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第22話 信じる者と疑う者

「これとこれ…あとこれも貰えるかな?」


「あいよ、嬢ちゃん1人旅かい?」


「あぁ…亡くなった主人が好きだって言っていたこの世界を見てみたくてね…身一つで旅をしているんだ」


「そうかい。あぁでも気を付けなよ?近々魔族との戦争が起こるみたいだからよ。この近辺が拠点になるらしい」


そう言って店主は不安そうに呟く。そうか、遂に攻勢に出るのか……


「忠告ありがとう。巻き込まれないように気を付けるよ」


金を置き、品を受け取り店の外へと出る


「ふぅ、1度戻るか……我が最愛の娘の下へ」


そう呟き、街の外を目指す。生涯愛したあの人と我が娘と過ごした魔王城へ向け、歩き出す











「…稽古を付けて欲しい?」


「はい、皆さんの足を引っ張りたくないんです」


真っ直ぐにオレを見つめてキッパリと言い放つ…ちょっと待て。足を引っ張りたくないって…まさか



「お前、戦争に出るつもりなのか?」


「勿論です」


即答する彼女の瞳に迷いは無い。まぁユーカの実力は知っている、敵対していた頃は俺達、四天王と渡り合えていたしな……ただ


「お前、同族と……否、勇者達と戦えんのか ?」


そう問い掛けるとピクッと体を震わせる。やっぱりまだ迷いはあるんだな


「多分、戦えません…でも!」


「じゃあ駄目だ、願いは聞けねーな。中途半端な覚悟で戦場に出ても死ぬだけだ」


「でも…っ」


「はっきり言ってやる、足手まといだ…自分はおろか、他人まで危険に晒す事になるからな。迷いがあるなら戦うな」



そう吐き捨てるように呟き、ユーカから離れる。彼女は立ち尽くしていたが、やがて逃げるように走り去っていった


「ごめんな、ユーカ…」


聞こえないと分かっていても呟かずにはいられなかった










「はぁ……」


部屋に戻るなり、ベッドに横たわり溜め息を1つ。勇輝やレグナ、レックスさんと戦うなんて、私には無理だ……実力もそうだけど、何よりも大切な仲間だった人達に刃を向けられるなんて出来ない


「はぁ…甘いなぁ、私は……」


「その甘さもお主の良いところでもあると妾は思うぞ?」


「メリアさん…いつの間に」


入口に立っていたメリアさんが言いながらベッドへと移動し、隣に座り私を見つめる


「さっきの会話を偶然聞いてしまって、ちょっと気になってな。……ルルティアは憎くて言ってる訳では無いのだ、気を悪くしないでおくれ」


申し訳なさそうにメリアさんは呟き、私の頭を撫でる。


「大丈夫、分かってます。すみません、心配掛けて」


「気にするな、ユーカが元気がないと妾だけでなく、皆の調子が狂うからの…お主には笑っていて欲しい。お主の笑顔は妾達の力の源だ」


「うわ、いつの間にか重要な位置にいる…」


まぁ、私の笑顔は元気を貰えるとか、癒しだとか良く言われてきたけど…実感無いなぁ


「そうじゃよ。ルルティアやリーパー、メルルは兄妹が出来たみたいだと言っておるし、ベルクティオは娘と似ていて放っておけぬと言っていた」


「…ベルクティオさんって結婚してたんですか?」


「うむ、2人の子供が居てな、奥さんもなかなか美しい人だったの」


「…そうですか」


むぅ…何だかメリアさんが他の女の人を褒めるのは嫌だなぁ……私ってこんなに嫉妬深かったかなぁ?


「複雑な顔をしておるの……妬いておるのか?」


「え…いや…あの…っ」


図星を突かれ、言葉に詰まる。そんな私の様子を見て微笑み、言葉を繋ぐ


「ふふ…可愛い奴じゃな……安心せい、妾が真に愛を捧ぐのはユーカ、お主だけじゃよ……」


そう言い、メリアさんは額にキスを落とす。擽ったさに身を捩らせながら、愛されていることに嬉しさを感じる


「妾の愛、感じてくれたかの」



「はい、とても伝わりました。でも……」


「ぬ?どうした?」


「この先を望むのは……我が儘だと思いますか…?」


囁いたあと、真っ赤になり俯く。雰囲気に流されたとはいえ、我ながら何を言っているのだろう……


「うむ…確かに我が儘じゃな…」


「…そうですよね。今のは忘れて下さっ…んんっ…!」


顔を上げ、言葉を紡ごうとした私の唇にキスを落とし、そのまま覆い被さるように寝転ぶ。いつもの触れるだけのキスではなく初めてキスしたときのように、甘く激しいキスだった


「ふぅ……妾も我慢していたと言うのに、秘めた想いを先に打ち明けるとは、狡い娘じゃの……」


「え、あの…ごめんなさい……」


「可愛がってやるから…妾からの愛、沢山感じるが良い」


「…はいっ。いっぱい愛して下さい…っ」


これ以上無いくらい頬を染め、返事をするとメリアさんは妖しく微笑み、またキスをくれたのだった……














「うーん……思い出せない」


昨晩、部屋に戻ってきたのは覚えているのだが、その後の記憶がすっぽりと抜け落ちているように思い出せない。朝起きるといつの間にかベッドに横になっていたのだ


「どうした?ミリィ、空っぽの頭で何悩んでる」


「うっさい、空っぽは余計よ……ただ昨日の夜の事が思い出せないだけよ…」


「…とうとうボケた?」


「失礼ね!アタシはまだ若いわよ…!」


「_悪かった。昨日の夜の事、全部思い出せないのか」


申し訳なさそうに、レグナは謝罪する。ああ…これは素で言ってるな……全く


「…部屋に戻ってきたのは覚えてるけどその後の事が全然覚えていないの」


「あまりの疲れで眠ったとか」


「…なのかしらね。まぁ朝起きたらベッドに居たし。でも最近、やたらと記憶が飛ぶこと多いのよ…」


「…何?そうなのか?」


「えぇ。ユーカが消えたあの日もだし、気が付いたらユーキの部屋に居て、訳も分からないときにあんたに部屋を追い出されたときもそうだし」


些細な事だが何だかモヤモヤする。自分が自分じゃないような気さえしてくる


「…その時に変わったことは無かったか?」


真面目な顔でレグナは問い掛けてきた。変わったこと………あ


「関係あるか分からないけど……どの時もフレイアがアタシを尋ねてきたわ」


「そうか…」


「ちょっと、フレイアがアタシを操ったとでも言いたいの?」


「その可能性は大きい…現にいずれの時もお前を尋ねてるんだろ?」


「そうだけど……アイツはアタシの幼馴染みよ!?そんな事する筈無い!!」


「だが…」


「うるさい!アイツは落ちこぼれだったアタシを見捨てなかった、魔力の使い方だって教えてくれた!フレイアを悪く言わないで!」


自分でも驚くぐらい声を荒げ、反論する。


「…分かった。私からは何も言わない…でも気を付けた方が良い……後もう出発するそうだ。準備、怠るなよ」


そう言いレグナは去っていった


「そんな事…無いよね?信じて良いんだよね?フレイア……」


縋るように呟いたアタシの言葉は、誰に届くこともなく虚空へと虚しく消えた……





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