第23話 襲撃
「んん…ふわぁ…っ」
窓から射し込む朝日の光に目を覚ます。うー…何だか体が怠い。後なんか寒い…ふと自分の体がシーツ1枚に包まれ、後は全裸だということに気付く
「ふぇっ!?何で私、裸……ふにゃあっ!?」
訳も分からずパニックになっていると後ろから抱き締められる。振り向くと同じく全裸のまま、すやすやと眠るメリアさんが居た
「……っ!!」
その瞬間、昨夜の行為を思い出す。ボンッと音が出る勢いで急激に顔が赤く染まっていく…
「あうぅ、あうあう……っ」
意味を為さない言葉を発しながら悶絶する。恥ずかしい…
「んん…ふぁ……朝か。…ユーカ、もう起きていたのか?」
「メ、メリアさん…お、おはようございます…っ」
うぅ…ダメだ、メリアさんの顔をまともに見れない…
「うむ、おはよう」
ふわりと笑い、起き上がり私を優しく抱き締める。もう張り裂けるんじゃないかと思うくらいにバクバクと、五月蝿いくらいに高鳴っていた
「ユーカよ、こちらを向いてお主の可愛い顔を見せておくれ?」
「む、無理です…恥ずかし過ぎて顔が見れません…っ」
「ふふ、そうじゃのー。普段の大人しい所からは想像出来ないくらい乱れておったからなぁ」
「わー!わー!止めてくださいっ!」
振り向き、ポカポカとメリアさんの胸を叩く。そんな私を微笑ましく見つめ頭を撫でる
「むぅ…メリアさんだって、私に負けないくらい鳴いてたじゃないですかぁ……」
何だか自分だけ照れているのが悔しくて、言い返してみる
「ふふ、そうじゃな…だが誰にでも、と言うわけではない。お主だから妾もあんな風になってしまったのだぞ?」
そう言い勝ち誇ったような顔をする。むぅー……
「メリアさんのずるっ子……」
「ふふ、妾を口で負かそうなど100年早いぞ?」
クスクスと笑うメリアさんを見て、いつか絶対負かしてやると心に決めるのだった…
「さて、そろそろ皆も起きる頃だろうし…妾は1度部屋に戻るよ」
そう言い、メリアさんは立ち上がる。もう行っちゃうのか……そう思うと同時に引き止めるように彼女の手を掴んでいた
「ユーカ…?」
「あ、あのっ…出来ればもう少し…2人きりで…居たいですっ……」
「はぁ…全く、この甘えん坊め……」
口ではそう言いながらも嬉しそうな表情で私を抱き締めたまま、ベッドへと寝転ぶ。
その後、ルル姉さんが私たちを起こしに来るまでの少しの間、甘い時間を過ごしたのだった………
「さて、皆の者。朝早くから集まってもらって申し訳ない……」
謁見の間には、四天王やシェイ、魔王城の兵士達全員が揃っており、張り詰めた空気を醸し出していた
「すでに知っている者も居ると思うが、人間達との戦争がもう間近に迫っている…命を落とすかもしれぬ。中には故郷に家族を、恋人を置いてきた者も居るだろう」
そう言いメリアさんは一旦、兵士達を見つめ言葉を続ける
「戦に出たくない者は申し出てくれ。勿論、罰するつもりは無い…臆病者と罵ったりしたりもせぬ…だから」
「魔王様!はぐれ者だった俺をあんたは受け入れてくれた!だから俺はあんたに命を預ける!」
「俺もだ。あんたには返しきれないでっかい恩があるんだ!そのために戦うぜ!」
「俺もだ!」
「俺も!」
1人の兵士が宣言したのを皮切りに次々と兵士達が自分の意思を示す。戦から逃げようとする者は誰一人として居なかった
「ありがとう。だが妾は人間を滅ぼすつもりは無い。我が母アイナ、そして此処に居るユーカのように分かり合うことも出来ると思っている。それでも皆は共に戦ってくれるか?」
再び問い掛ける。今度は兵士達は静かに頷き、答えた
「うむ…ありがとう。勇敢な戦士達よ!妾と共に戦ってくれ!魔族と人間の未来の為に!」
メリアさんが高らかに宣言すると謁見の間は兵士達の歓声が響き渡った
「やっぱりメリアさんは凄いです」
「む?どうした急に」
書斎で書類の整理をしていると、妾の腕の中でじっとしていたユーカが唐突に切り出す
「いえ、あんなに沢山の兵士達に慕われるなんて、とても信頼されているんだなぁって……」
「あぁ……妾もあそこまで慕われているとは思わなかったよ。古参の者達は義父様の代から仕えておるから、その関係だと思っていたのだがな」
「それもあるかも知れないですけど、やっぱりメリアさんの人柄に惚れてるからこそ、皆は付いてくるんですよ?」
そう言い、ユーカはまるで自分の事のように誇らしげに胸を張る
「そうか……そうだと良いな」
そう微笑み、ユーカの頭を撫でる。恥ずかしそうに、それでいて幸せに満ちた表情で妾の胸に擦り寄る。むぅ…理性が保てなくなってきた、そろそろ止めておくか
「ぁ…っ」
手を離すと、物足りないと言わんばかりに瞳を潤ませ、妾を見つめる。ぐぅ…
「全く、お主はいつもいつも妾をその気にさせおって…もぅ!」
「ひゃあっ…!?」
耐えきれず、ユーカを思い切り抱き締める。あんな物欲しそうな顔をされて我慢できるか!
「え、あの…メリア…さん…お、お仕事は…?」
「そんなもの後からやれば良い。まずは物欲しそうな顔をしておねだりしている嫁の相手をせねばな」
「ちょ、やっ…んんっ…ふぅ…んっ」
抵抗しようとしたユーカの手を素早く掴み、キスをする。無駄だと悟ったのか、若しくは最初からする気は無かったのか、抵抗を止めて受け入れる
「んちゅ、んんっ、ぷはっ…ふふ、抵抗せぬのか?」
「はぁっ…抵抗出来ないって…分かってるくせに…狡いです…」
拗ねたように此方を見つめてから、照れ隠しで胸の中に収まる。その仕草が愛しくまた強く抱き締める
「メリア!大変だ……って、こんな時に何イチャイチャしてんだよ!」
もう一度、キスをしようとした時にシェイが慌てた様子で部屋へと飛び込んできた。必死の形相にただ事では無いと伺える
「シェイ、何があった?」
「すまない、偽の情報掴まされたみたいだ。人間が不死者の森まで攻め込んできた!」
「なんだと!?」
「今、アンデッド達に手こずってるようだけど、勇者達も居るから、いつ突破されるか分からない。ボクが出て時間を稼ぐ、その間に体勢を整えてくれ」
「分かった……シェイ」
「ん?」
「死ぬんじゃないぞ……」
「へへっ、ボクはそんな簡単にはくたばらないよ、じゃあ行ってくる!」
そう言い残し、シェイは部屋を去っていった
「ふぅ…全く。妾とユーカの一時を邪魔するとは……良い度胸をしておるの、人間ども」
「メリアさん…ちょっと怖いですよ」
「うむ、すまぬ……ユーカ、城の外には「私も…戦います…っ!」なっ…」
妾の言葉を遮り、自分を奮い立たせるようにユーカは決意を口にした
「……分かった。ただ妾の側から離れるな…守ってやる、必ずな」
「分かりました」
「では行くぞ!」
「はいっ!」
元気の良い返事を聞き、妾達は戦場へ赴く……
この先に待ち受ける運命を妾達はまだ知る由も無かった……
「うひゃあ、凄いことになってんなぁ……」
不死者の森に辿り着くと人間とアンデッドの断末魔が入り乱れ、不快な音を発していた
「さて…此処を指揮してるのは……アイツか!」
兵士に指示を出している女が目に入る、気配を殺し、死角から奇襲を掛ける。指揮官を潰して混乱させる!
「…っ!?」
しかし相手もすんでのところで察知、ギリギリの所で回避をする。ち…っ
「奇襲とは…魔物らしい姑息な手を………!?」
「え………っ」
顔を上げた指揮官を見て驚愕する、嘘だ…何で…
「アリス…どうして…君が此処に居るの……?」
居る筈のないと信じていた、かつての友がそこに居た………