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第17話 幸福な時間2

デート回、後編です。

「あー、暇だぁ…」


ユーカ救出の際に負った怪我がまだ癒えず、自室で療養を言い渡された。そのメリアは今、ユーカとデート中、羨ましいなぁ…


「はぁ…メリアの回復力は本当に異常だわ……あの大怪我、数週間で治るとか…」


「まぁ、莫大な魔力も手伝ってだろうな。ほれ、リンゴ剥けたぞ」


「ん…さんきゅ。なぁリーパー、毎日ここに来るけど…お前も暇なのか?」


この数週間、リーパーは必ず1度は顔を見せに来る。あんな風に言ったけど忙しい筈だ…


「バカ言え、暇なもんか。家事洗濯に城内の掃除、食材の買い出し、兵士達の訓練…やることは山程ある」


そう言ってリーパーは呆れたように言う。兵士達の訓練以外はなんか主夫みたいだな……


「だったら尚更、オレに構ってる暇なんか…んむっ…!」


言い掛けたが口付けされ、言葉を封じ込められる


「バーカ、それでもお前の顔を見に来たいって思ってんだ。恋人ってそんなもんだろ?」


唇を離し、リーパーは笑ってそう続ける。ちょっと恥ずかしいけど…正直、そんな風に思っていてくれたのが嬉しかった


「リーパー……もう1回…チューして?」


上目遣いでジッとリーパーを見つめる。少し驚いたように目を見開くも、すぐに優しい表情になり、そっと口付けをくれた



「リーパー、訓練の時間だ。ベルクの旦那が探して…………ご、ごめん!配慮が足りなかった!訓練はボクが付けとくから!ごゆっくり!」


そう言って慌ただしくシェイは出ていった。なんか…悪いことしたな


「ぷはっ…見られたな」


「なんか気の毒な事しちまったな…ってリーパー?なんでオレ押し倒されてんの…?」


「悪い、我慢できなくなった…良いよな?」


そう問い掛けるリーパーの目は獲物を見つけた猛獣のようにギラギラしていた。あぁ…これもう何言っても無理だな


「バカ……断れないの分かってる癖に…」


諦めたように呟き、2つの影が重なった……











「メリアさん、さっきの店主さんと随分親しいんですね」


街を散策しながら、まだほんのりと顔が赤いメリアさんに問う。もう裏切らないとか言ってたから古くからの知り合いなのかな?


「あぁ、昔からの知り合いでな。初恋破れて泣いているところに声を掛けられて、話を聞いてくれてな。それ以来ずっと通っていたんだ。妾の恋をずっと見守ってくれていた…まぁ父のような存在かな」


照れ臭そうに頬を掻いて言うメリアさん。優しい人なんだなぁ…あの人


「さて、何処へ行こうか?」



「メリアさんとなら何処へでも」


絡めた腕を更に密着させる、どんな反応するのかちょっと楽しんでる自分が居る


「ゆ、ユーカ…っ」


「何ですか?」


「その…胸が…あ、当たっているのだが……っ」


「ふふ、メリアさん…当たってるんじゃなくて、当ててるんですよ」


そう言い腕に自分の胸を押し付ける。あわあわと慌てるメリアさんが凄く可愛い


「ゆ、ユーカ…こういうのは…その…せめて2人きりの時に…してはくれないか?」


「ふふ、はぁい」


ちょっと残念だけど、腕を緩めるとホッとしたような表情になる。ふふ…やっぱり可愛い人だなぁ


「ぬぅ…何だか翻弄されてばかりな気がするのぉ……お主、そんなに積極的だったか?」


「自分でも吃驚してます。でもメリアさんに大好きの気持ちを伝えたい…そう思うと自然に体が動くんです…恋は人を大胆にするんですね」


「はは、そうだな……さて行こうか」


「はい」


そう言い私達は散策を再開する。市場の露店から威勢の良い呼び込みの声が響く


「前に来たときも思ってたけど、凄い活気ですね、何だか圧倒されちゃいます」


「ふふ、この近辺で1番栄えておるからの。少し見て回ろうか」


「はい……あ」


近くの露店に売っていた指輪が目に入る……結構高いけど買えなくはない……よし!


「メリアさん、ちょっとだけ良いですか?」


「ぬ?何か欲しいものでも有ったか?」


「はい、すみません」


「はいよ!お嬢ちゃん、何か気に入ったものでも見つけたかい?」


「この指輪を下さい」


「ほう、指輪か…1度は憧れるものな」


そう言いメリアさんは微笑む。誤解されてるみたいだけど、まぁ良いや。感付かれてないからそうしておこう。お金を払い、再び歩き出す


「ふふ、似合うと良いな…」


「きっと似合うさ…お主は美しいからな」


「メリアさんこそ凄く綺麗ですよ。メリアさん、この街で見晴らしの良い場所って無いですか?町全体を見渡してみたいんです」


「ふむ、ならば町外れの丘に行こう。少し歩くが大丈夫か?」


「大丈夫です。旅をしていたお陰で体力は鍛えられましたから」


「ふむ、では向かうとするか」


自然と手を繋ぎ、歩き出す。丘へと向かう途中、街の人達に声を掛けられるメリアさん。子供から老人まで色んな人から慕われているようで、そんな彼女が何だか誇らしかった………








「ふむ、到着じゃ」


「わぁ……っ」


案内された丘から見渡す景色は圧巻の一言だった。あの街はこんなに広かったんだ…


「お気に召したか?」


「はい、良い景色ですね…住んでいる人達も良い人達でしたね」


道中、出会った人達を思い出す。誰もが笑顔でメリアさんに接していた…




「それで思ったんです…メリアさん、私に出会わなくても愛情を沢山貰ってるんだなって」


「…そうじゃな。だがそれを気付かせてくれたのはお主じゃ。ユーカに出会わなければ、そんな当たり前の事にも気付かなかっただろう」


ありがとな、そう言ってニコりと微笑んだ。守りたい…この人をずっと……よし、決心は着いた…!


「メリアさん、目を閉じて私の方に左手を出して下さい」


「ぬ…こうか?」


一瞬困惑するが、すぐに目を閉じるメリアさん。それを確認し、さっきの指輪を取り出し薬指に嵌める


「目を…開けてください」


「ユーカ、一体何を……っ!」


目を開け言い掛けて、薬指に光る指輪を見て言葉を詰まらせる


「えっと…その…」


「ユーカ、当然意味は知っておるのだろうな?」


「はいっ…そうでなければその指に嵌めませんよ」


「そうか、ふふ…夫婦としての証か。ユーカ、妾からも贈り物じゃ」


私の手を取り、懐から指輪を取り出し、左手の薬指に嵌める。綺麗……


「それはな、先代魔王…妾の義父様の形見だ」


「そんな大切な物を…貰えません…っ」


指輪を返そうとしたが手を掴まれ、阻止される


「いや、お主に持っていて欲しい。義父様に言われたのだ、お前を生涯愛してくれる者が現れたらその指輪を渡せ、とな…だから受け取ってくれぬか?」


「そうですか…なら受け取らない方が失礼ですね。サプライズしようと思ってたのに…同じ事を考えていたんですね、私達」


「そうじゃな。それほどお互いを強想い、通じあっているということだろう」


「そっか…ふふ、嬉しいです」


「あぁ、妾もだ。とても満たされている……。ユーカ、もう離さないからな」


そう囁いて私を優しく抱き締め、見つめ合い、引き寄せ合うようにキスをした。それだけで心が満たされ、暖かくなる。


「さて、そろそろ帰るか」


「はいっ!」


幸せな気持ちに満たされながら帰路へと着く




また一つメリアさんとの距離が縮まった気がしたのだった……





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