新王国暦542年
本編第一部第二章の序盤と内容が重複しております。
それから十余年の年月が過ぎた。
母方の伯父と父方の叔父によってファルト老へと託された“少女”は、伸び伸びと育っている。
混血としての差別を受けることも、妖魔等の襲撃に怯えることからも、隠者たるファルト老とその養い子たちの元では無縁であったのだから……
“少女”は幼い頃に受けた咽喉の傷の影響か、きちんとした言葉を紡ぐことは出来なかったが、それを除いては聡明で健やかに育っていた。
そして、ファルト老の手伝いにと外を飛び回ることが日課となっていた。とは言え、それは人目に付かない所で……と言う条件付きであったが……
そして……
そこはファルト老の隠れ家のある“ホルトの谷”と呼ばれる渓谷の底、そこを漂うように飛ぶ“少女”がいた。
“少女”は首を廻らし、先の戦いにより谷に落ちた機械の残骸を物色していた。
「ぅぅぅ……うぅ?」
その“少女”が何かを見付けた。“少女”が見付けたものは、黒と朱に彩られた鋼の塊……
「…………!!」
その朱の色が血の赤と悟った時、彼女はもと来た道へと、まさに飛んで返した。
それが“少女”にとって、『運命の出会い』となる……