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彼が悪魔と呼ばれた日  作者: 芳右
第一章 彼が異界へ渡った日
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005 接触

この小説、予約投稿というのを使用しているのですが…

指定した時間ぴったりに投稿されるのを見るのは、何かいいですね。


なんとなく…あぁ俺ちゃんと物書きやってるって思えます。

肌寒さと痛みで目が覚めた。


にぶい痛みを感じる右腕と右ふくらはぎを見てみると、包帯が巻かれていた。

どうやら死なずに済んだ上に治療までしてもらえたらしい。


ひとまずホッと安心、気を取り直して現状を確認する。


俺が寝ていたのはふかふかのベッド…ではなく、粗末なゴザが敷かれただけの布団とすら呼べないようなものに申し訳程度に薄手の布がかけられていた。


さらに服装も大幅に様変わりしており、学校指定の制服から土嚢に使われていそうな袋に穴があいただけの布に変わっていた。

もはや服じゃないし、肌寒いわけだ。


今俺が居る部屋はそんなに広い場所ではなかった…と言うかむしろ狭かった。

両手を左右に伸ばすと、肘が伸びきる前に届いてしまうほどの手狭さ…形で言えば長方形の部屋だった。


部屋に光源は無いようで、部屋の外の明かりでかろうじて視界を確保できる程度。

窓も無いため外を確認して朝か夜かを確認することもできない。


壁は荒い加工しかされていないゴツゴツした石材で、精神的な肌寒さを感じてしまう。

部屋の出入り口と思しき場所には木製の格子が付いており、ご丁寧に南京錠まで付いている。


木製の格子とは反対側に目を向けてみれば、薄汚れた大き目の壷が置いてあった。

きっとインテリアだ!全然全くそんな風には見えないけどきっと特殊な趣味を持った人の家なんだ。


そう考えて現実逃避を試みたが、ポジティブに考えられるのが生きている事だけな俺にとって時間稼ぎにもならなかった。



…どう考えても牢屋だ。



そんな状況になっても俺の対応は冷静だった。

とか言っておけば格好も付くかもしれないが、実際は単に過度の空腹・疲労・怪我が原因でまともに動くことも騒ぐこともできなかったというだけだ。

気を失う直前まで大声を出していたせいで喉がやられてしまったというのも大きな要因である。


という訳でおとなしく囚人やってみてはいるのだが、いかんせん状況が掴めない。

治療がされている所を見るとすぐに殺してどうこう…と言うことはなさそうだが、こうして牢に拘束されている以上全てが穏便に推移している訳でもないだろう。


怪我や筋肉痛で動けそうにないので、キョロキョロと目だけを動かして周囲を探ってみるが、先ほど見つけた以上のものは見当たらない。


上のほうからたまに足音っぽい音が聞こえてくることから考えてここは俗に言う地下牢だろうか。

それにしても、ここが牢屋にあたるのなら他に罪人がいたりしそうなものだが、全くその気配も無い。


もしかして、野良犬に噛まれたから狂犬病を警戒して隔離されたとか?

あれ…でもあれ感染病だっけ?…そもそも隔離するにしても病院とかいろいろあるだろ。

おぉぅ?…いかん、なんか混乱してきた。


そんな思考のドツボに嵌りそうになっている俺の耳にコツコツとあからさまにこちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。


天の助けか地獄の案内人か…どちらに転ぶかわからないが、とりあえず天の助けであってほしい。

…そういえば神隠しって天側の災厄じゃなかろうか…ダメだどっちにしろ俺にとって碌な結果になりそうにない気がしてきた。


俺が一人で百面相やっている間に、足音の主が格子の向こう側に姿を現す。


年齢は40代後半といったところだろうか。彫りの深い顔は外国人然としているが、伸びっぱなしの眉毛や無精髭のせいでどこかパッとしない印象を受ける。

背も高く180cmはありそうだ。


一瞬看守かとも思ったが、服装が全然それっぽくない。

何といえばいいだろうか…身に着けているのは今俺が着ているものよりも少しまともな程度で、所々土などで汚れている。

RPGなどでよく見る村民という感じの格好をしていた。


村民A(仮称)は、俺と目が合うと若干気だるそうな表情を浮かべ、軽くため息を吐いた後口を開いて


「リュス イェアンメアネル?」


と、理解不能な言葉を発した。


「…は?」


思わず間抜け面を晒してしまった。

何だ?今何と言った?


混乱する俺をよそに村民Aは面倒そうにガシガシと後頭部を掻くと、改めて俺に向かって口を開いた。


「…リュス イェアンメアネル? レィダー…」


先ほどよりも語調を強くされても、わからないものはわからない。

何だ?英語か?英語なのか?

よ…よし、ここはとりあえず何か答えるべきだろう。

たとえアメリカ人でなくとも、英語を使用している国は多い…ハズだ。


「あ…あいむ どんとすぴーく いんぐりっしゅ…」


「…アッアイム…?」


英語と呼ぶには酷すぎる日本語発音で発した俺の精一杯の勇気は、怪訝そうな表情で睨むように見つめてくる村民Aによってたやすく打ち砕かれたのだった。


その後も何度か村民Aは何かを問いかけてくるが、何かしら質問されているというニュアンスはわかっても、内容がさっぱり理解できない俺にはどうすることもできず、最後には苦笑いするしかなかった。


俺に言葉が通じず、オロオロするばかりなのを見て、これ以上は無駄だと判断したのか、ひとつ大きなため息を吐くと、最後に一言二言言い放って去っていってしまった。



第一村人との接触は敢え無く失敗に終わった上に、どうやら日本語…どころか英語―というにはいささか粗末すぎるものではあるが―すら通じなかったという事実でモチベーションは低下の一途を辿っている。


「…いったい…なにがどうなってんだよ…」


考えても考えても答えは見つからず、状況は悪くなるばかり。

唯一の救いは、例えこのまま眠ってしまっても野生の動物に襲われて餌になる心配がなくなった事くらいだ。


「…今ごろどうなってんだろうなぁ」


思い浮かぶのは家族の事であったり、桐哉たち学校のクラスメートの事だ。

自分が居なくなった事で何か事件になっていたりするのだろうか。

そういえば桐哉の家の近所に住んでた人も突然失踪したと言っていたが、俺と似たような状況だったのだろうか?

もしもそうなら、2年以上も前に俺と似たような経験をしていることになる。

そんな彼を、桐哉から話を聞いたときの俺は「どうでもいい」と思っていた。

今になって思えば、それはとても残酷な事なのではないかと思う。


誰にも心配されず、見ず知らずの人間にあーだこーだと勝手な憶測を立てられ勝手に同情されたり、非難されたり…

何も知らない赤の他人に勝手なことを言われるのは想像するだけで嫌だった。


「…家に…帰りたいよ…」


口に出してしまった。

必死に堪えていたソレは、いとも簡単に決壊し、我慢しようと思っていた鳴き声すら我慢できずにただ感情のままに泣いた。


鳴き声を上げるたびに喉が痛みを訴えるが、全然止まる気配は無い。

どこにこんなに水分が残っていたんだろうかと思うくらい涙やら鼻水やらが顔を、床を汚していく。


―――――


「オィ」


幼子のように泣き喚いていた俺に、唐突に声がかけられた。

驚いて声の方へと目を向けると、格子の向こうに立っていたのは先ほどの村民Aだった。


その手には茶碗のような形の器があり、下から見上げるような俺の視線の角度的に中身を見ることはできないが、湯気が上がっているところをみるとスープか何かを持ってきてくれたらしい。


ごくり…


唾を飲み込んだのと同時に、ぐぅ~と間抜けな音が盛大に室内に響き渡り、もうなんか悲壮感とかホームシックだとかいろいろと台無しな空気になってしまった。


「…ブッ!!フフ…アッハッハッハッハッハッハ!」


それまで気まずそうな顔で俺を見ていた村民Aだったが、腹が鳴ったのを聞いた後、少し間をあけて盛大に笑い始めてしまった。


そんな村民Aに、恥ずかしさやら気まずさでやはり苦笑いしかできない俺だったが、先ほどまで大泣きしていたせいか、気分は先ほどよりも断然軽くなっているのは感じた。

賢治くんの前に立ちはだかる言葉の壁と孤独感。

けど、それは目の前の食い気の前に霧散した!頑張れ賢治くん!

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