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彼が悪魔と呼ばれた日  作者: 芳右
第一章 彼が異界へ渡った日
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007 後のこと

コンコルダから言葉を教わるようになってから二週間程が経った。

その間、犬に噛み付かれた事が原因で、何度かひどい発熱で危なかったらしいが、コンコルダの助けもあり、なんとか今日まで生き延びている。


今では腕と足の怪我も、少し動く分には問題ないくらいに癒え、今後は痩せ細った筋力を取り戻す必要があるそうだ。


ネガティブな事を考えないようにするために、必死に言葉の勉強をしたおかげでこの国の言葉も、日常会話なら聞き取るくらいはできるようになり、単語での発声ならばなんとか出来る程度には理解した。


「おはよう、ケンジ」


そう言って、いつものように牢へと食事を持ってきたコンコルダ。

俺も同じように「おはよう」と返すと、嬉しそうに笑って食事を渡してくれる。


最初の頃と変わらず、朝食は毎日パンとスープだ。

こちらの習慣では食事は朝と夜の2回だけらしく、昼食が出たことは無い。

初めは俺が囚人扱いだからかとも思ったが、確認したところ、逆に「ケンジの所は違ったのか?」と問い返されてしまった。


いつもどおりの食事を終えて、「ごちそうさまでした」と日本語でつぶやくとコンコルダに皿を返す。


「ケンジの使う言葉は、何度聞いても不思議な感じがするな」


皿を受け取りながらコンコルダが言う。


これを聞けばわかる通り、コンコルダは日本語どころか日本という国自体知らなかった。

覚えたばかりの言葉を駆使して必死にここがどこなのか、日本じゃないとすれば、日本とはどれくらい離れた土地なのかを聞いた。


しかし、返ってきた答えは、


「ここはポワトルテ領の一番南にあるバラフという村だが…ニホンて何だ?」


という、なんとも俺の心が折れそうになる返答だった。

愕然とする俺に、慌てたようにコンコルダが何か言っていたが、正直全く耳に入ってこなかったのは記憶に新しい。


ぼんやりとその時の事を思い出していると、何を勘違いしたのかコンコルダが、


「あっいや、すまん故郷の話はダメだよな、悪かった」


と、慌てて謝ってくるので、思わず苦笑してしまった。


「イイ キニスル ナイ」


思わず俺のほうが笑われそうな片言発言だが、下手に流暢に喋ろうとすると文法が滅茶苦茶で意味がわからなくなってしまうらしく、慣れるまでは単語で話すと言う事になった。


そんなやりとりの後、俺はずっと気になっていたことをコンコルダに聞いてみることにした。


「オレ ココニイル ドウシテ?」


本来は「どうして牢に入れられているのか」と問いたかったのだが、どうにもうまく言葉が出てこない。

それでも短い付き合いの中、ある程仲良くなれたコンコルダは、なんとなく意味を察してくれたらしく、


「村の皆は、ケンジって人間を知らないからだ」


と答えてくれた。

確かに、見ず知らずの人間が血まみれで目の前に現れたら、同情とかする前に恐怖心を覚えるだろう。

改めて考えると厄介ごとの予感しかしない。


そう考えると牢に入れられているとは言え、こうして毎回食事の世話に、治療までしてもらえるのは結構高待遇ではなかろうか?


…いや、さすがに高待遇は言いすぎか。


なんにせよ、こうして生きているのだから今更文句は無い。

それにまだ聞かなければならないことはある。


「…デル デキル?」


と、言った俺の声には少し不安が混じっていたのかもしれない。

現にコンコルダは本当に申し訳ないという声音で、


「大丈夫だ。早ければ明日…いや明後日には出られるようにする」


そう言って、笑顔を見せた。

だが、すぐに何かを思い出したようで「あぁ、そういえば…」とつぶやくと、真剣な目で俺に向き合い、


「ここから出た後、ケンジはどうする?」


と聞いてきた。

それに対する俺の答えは考えるまでも無く決まっていた。


「…カエル シタイ」


蛙死体では無く…そう、帰りたい。

家族の居る家に、友人の居るあの町に…


「…そうだな。だが、帰るとしても場所がわからんだろう?わかったとしても結構な長旅になることは間違いない…キツイことを言うようだが、今のケンジじゃ村を出てすぐに野犬に食われるのがオチだ…」


コンコルダが言ったことは、牢に居る間に何度も考えたことだった。

ここから出たとして、身寄りの無い俺が生きていく術は無い。

いくら田舎育ちだからといって、サバイバルができるわけではない。


俺が黙っていると、コンコルダが


「だから…しばらく俺の家で暮らしてみないか?」


と言った。


いいのだろうか?ここに来てからと言うものコンコルダには世話になりっぱなしだ。

迷惑以外の何者でもないだろう…けど、他に頼れるものもない俺に選択肢は少ない。


「メイワク ナイ?」


不安から、小さな声しか出ない。

迷惑じゃない訳がない。牢に監禁されるほど警戒されている俺が居候する事でコンコルダにどれほどの負担がかかるのか。


それでもコンコルダは


「大丈夫だ。任せとけ」


そういって、最初に会った時の様に豪快に笑ったのだった。

という訳で、ここから賢治くんとコンコルダの生活が始まります。

にしても警戒心うすいなぁ…

今の中学生だったら真っ先に警戒されますね。


ここから徐々に週一更新に切り替えていこうと思います。

筆が進めば週二・三回更新することもあるかもしれませんが…

あるかなぁ…無いかなぁ…

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