表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

出会い

 

 それでは聴いていただこう、赤鎧あかよろいの戦士の物語を。



 とある山間やまあいの村に、三人の騎士とその郎党が住んでいた。

 この国の騎士とは貴族であり、三人は村でいばり放題、好き放題。あまり勝手が過ぎるので、とうとう村を追い出された。村人達の反乱である。

 反乱の指導者は、赤く輝く鎧をまとった大男。そして彼の友人、痩せた魔術師が参謀だった。

 平穏を手にした村人達は、赤鎧の戦士の勇猛をたたえた。



 ちょうど村に居合わせたのが、旅から旅の吟遊詩人。魔法の心得が大いにあるというので、赤鎧の戦士と魔術師が訪ねてきた。

 騎士の役目は、村を魔物から守ること。彼らがいなくなった今、戦いに秀でた仲間が欲しい。

「しかし」

 と吟遊詩人は言う。

「あなた方は、信頼のできない騎士達を追い払った。ところで、わたしは連中よりもなお、性根の曲がった人間かもしれぬ。よそ者のわたしを、どうして信頼できるのです」

「目だ」

 と赤鎧の戦士は言う。

「目を見れば、その人の性根はおおよそ分かる」

「そしてぼくは、そういうこいつの目を信頼しているのです」

 と、痩せた魔術師は付け加えた。周囲にいた人々が、笑いながら頷く。吟遊詩人には、戦士が皆に慕われていることが分かった。

 もっと詳しい話をするために、詩人は戦士の家に呼ばれた。家には二十五、六と見える女と、十歳くらいの女の子がいた。

「奥さんと娘さん?」と吟遊詩人。

「違う」と赤鎧の戦士。

「妹と姪か」と吟遊詩人。

「違う。住まわせているだけだ」と赤鎧の戦士。「それと、彼女はおれより年上だ」

 戦士と魔術師がちょっと席を外した時、女は詩人にわけを話した。

「十年前、わたしは騎士のひとりに強姦され、この子を産んだのです。そして、この子と共に辛い思いをしているところを、旦那様に助けられ、以来、こうして守っていただいているのです」

 驚く詩人に、女はさらに言う。

「今ではすっかり、旦那様をお慕いしているのですが、いくら想いを伝えても、決して抱いてはくださいません」

「ふうん、あなたの美貌に不足はないと思うのだが」

「弱みに付け込むようなまねはすまいと、お考えなのかもしれません」

「なるほど、高潔な男だ。気に入ったぞ」

 詩人がすっかり村のために働く気になっていたので、戻ってきた戦士と魔術師は驚いた。



 詩人は戦士の、赤く光を放つ鎧を見せてもらった。魔術師が友人のために、魔法をかけた鎧である。

「これは強力な守りの術だ。しかし、術式に無駄がある。だから意味もなく光るのだ。わたしがちょっと、調整してやろう」

「それはありがたい」

 と魔術師は喜んだ。

 しかし、戦士は首を横に振った。

「ありがたい申し出だが、おれはこれが気に入っているのだ」

 このようなわけで、戦士の鎧は相変わらず光を放っていた。



 村の周辺には、時おり魔物が現れた。しかしいつも、赤鎧の戦士に率いられた若者達が勇敢に戦い、追い払った。痩せた魔術師と吟遊詩人も、力の限り援護した。

 そもそも魔術師は、騎士達がいなくても村は守れると考えていた。そこで、戦士の提案した騎士達への反乱に協力したのだった。

 詩人は平穏な村で、英雄達の伝説を人々に語りながら、楽しく暮らした。



 ところが、どうした巡り合わせだろうか。

 その年の初冬、山の向こうから魔物の大群がやってきた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ