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第18話 閉ざされた可能性

「ヒック…どいつもこいつも…イチャイチャってよぉ、少しは自重しろぉ!」


“嘆くな、シェイ。飲み過ぎると体に毒だぞ”


「えーと……」


「どういう状況なのだ?これは」


城に帰り夕飯の準備をしようとキッチンに入ると、やけ酒をしてべろんべろんに酔っているシェイを介抱しているシルバ、という何とも奇妙な構図が出来上がっていた


“主、お帰りなさいませ”


「あ、うん…ただいま。これはどういう事?」


“実は…”


「ボクか!?イチャイチャしてるところに現れるボクが悪いのか!」


「あー、大体理解したよ…」


“主が聡明な方で助かります…”


そう言いシルバは苦笑する。今のシェイの台詞で私達が原因だって分かったし…


「えと、シェイ…?」


「何だよぉ…ヒック…」


「その…ごめんね?気が利かなかった…今度から気を付けるね」


幼子を宥めるように優しく語りかけ、頭を撫でる


「ほんとに…?」


上目遣いでシェイが私を見つめる。うわぁ、可愛いなぁ…


「うん、本当だよ。ね、メリアさん」


「え…妾は思う存分イチャイチャしたい…「ね?」は、はい…」


満面の笑みを向け、同意を求めると素直に頷いてくれた。シルバがメリアさんを哀れむように見ているけど気にしない


「分かった…じゃあ信じる…」


「ん、ありがと…よし、今晩はシェイの好きなもの作ってあげる」


「良いの!?」


「うん、お詫びも兼ねて。何でも作るよ?」


「じゃあハンバーグ!」


「ふふ、分かった。今作るから待っててね」


「うん!」


さっきまでのやさぐれっぷりはどこへやら、無邪気な笑顔を見せてから、キッチンを出ていった


「さてと、取り掛かりますか……ってメリアさん?どうかしました?」


「うぅ、妾はもっとイチャイチャしたい…愛を確かめ合いたいのじゃあ…」


キッチンの隅っこでのの字を書いていじけるメリアさん。そんな彼女をシルバは呆れたように見ていた……もう、困った人だなぁ…


「メリアさん…」


「むぅ…放っておいてくれ…んっ」


振り向いたメリアさんにそっと触れるだけのキスをかわす


「ふぇ……?」


「2人きりの時は甘えても良いですから。その時はいっぱい愛し合いましょうね?」


「わ、分かった。皆の前では自重する」


「ん、よろしい。じゃあちょっと手伝ってくれませんか?」


「うむ、任せておけ!」


いつもの笑顔を浮かべ、自信満々に彼女は言うのだった





その後、何時もよりキッチンが慌ただしくなったのは此処だけの秘密にしておこう……







「よし、出来た!今日も良い感じに仕上がった」


ホコホコと湯気を立てるハンバーグ。あーお腹すいてきたなぁ…


「妾、何の役にも立てなかった…」


どんよりと隅っこで膝を抱え、落ち込むメリアさん。あれ…ついさっきも同じような光景見た気が……デジャヴってヤツかな…あぁシルバが呆れ果てて溜め息吐いてる…


「メリアさん、最初から上手に出来る人なんて誰も居ませんよ。私だって最初は失敗ばっかりしてたんですよ?」


「本当か?信じられん…」


顔を上げ、此方をジッと見つめる。そんな彼女に苦笑しつつ、近寄り頬に手を添える


「そうですよ、だから一緒に練習して上手くなりましょう?」


「うむ…分かった。必ず弱点を克服して見せるぞ。その時は…その…食べてくれるか?」


「メリアさんを、ですか?」


「なっ…ち、違っ…いや、ゆくゆくはそういう事も…じゃなくて…あーもう、茶化すなぁ!」


真っ赤になりながらポカポカと私を叩く。あーもう本当に可愛いなぁ…


「ふふ、冗談ですよ。楽しみにしてますね、メリアさんの手料理。さて運びましょうか」


「そうじゃな。シェイの奴、待ちくたびれているだろうからな」


「あ、メリアさん」


「ぬ?どうした」


「メリアさんの手料理を頂いたら、貴女の事も…食べて良いですか?」


「っ!?!?」


耳元で囁くと真っ赤になって固まってしまった。なんというか……


「メリアさんって結構ウブなんですねぇ」


“我が主がそこまで積極的な事だという方が、我は驚きですよ…”


ほっこりとしていた私の横でシルバは複雑そうな表情で呟いていた









「ん……此処は……」


「目が覚めたか?レグナ」


目を覚ますとそこは王都の城の客室だった。隣には心配そうに此方を見つめるレックスが居た


「レックス……ごめん、心配掛けた……」


「全くだよ、爪で引っ掻かれそうになるわ、尻尾で弾き飛ばされるわ、散々だったんだからな」


「うう……」


「とにかく無事で良かった……惚れた女が死んじまったら…寝覚めの悪いどころの話じゃないからな」


そう言いレックスは微笑み、私を抱き締める……え?


「ま、待って、惚れたって…わ、私の事…!?」


「当たり前だ。お前以外に誰が居るんだよ。俺はレグナが好きなんだ!」



「え、あ…そのっ…わ、私…っ」


突然の告白に上手く言葉が出ない。あぁ、もどかしい、好きだって言いたいのに…


「…やっぱりお前もユーキが好きなのか?そりゃアイツは聖剣に選ばれた勇者だし、格好良いし性格も良い、何より一途だ、俺なんかより…」


「ま、待て!何でそうなる。確かにユーキは好きだ、でもそれは仲間としてだ。異性として好きなのは…お、お前だよ、レックス……っ」


話が拗れる前に自分の気持ちを伝え、レックスの体を抱き返す


「本当に…?俺の事、嫌ってたんじゃないのか?」


「私は素直じゃないから…意地張って本当の事、言えなかった…誤解させてごめん」


「そっか…良かった」


そう言いニカッと笑う、あれ…怒ってない?


「レックス、怒らないのか?お前を傷付けたんだよ?」


「バーカ…俺だって傷付けたんだ、お互い様だ……レグナ、もう一回好きって言ってくれ…」


「ふぇ…!?あ、えっ、今じゃなきゃダメか…?」


「今聞きたい。夢じゃないって実感したい…」


そう言い真っ直ぐな瞳で此方を見つめる。うぅ……


「レックス…わ、私はお前の事が…誰より…す、す」


「だぁぁっ!あの石頭!こっちの話を少しは聞けっての!」


「ひゃあぁぁ!?」


「ごふぁっ!?」


突然扉が荒々しく開き、ユーキの怒声と共に現れる。吃驚して思わずレックスを吹っ飛ばしてしまった


「理不尽……(ガクッ)」


「ふぇぇっ!?レックスー!」


「えーと……なんかごめん…?」













「そうか…ユーカは魔族に付いたのか」


「あぁ…最初は無理矢理従わされてるのかと思ったが、違うみたいだった。アイツは自分の意思で魔王の傍に居ることを決めたみたいだ」


レックスが目を覚ました後、私が眠っていた間の事を聞いた。ユーカが居るのは分かっていたが、その場に魔王が居たことにも驚いた。しかも拐われたユーカを助けるために……それだけじゃなく私を助けるのに、命を懸けたらしい


「だからさ、聞いていた魔王のイメージと全然違うって感じてさ。休戦の申し出は出来ないかって国王に進言したんだ……」


「まぁ。さっきの様子をみれば良い返事は貰えなかったっていうのは大体察したけどな」


「あぁ、和解など何を寝惚けたことをって言われたよ…俺はまだ話し合う余地はあると思うんだ。優花の為に命を張った魔王を見ちまったから、どうしても悪とは断言出来なくなってな……すまないな、勇者にあるまじき言葉だな…」


そう言いユーキは自嘲する。そんな事ない、戦いを止める方法なんていっぱいある。彼の提案がどれだけ賢明で勇気ある決断か、国王は分かっていない


「そして最悪なことに魔族殲滅作戦が近々決行される。明朝には俺達を含めた魔王討伐連合が王都を発ち、魔族領に進軍する」


ユーキは苦虫を噛み潰したような表情で言い放つ。衝撃的な言葉に私達は愕然とするしかなかった…

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