終焉
夕方の学校はとても暗かった。
多分先生はいるんだろうけど生徒の声が聞こえない学校ほど怖いものは無い気がしてきた。
「教室に行くわよ。」
カナエがひそひそ声でそういう。
そうか先生に見つかってはいけないのだ。
見つかれば終わらせられる。僕の思いが返事をする声を心持ち大きくさせた。
カナエが睨んで来る。本気の目、というかドラマでみたヤクザみたいな目をしている。
これ以上怒らせてはいけない。僕はそう直感して黙り込んだ。
カナエは、前を向くと教室のドアをそろそろと開けた。
前の方にある時計を見ると5時55分まで、あと10分ほどだった。意外とかなりの時間が立っていたらしい。
そして9分後僕らは顔を見合わせた。
「行くわよ。」
そう誰かが言った。あと10秒。紙を取り出し手にとった。
ピリ、と音がなった。55分55秒だった。
僕も紙を二つに破る。
すると、どこからか風が吹いてきた。紙が巻き上げられる。
僕らの頭上に舞い上がった紙はさらにバラバラになって僕らの上に降り注いだ。
そしてそれっきり何も起こらなかった。
「帰ろう?」
ユミがそう呟く。僕らはドアの外に向けて歩き始めた。
息が苦しい。目の前が真っ暗だ。どこまでも広がる闇。遠退く意識。あぁ。これが死ぬって事か。
僕はガバッと起き上がった。
嫌な夢だ。死ぬ夢なんて。
僕は何となく喉に手を当てた。何かが手に触れた。
これは…紐…?
恐る恐る紐を喉から解く。白い紐が見える。
僕は息を細く吐き出した。
僕は今日を生きて行けるらしい。
布団から出て、朝ごはんを食べていると電話がなった。
僕は受話器を手にとる。
「もしもし?」
「よう、生きてるか?」
コウだった。こんな時間になんの用だろう。
「生きてるけど、どうかした?」
彼は一瞬黙ったあと小さな声でいいずらそうにこう言った。
「カナエが死んだ。」
死んだ。シンダ。それってなんだ?
思考がフリーズする。カナエが、死んだのか。
僕はやっとの思いで声を搾り出した。
「そうか。」
ひどく冷たい声だった。多分他の誰かが聞いたら冷酷な人間だと勘違いされるほど。
「じゃあまた、学校でな。」
コウは電話を切った。頭の向こうでツーツーと音がなっていた。
あのあとの学校で、僕らはカナエが死んだことを聞いた。カナエの外は、イジメの首謀者が一人だけ死んだ。
十年立った今、僕はこう思っている。
カナエが死んだのは、いけない人が死ねばいい、そう思ったからではないか。
人を呪わば穴二つ。
僕はそんな気がしてならない。




