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ちょっと一息幼少編 カズと莉愛

「 カズーこっちこっちー」


小さい男の子の手を引く小さい女の子、小学生低学年くらいだろうか、舞である。


「 カズくんも舞も1回くらい勝てるといいな、勝てなくても良いんだが一生懸命頑張るんだぞ、今日のために勉強してきたんだからな、力を出し切ることが大事なんだぞ」


少し険しい顔つきの中年が言う、舞の父親である。


「 うん、パパ、一生懸命頑張って指すね」


舞はにこにこして父親の顔を見上げる、今日は地元の将棋大会、小学校低学年の部にカズと舞は2人で出場するようだ。


「 おい箱、あいつだろ?前回優勝の莉愛りあって奴」


「 突っつくなよ沖、おー確かあいつだなー、初心者なのに女流棋士との記念対局にも勝ったんだ、台風の目玉とか目玉のおやじとかみんな言ってたぞ」


「 台風の目だろ?それを言うなら」


「 細かいことは良いんだよ沖、駒落ちって何枚落ちだったんだろうな?」


「 俺も知らねーけど2枚とか4枚ぐらいじゃねーの?」


沖と箱である、周りの目も気にせず大きな声でしゃべっている。

今日のトーナメントは小学生低学年の部は15名トーナメントと張り出された表で確認できる。


「 やっべー俺、優勝候補の莉愛と同じブロックだ、でもまあ準決勝かー」


「 終わったな沖、わっはっは、俺は決勝まで当たらねーな」


「 箱めー俺が莉愛を倒して決勝でお前も倒すから覚悟しとけよー」


トーナメント表を見ながら沖と箱は騒いでいる。


「 ぬーんぬーん龍は出ないのかぬーん?」


小さい女の子が更に小さい男の子に声を掛ける。


「 その口癖なんなんだよー、何のアニメの真似なんだよ!って姉貴と当たったら負けるだけだし、当たるまでは負けるはずも無いし出るだけ無駄なんだよ」


トーナメント表を見上げる莉愛と龍の後ろで舞とカズも指を指しながら見ている。


「 舞とは2回戦かぁ、舞は1回戦シードだってさ、やったなー」


「 1回戦シードって何?舞は何か得したの? まぁいいや、カズくん頑張ってね。1回戦の相手の名前はリアって子だね」


「 難しい漢字だなー、振り仮名が無かったら読めないなー」


目の前にいる女の子が莉愛なのだが二人は全く気が付いていない。会場全体の注目は前回低学年の部で1年生ながら優勝した莉愛であった。


「 この莉愛様が負けることはないぬーん、去年は女の先生も倒したし本当は平手で指したかったのに、なんで平手は禁止なんだぬーん」


「 昨年姉貴は香落ちだったよな?今年は平手先手番で指せるんじゃね?昨年香落ちで勝ってるんだからさ」


「 女の先生は読んでる量が凄い多いんだぬーん、龍とは比べ物にならなかったぬーん」


「 あったりめーじゃねーか、女流棋士ってお仕事なんだよ!1年生の俺より少ない読みの訳ねーよ、ってそろそろ始まるぞ姉貴」


「 宜しくお願いします」


あちこちで挨拶の声が聞こえ始めた、舞はカズの後ろに陣取りにこにこと進む局面を眺めていた。


「 なんなんだこの子強いなー」


自分の一番指されたくない手をノータイムで指してくる莉愛にカズは戸惑いを隠せずにいた。


「 一体どうなってるんだ?」

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