第1話 魔王の花嫁候補になりました!?
プロローグだけでブクマ8件追加されていてちょっとびっくり。ブクマしていただいた方に感謝です。
「一緒に来てくれないか?」
そう言って彼は私に手を伸ばす。私の大好きな笑顔を浮かべて
「1つ聞かせて、どうして私なの?」
答えは知っているけど、確認のために私はそう聞き返す
「俺の事、よく知ってるし…何よりお前が傍に居てくれれば頑張れる、だから頼む」
「分かった…一緒に行く。危なくなったら、私を守ってね?」
はにかんで彼の手を取った。異世界へ旅立つ私達は希望に満ち溢れていた……
「ん…んんぅ?ふぁ…良く寝た。あれ…此処どこ?」
目が覚めるとそこは見たことの無い部屋だった。おかしいな……ノワ達と一緒に眠ってた筈なんだけど
「ノワ!シルバ!」
“お呼びでしょうか、主”
“何かありましたか?”
慌てて名前を呼ぶと、窓際で丸くなっていた2匹が私の元に駆け寄る。良かった…………あれ?
“如何しましたか、我が主”
「しゃ…喋ってるぅ!?え、何で!?どういう事!?」
“あ、主…落ち着いて下さい”
「落ち着いてられないよ!ていうか此処どこ!?」
「喧しいぞ、小娘」
ノワに詰め寄り、問い質しているとドアが開き、男の声が聞こえた。そちらを向くと、人相の悪い吊り目の魔族の男が居た
「貴方、確か魔王軍四天王の…」
「そう《疾風》のリーパー様だよ。ったく、魔王様もイカれちまったのかね、こんな小娘拐ってくるとか。まぁ面白れーから退屈しねぇけど……てな訳で付いて来い」
「誰が付いてくもんですか…!ノワ、シルバ!逃げるよ!」
“主…冷たい言い方になりますが何処へ行くんですか?”
「何処にって、皆の所に………ぁ」
そうだ、仲間と信じてた人達に裏切られたんだ。此処は異世界、知り合いなんて誰1人居ない……行く場所なんて何処にも無い
「ははっ…そっか…私、追放されたんだっけ……1人ぼっちなんだ……っ」
涙が一筋、頬を伝う…こんな事になるなら、目覚めないでそのまま眠っていたかった…
“我が主…貴女は1人ではありません…我等が居ます…”
「シルバ…」
“そうです、例え世界の全てを敵に回そうと我等は貴女の傍に居ます…絶対に”
「2人共…ありがと……」
「あー……水差すようでわりぃんだが、そろそろ付いて来てくんねーか?うちの魔王様は気が短…「リーパー!妾の花嫁はまだか!」
若干、空気になりかけていたリーパーの言葉を遮るような大声と共に黒髪で長身の女性が入ってきた。うわ…綺麗な人
「はぁー…遅かったか。魔王様…お待ちくださいと言いましたよね」
「妾が待てると思うか、リーパーよ!」
仁王立ちでふんぞり返り、無駄に偉そうに言う女性。そんな様子にリーパーは頭を抱えていた……ていうか今、魔王って言わなかった?
「はぁ…頭痛ぇ。まぁ良いや…そこに居ますよ」
「おぉ!妾の花嫁よ!会いたかったぞ!」
「ふぇ…!?あの…ちょっと…!」
私の姿を見るや否や、抱き付いて頬擦りしたり、頭を撫でたりとやりたい放題だ
「ちょ、ちょっと待って下さい!花嫁って私がですか!?」
「うむ…お主以外に居らぬ、外見も声も好みじゃあー。して式は何時にする?妾は明日でも今からでも構わんぞ?」
「落ち着けっつーの!バカメリア!」
「みきゃっ!?何をする、ルルティア」
騒ぎを聞き付けて、最初に居たリーパー以外の四天王が揃って……ない、もう1人居ないけどまぁ、結構フリーダムな子だったしなぁ。因みに今、魔王をひっぱたいたのが《激情》のルルティア
「ったく、混乱してんだろーが。よう魔獣使いの嬢ちゃん。変なのに目ぇ付けられたなぁー」
「ルルティア…いくら幼馴染とはいえ、少々無礼ではないか。魔王様を貶めるような発言は控えろ」
扉の前で仁王立ちしていた漆黒の鎧を纏った男がルルティアを諌める。あの人は四天王最強の男《不屈の魔導騎士》ベルクティオ。うわぁ…凄い威圧感
「へいへい、気を付けまーす」
「貴様…!」
「まぁまぁ良いではないか。妾は寛大じゃ。それくらいは見逃してやろう……そういえば花嫁よ、お主の名は何と申す?」
「え、はい…間宮 優花です。優しい花って書きます」
「ユーカ…良い響きだ。このような者を娶れるとは妾は幸せじゃ」
うっとりとした様子で私の名前を呟く魔王。褒められるのは嬉しいけど、1つだけ大きな問題がある
「あの…盛り上がってるところ申し訳無いんですが…私、花嫁にはなりません。ていうか同じ女の子ですよ?そんなの無理です!」
「なっ……」
きっぱりと断ると場の空気が凍る。さっきまで上機嫌だった魔王のテンションが一気に下がっていった
「優花よ、何故じゃ」
「何故って…当たり前じゃないですか!いきなり敵陣のど真ん中に連れて来られて見ず知らずの奴に花嫁になれって言われて分かりました、なんて快諾出来るわけ無いじゃないですか!常識的に考えて!」
「む…むぅ。確かにそうだな……ならば妾の事を知ってくれたなら、求婚を受け入れてくれるのか?」
しまった、そう来たか…下手な返事は出来ない、ならば
「1年、此処に居させて下さい。その間に貴女の事を教えて下さい。求婚の話はそれからです」
「ふむ…それを拒否したら?」
「此処で命を断ちます」
「ふふ…はは…はっはっは!面白い奴だ、やはり妾の目に狂いは無かった。良かろう…1年だな?その間に必ずやお主を射止めてやるからの…覚悟しておけ」
「分かりました…。これから1年、よろしくお願いします」
不敵な笑みを浮かべ、魔王は私に手を差し出す、その手を握り返し、私も笑みを浮かべるのだった
これからどうなるのか分からないけど、悲観してても始まらない。だから前を向き生きていこう……そこに希望があると信じて