第21話 野望
すみません、ネタが思い付かず遅くなりました、あといつもより短いです
「はぁっ…!」
「良い太刀筋です…でも甘いですよっ!」
ガキィンッ!
「しまっ…!?」
武器を弾かれ、首筋に剣を当てられる。
「はぁ…負けた……流石は王国騎士団団長。強いな」
「いえいえ…勇者殿もなかなかです。剣はどなたから師事を?」
剣を収めたエレナが疑問に思い尋ねる。
「旅を始めた頃に助けてくれた剣士に教えてもらったんだ。めちゃくちゃ強いし、優しい人だった。剣は命を奪うためじゃない、守るために振るいなさい…それが口癖だった」
言いながら師匠の事を思い出す。そういえば魔王を討伐するって話をしたら、一瞬悲しそうな表情してたな……何故だろう
「…っ!その方は女性ですか?」
「え?あぁ、そうだけど」
なんだ?急にマジな雰囲気になったな…
「名前は何と言うのですか?容姿は?」
「名前?えーと…アルカって言ってたな。銀髪で金色の瞳、ちょっと小柄な人だよ。どうかしたの?」
「そうですか…人違いでしたか」
師匠の名前と特徴を伝えると落胆したように肩を落とす。探し人かな?
「いえ…もしかしたら先代勇者のアイナ様に似ていたのでもしかしたら…と思っていたのですが」
「先代の……でもその人って魔王と相討ちになって死んだんじゃ」
俺が聞かされたこの国の歴史の通りならそうだった筈
「えぇ…ですが私はまだ何処かで生き延びているのでは無いかと。あの方が簡単に死ぬなど思えなくて」
「はぁ…まだそんな事を言ってるんですか団長。あの人は無様に死んだ…それだけじゃないですか。何が平和をもたらして見せる…よ。膠着状態になっただけで、魔族は滅んでないじゃない」
辛辣だな。此処まで先代の事を悪く言う奴は初めてだ
「だからあんたにも期待なんかしない…魔族は僕が滅ぼす、その為に騎士になったんだ……!」
拳を握り締め、憎しみを込めた声で呟く。相当魔族を憎んでるんだな…過去に何があったんだろう
「アリス!言い過ぎですよ!」
「ふん…僕は何も信じない。勇者も…この国もね」
エレナのたしなめる声に耳も貸さず、アリスは去っていった…俺はともかく、この国を信じないって騎士団にあるまじき台詞だな……もしかしたら俺と同じ疑念を抱いているのかもしれない
「すみません、ユーキ」
「良いさ、気にしてないよ。それよりもう一本良いかな?強くなりたい…今よりもっと」
「分かりました、私で良ければ…お相手しますよ、ユーキ」
「あぁ…じゃあ行くぜ!」
剣を構え、地を蹴りエレナへと向かう
強くなって今度こそアイツを………ユーカを守るんだ、絶対に!
「はぁ…疲れたぁ…」
魔力の制御って本当に面倒だわ…攻撃なら放出するだけだから簡単なんだけど………
「だから一族の恥、とか言われてたのかな…」
両親だってアタシを邪魔者扱い、出来の良い弟ばっかり可愛がって…魔王討伐の一員に選ばれたときにだって見直すどころか、何かの間違いだって喚き散らしていた。ちょっとだけ期待してたアタシの心は深く傷付いた
「だからアタシが魔王を倒して、アイツらを見返してやるんだ…!アタシは出来損ないでも落ちこぼれでもないって…!」
「ふふ、気合が入ってますねミリィ」
「フレイア…当然よ、アタシを見下してきた連中を見返してやるんだもの!」
「あら?もう一つあるでしょう?」
「え…?」
「私の目を見て…ほぉら、良く思い出して」
フレイアが近付いてきて、頬に手を当て、アタシを見つめる…あれ、何かボーッとしてきた……
「思い出せた?あの魔獣使いよ…」
魔獣使い…その言葉を聞いて憎悪が沸いてくる…そうだ
「魔獣使い…ユーカを殺す…うん、思い出した…アイツは邪魔者…」
「そうですわ…あの勇者に近付いた穢らわしい小娘を、今度こそ屠るのです」
「うん…分かった…次は必ず仕留める…」
「えぇ、お願いねミリィ…疲れたでしょう?今はお休みなさい」
「うん、お休み……」
促されるまま、微睡みへと身を委ねる。意識が途切れる瞬間、フレイアが笑みを浮かべていた………
「ふふ…バカは扱いやすくて助かりますわ…」
ミリィを眠らせた後、込み上げる笑いを堪えつつ、呟く
「精神をちょっと弄っただけで、此処まで従順になってくれるなんて……貴女は最高の手駒ですわ。あの小娘、ユーカを殺してからも従順なお人形さんで居てくださいな?…ふふふ」
そう、悪を全て滅ぼすまでは…
「ほぅ、人間が攻めてくるか……」
「はい。バフォメット様、これはチャンスですわ、混乱に乗じて魔王を討ち取ってしまえば貴方の悲願も叶います。兵士達の準備も整っております!」
リリスは勿論、配下である兵士達も闘志が滲み出ていた…頼もしいものだな
「ふ…そうか、では明朝、魔王城へ進軍を開始する!忠誠を誓う者達よ、魔王を討ち、世界に混沌をもたらし、人間を滅ぼす!そして世界は我が物になる!勇敢な戦士達よ、今こそ立ち上がるときだ!」
“ワアァァッ!!”
歓声が湧き上がり、兵士達の士気は最高潮まで上がる。
我が覇道、邪魔するものは全て叩き潰してくれよう…っ!