しておいた閃光弾を投げつける。地面にぶつかった衝撃で炸裂、閃光が辺りを支配した
「ぐあぁぁっ!?目が、目がぁぁ!」
相手が錯乱しているうちに牢屋を抜け走り出す。正直何処だか分からないけど……いずれは……!!
「……」
「メリアさん……!?」
角を曲がった先にはメリアさんの姿が見えた。助けに来てくれた………!?
「違う…誰なの?貴女、メリアさんじゃない」
「へぇ、人間ごときがボクの正体に気付くなんてね……」
目の前の何かはそう言うとニヤリと笑う。くそ…こんなのを一瞬でもあの人だと思った自分が恥ずかしい…!
「メリアさんの姿でそんな顔しないで!不愉快!」
ダガーを抜き、目の前の敵へと向かう。だが相手はぼぅっと突っ立ったまま動かない
「……っ!?」
刃が通る寸前、目の前の敵が霧散して消える。勢いを殺せずそのまま倒れる
「はっ……このシェイプシフター様を捉えられるとでも思ってんの?愚かだね」
「あぐっ…!?」
いつの間にか私の姿になったシェイプシフターに思い切り背中を踏みつけられる
「自分自身に踏まれるってどんな気分?あ、さっきの姿で踏みつけた方が良かった?あははは!」
「ふざけるな…妖魔…っ」
「ふふ、良い顔だぁ…そういう憎しみに染まった表情、ゾクゾクするよ」
「おい、下等生物…そいつは僕が調教するんだ、手を出すな」
最悪、追い付かれた……
「ちぇ…折角捕まえてやったのに冷たい奴。人間ごときに何をマジになってんだか」
「黙れ。小娘…良くもやってくれたなぁ…立場を分からせてやるよ」
ポケットから禍々しい魔力を帯びた小さな印鑑のような物を取り出し、不気味な笑みをしながら此方へ近づく
「何を…する気…?」
「なに、お前に相応しい印を付けてやるだけさ…奴隷の印をな…っ!!」
ジュウゥッ!!
「ぐっ…うぅっ…!」
膨大な魔力が肌を焼き付ける。熱い…痛い…っ!でも悲鳴はあげるものか…!そんな事したらアイツを調子づかせるだけ…っ
「ち…悲鳴を上げろよ!泣き叫んで許しを請え!」
「ぎぃっ…!?ぐぅっ…んんっ!!」
歯を食い縛り、想像を絶する痛みと熱を耐える。暫く押し付けたままだったが、思い通りにならないと悟ったのか筒が離 れ熱が引いていく
「はぁっ…はぁっ…!」
「ち、つまらん……まぁ良い。これでお前はもうメリーとは対等に居られない…だって奴隷だものね!」
「ふふ…あんた本当にバカだね、こんな事してっ…メリアさんが黙ってると思う?大事な花嫁を傷物にされて、黙ってるほどっ…あの人は温厚じゃないよ…っ」
街のゴロツキにすら容赦ないんだ…心の底から嫌っているコイツには相当だろう
「ふん、せいぜい吠えてるが良い…おいシフター、連れていけ。逃げられないように厳重にしておけ」
そう言いドレイクは手枷を付けて去っていった。くそ…脱走はキツくなったな…
「へーへー、仰せの通り……よっこいしょ、うわ軽っ……嬢ちゃん、ちゃんと食ってんのか?」
「余計なお世話よ…ていうかいつまで私の姿になってんのさ……」
「ん?じゃあメリアの姿になった方が良い?」
「それはもっと嫌…」
「我が儘な奴…どうしろっつーんだよ」
呆れたように呟き、頭を掻くシェイプシフター。んー…やっぱり本来の姿って無いのかな
「私の姿でも良いけど、一部変えてくれない?髪の色とか…ていうかそもそも貴方の性別は?」
「さぁねぇ…何者にでもなれるけど、何者でもない……それがシエイプシフターだし」
そう言い、一瞬淋しそうに呟いてから表情を戻す
「ごめん……」
「なんで謝るんだよ…」
「だって…気にしてるんでしょ?だから……」
「……変な奴」
「あはは、良く言われる」
「調子狂うなぁ…ほいっと」
「痛っ…!もうちょっと優しく下ろしてよ」
無造作に牢屋へと放り投げられ、上手く着地できず尻餅をついた、痛い…
「うっせ、奴隷なんかに気を遣ってられっか…どうせお前は後3日もすれば他の魔族に売られるんだ…今のうちに奴隷の扱いに慣れといた方が楽だよ?」
「親切にどうも……でもメリアさんはきっと助けに来てくれる。だから私は屈しない…!」
強い揺るぎ無い意志を込めて彼女を見つめる。信じていればきっと来てくれる…あの人は私を裏切ったりなんかしないから
何気なくブクマ数を確認したら、1日で4件増えててちょっとびっくりしましたww
ドレイクに奴隷の烙印を付けられた優花、だが挫けずメリアの助けを信じて待ち続ける……果たしてメリアは間に合うのか!?
次回、勇者パーティーの話もちょこっと入ります