第10話 因縁
第10話投稿です。ちょっとのつもりが勇者サイドがメインになってしまいました
「まおー様、ごめんなさい…メルルがもっと早く気付いてたら、ユーカお姉ちゃんは……」
暗い表情でメルルは呟く。全く…誰の所為でもないというのに……
「気にするなメルル。お主は何も悪くない…寧ろユーカの危険をすぐに教えてくれたではないか。悪いのはドレイクじゃ」
「うん……まおー様、お姉ちゃんを助けに行くんだよね?メルルも連れて行って!お願い!」
頭を下げ、メルルは懇願する。ユーカを本当の姉のように慕っていたからな…心配なのだろうな
「良かろう、共にユーカを救おう」
「うん!」
「ルルティア、お主も付いてきてくれ。リーパー、ベルクティオ、うぬらは万が一を考えて此処に残ってくれ」
「了解、留守は任せろ」
「心得ました」
「よし、では「はーなーせー!」……む?」
出発しようとしたところに叫び声が聞こえ、1人の少女が2人の衛兵に連れてこられた
「あだっ!?おい、もう少し優しく扱えよ!お、メリア!まだ居たんだな、良かった!」
「お主……もしやシェイか?」
「おう、久しぶりだな。100年ぶりくらいだったか?」
そう言い、目の前の少女は白い歯を見せて笑う。どうして来たのかはともかく
「それはそうと、その姿。なぜお主がユーカを知っている…返答次第では只では済まさんぞ……」
「それについては長くなるから要点だけ言う、その子の居場所とドレイクの隠れ家を知っている」
「…真か?」
「あったり前!ボクがメリアに嘘吐いた事、1度でもあったかい?」
真っ直ぐに見つめてくるシェイ。相変わらず純粋な瞳をしておるな
「そうだったな、お主は嘘が嫌いだったな」
「ま、姿形は嘘偽りの塊みたいなもんだけどね…」
自嘲して肩を竦めるシェイ。むう…
「あまり自分を卑下するでない。怒るぞ?」
「うわ…それは勘弁」
「ふふ、よろしい。では案内してくれ」
「了解。じゃあ付いて来い!」
そう言い走り出したシェイの後を追う
待っていろユーカ、今助けてやるからな!
「敵の気配は…無いな。出払ってるのか?」
レックスが見つけた洋館へと足を踏み入れる。殺意や敵意は今のところ感じない
「まだ気付かれてないだけかもしれない、慎重に行くぞ……レグナ?どうした」
「匂いがする……一族を滅ぼしたアイツの匂いが……!」
憎悪の念を隠そうともせず、レグナは呟いた。憎しみ、怒り、悲しみ、全部の負の感情が入り交じった表情をしていた
「レグナ……!危ねぇっ!」
「きゃ…っ!?」
レグナに覆い被さるように倒れ込むレックス。その直後、レグナの頭があった場所に魔力の槍が刺さっていた
「わりぃ、怪我はねぇか?レグナ」
「え…あ、あぁ…ありがと」
「おやおや誰かと思えば…勇者ご一行に…それなあの時の臆病者のトカゲじゃないか」
声に振り向けばそこにはいかにもお坊ちゃんみたいな男がニヤニヤとしながら歩いてくる。なんだコイツ気持ち悪い
「貴様……!」
「誰だ?お前は…魔王軍の一味か?」
「ノンノン、そんなそっけない関係じゃないよ。僕は魔王の婚約者、そして魔族最強の魔槍騎士ドレイク様さ!」
自信たっぷりに言い放つ男もといドレイク。自信過剰な奴だな
「そんな事はどうでも良い…此処に優花は居るのか?」
「ユーカ……?ああ、あの薄汚い人間の小娘か。そんな事聞いてどうするの?」
「お前を倒して、優花を助ける!」
武器を構えて接近、袈裟斬りを放つが避けられドレイクは距離を取る
「僕を倒す?人間ごときが出来ると思う?竜人族さえ屠ったこの最強の僕をさ」
「ふざけるな!正々堂々戦わず、姑息な手を使った卑怯者!」
「バカ正直に戦う訳無いだろ。単細胞だよねぇ、竜人族って、あははは!」
コイツ…!ふざけやがって……
「皆を…仲間を侮辱するなぁぁっ!!」
怒りが頂点に達し、叫び声をあげレグナはドレイクへと肉薄する。それをうんざりしたように避け、そのまま槍を突き出す。その切っ先を強靭な鱗が
ザシュ!
「がぁ…っ!?」
防ぐことなく、易々と貫かれる。一瞬、無防備になるが直ぐに切り替え、距離を取る
「そんな…同族の牙しか通さない鱗が……貴様、まさか…っ」
「ご名答、竜人族の爪と牙で出来た槍さ。どうだい?切れ味抜群だろ?」
自慢げに語るドレイク、どうみてもレグナを挑発していた
「あ、そうそう。刃の部分は君の父親の牙と爪を使ってるんだよ。親子の再会だ、死んじゃってるけどね。あははは!!」
「あ…あぁ…父様…っ」
悲しみのあまり心が折れ、その場に崩れ落ちるレグナ
「ふふ、悲しむことはない。直ぐに一族の元に送ってやるよ!」
ドレイクはそんな彼女を嘲笑い、止めの一撃を放つ。ダメだ、間に合わない……!
レグナの命を奪わんと、白刃の槍が迫っていた………
「着いたぜ、此処だ…早いとこ助けろよ。アイツが戻ってくるからな」
シェイに案内された場所は鬱蒼とした森の中に佇む洋館だった、陰気なアヤツが好みそうな場所じゃな……
「うむ…皆、警戒は怠るなよ!」
皆に呼び掛け、洋館へと侵入する。
待っていろユーカ。もうすぐじゃからな……!