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彼が悪魔と呼ばれた日  作者: 芳右
第一章 彼が異界へ渡った日
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010 信頼①

鶏の解体作業から始まったコンコルダの料理授業の翌日。

日課を終えた俺は、約束どおり子供たちと遊んでいた。


「ケンジ!今日はなにする?」


「ぼくオニゴッコがいいー」


「わたしはカクレンボのほうがいいなー」


口々に俺が教えた遊びを口にする子供たちに辟易しながらも、どこか癒されている自分がいる。

総勢五人の六歳から九歳までの子供たちは、生まれたときから山育ちと言う事もあり、体力が尋常じゃない。

最初の頃は俺の体力が最後まで続かないほどに差があったのだが、毎日付き合わされたおかげか今では大分余裕を持って動けるようになっている。


「じゃぁ今日はかくれんぼにしておくか」


俺がそういうと、全員が―何人かは不満そうにしていたが―頷いたのを見てルールを決める。


「隠れる範囲は村の中だけ、建物の中に隠れるのは禁止な?探す役は俺がやるから十数える間に隠れるんだ。それじゃ始めるぞ?」


俺が「はじめ!」と声を上げると同時に、四方へ逃げる子供たちを眺めながらゆっくりと数を数えた。


それから大して時間をかけることもなく五人全員を見つけた俺に「つぎはー?つぎはー?」と駄々をこねる子供たちの相手をしていると、


「よぉ小さいの、ガキどもに大人気じゃねぇか」


そういって声をかけてきたのは俺と大して歳も変わらないだろうつり目男。

その後ろにも三人ほど似たり寄ったりな年齢層の男子がいた。

俺と近い年齢の子供が八人ほどいると言うのはコンコルダから聞いていたのだが、不思議な事に二ヶ月近く生活しているのに誰一人として話す機会が無かったのだ。


「あー、えと…はじめまして?」


と、いうわけでこんな挨拶になってしまったのだが…。


「お前、狩りもまだマトモにできないんだってな?」


俺の挨拶を完全に無視して嫌みったらしい口調でそう言ってきた。

あまり雰囲気が良くないのを察したのか、子供たちは早々に俺の後ろに隠れてしまっている。


思わずムッとするが、それに関しては事実なので何も言えない。

なので俺も相手の言葉を無視してみようと思う。


「俺はケンジって言うんだ。あんたは?」


まさかそんな反応をされるとは思ってなかったのか、一瞬驚いたような顔をしたつり目男だったが、すぐに眉間に皺を寄せて不機嫌そうな表情に変わった。


「あぁそういえば言葉がわからないバカだったな」


「いや、互いに言葉を交わしてる時点で理解してるってわかるだろ。バカはどっちだ?」


まさに売り言葉に買い言葉で、思わず言い返してしまった。


内心後悔していても、既に手遅れ。

相手は酷くお怒りのようで、顔を真っ赤にして怒っている。

あれだけであんなに怒るとは…やばい笑いそうだ。


怒り心頭といった勢いで襟首をつかまれ、あわや殴りあいの喧嘩へと発展しそうになったとき、


「はいはい、その辺でやめときなさい」


パンパンッと手を叩いてタイミング良く仲裁に入ってきたのは十七・八歳くらいの女の人だ。

ポニーテールの髪型とそばかすの残る顔は、可愛らしいという表現の方が似合うだろう。


「っ!!リコルさん…」


そう言って先ほどとは違う意味で顔を赤らめるつり目男。

まぁ気持ちはわからんでもないが、ちとあからさますぎやしませんか?


「どうもこんにちわ、リコルさん」


「はいこんにちわ、ケンジ…あんたが喧嘩なんて珍しいね?」


「あはは…」


なんとも言えなくなって苦笑いで返す俺を、横目で睨むつり目男…いい加減にしてくれませんか?


「まぁほどほどにしときなさいよ?…ほらコルト、帰るよ」


リコルさんはそう言って、俺の後ろにいる子供の一人、彼女の弟コルトに声をかける。


「えー、まだ遊びたい…」


「だめ、今日はお手伝いするって約束だったでしょ?」


それでも渋るコルトに、


「コルト、約束は守らないとな?」


俺がそう言ってやると、どうやら納得してくれたようで小さく「わかった」と言うとリコルさんの方へと歩いていき、


「ケンジ、あしたは?」


と言うので笑顔で頷いてやると、ニッと笑ってリコルさんと手をつないだ。


「ありがとう、悪いけど明日もこの子をお願いね」


苦笑しながら俺にそう言ってくるリコルさんにも「はい」と軽く返事をしてから、二人は自宅へと戻っていった。


他の子供たちも帰ることにしたようで、すぐに「じゃぁね!」と言って走りだす。

そうして取り残される男五人。


未だに俺を睨んでいるつり目男をどうしたものかと悩んでいると、


「…お前…リコルさんと…その…」


なにやらモゴモゴと喋るつり目男、しばらく大人しく何を言うのか待っていたのだが、唐突に「くっ、もういい!お前ら行くぞ!」と言ってどこかへ歩いていってしまった。


悪いやつでは無いんだろうなぁ…たぶん。


そんなことをしみじみと思いながら、この後来るであろうコンコルダ料理授業の再来を思い出して意気消沈する俺だった。


―――――


猪っぽい動物を解体させられた俺は、大きなため息を吐き出しながら、夕食の準備をしていた。

と言っても肉を串に刺して焼くだけの簡単なものだが…


準備を終えて食卓に並べたところで、リドエルさんが差し入れを持って現れた。


「こんばんわ、おや今日は猪の肉かい?」


「ああ、俺が獲ってきたのをケンジに解体させたんだ」


「ほう?ケンジが?」


とまぁ、主犯と共犯が何やら白々しい感じのやり取りを目の前で展開しているが、ツッコむ気力も無い。

適当に受け流して食事にしようとすると、


「そういえばケンジ、あんた今日エルダスんとこのセガレと喧嘩したらしいね?」


「なに?」


それを聞いて勢い良くこちらを向くコンコルダと、素早く顔を背けた俺。


「ケンジ…どういうことだ?」


「あ~…えと、嫌味を言われてついカッとなっちゃったというか…あはは…」


思わず苦笑してしまう俺に、コンコルダが何か言おうとするが、


「まぁまぁ、いいじゃないか。別に殴り合いの喧嘩ってワケじゃないんだし、その年頃なら普通だよ」


そう言って豪快に笑うリドエルさんに苦笑するしかない俺とコンコルダだった。


―――――


リドエルさん()が去った後、なんとなくコンコルダとの間に気まずい雰囲気が流れる。

その空気に耐え切れず、俺が部屋へと戻ろうとすると、


「ケンジ…いや、なんでもない…おやすみ」


それだけ言って、コンコルダは自室へと行ってしまった。


訳がわからず、しばらくそのまま考えていたが、やはりわからずその場は諦めて体を休めることにした。

長くなってしまったので分割することにしました。


というか、やっとまともな女性キャラ出てきましたね。

ムサい小説だなぁと他人事のように考えてしまった作者です。

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