婆
なんとか逃げきったようだ・・・
あの化け物は途中で私に飽きたらしく引き返して行ってしまった。
それにしてもここは何処だろう・・・
私は必死で逃げていたためか最初にいた場所が分からなくなってしまっていた。
周りを必死で見渡してみても人は独りも居ない・・・
あんな化け物にまた遭遇してしまったら今度は逃げきれる自信もない。
「どうしよう・・・私死んじゃうのかなぁ」
「それはあんた次第さ」
「だっ・・・誰」
私はそう言い声の方に振り返った。
「人の名前を聞くときはまず自分から名乗ることさね、まぁあたしゃもう人じゃないがね」
声の主は老婆のようだった、見た目は70歳くらいの老婆だが大きさが人とは違った、親指ほどの大きさで見つけるのに少し時間が掛かったくらいだ。
「ご・ごめんな・さい」
「許してやるよあたしゃ人が出来てるからねぇあっもう人じゃないさね」
どうやら老婆は昔は人だったらしい。
「私は三日月鏡子ですあなたは?」
「これはご丁寧に、あたしゃとめじゃ佐藤とめ、昔は霊媒師として人間界で働いておったわ、今はこの死界でうろついておるがの」
「死界?」
私はとめさんにこの世界のことを聞くことにした。
「ここは人間が天国か地獄に行くまでの狭間の世界死界じゃ。まぁここは地獄よりのしかいじゃな」
そんなこともしらないのかと言いたげな様子でとめさんは私に説明してくれた。