歪んだ先に残るもの(終)
結局、夏は夏期講習やらオープンキャンパスやらで、ヒナが家に泊まりに来たのは9月の下旬だった。
ヒナが泊まりに来て、受験勉強を一応しておいて、勉強の合間に他愛のない話をして、恋の話なんか仄めかしたりして。まぁ、ヒナは恋愛に対しては内気だから一方的に私が語る形になるだろう…と思っていた私が如何に浅はかであったか思い知らされた。
ヒナが泊まりに来た初日の夜に、思わぬ言葉がヒナから聞かれた。
「私、気になる人がいる。もしかしたらすごく好きなのかも知れない。」
"かも知れない"とは取り付いてあったものの、ヒナの遠くを見つめるようで、それでいて愛しげな眸は紛れもない"好き"の断定の気持ちを思わせた。
「……それは…誰なの?」
この時が来る日があったら、素直に喜んであげようと思っていたのに、言葉は弾まずに沈んでいく。
「………誰にも、言わないでね…────」
頭がリセットされたように目の前に白一色の景色が浮かぶ。…でも、リセットなどされる訳もなく、私の中の嫌な想い出としてその言葉は海馬に蓄積された。
ヒナの好きな人は塾講師だった。
それも、女の。
ヒナの答えを聞いて、私の中の枷が外れた。
ヒナに対しての"想い"が深く深く、歪んでいく。
相手が同年代の男の子だったら、諦められていたかもしれない。だって、性癖が根本的に違う。
でも、ヒナも同性愛者だった。それは私にも平等に好きになってもらえるかも知れない権利があったということだ。
如何せん諦めることなんてできない。
相手がヒナなのだから。
「私はね、ヒナが好きなんだ…。お願い、だから、一度だけ…」
一度だけ、ヒナに口付ける、だけにするつもりだったのに…。
その夜、私とヒナは"一つ"になった。
そんなこんなで向かえたセンター試験。私はヒナと共に試験に臨んだ。
やはり、いざ試験となると緊張してしまうもので 手には汗が滲み鉛筆をもつ手が震える。
でも、大丈夫。
私には、ヒナがついているんだもの。
そう呟いて、愛しみを込めながら私はお腹をさすった。
あの夜、私達は一つになったの。
そういえば紹介してなかった、私が同性愛者の理由。
女の子の方がね、柔らかいから。
ヒナと一つになったあの夜改めて、やっぱりこれがきっと私の最後の恋になるんだと思った。
だってあんなに美味しい子、他にいないもの。
end
最終的にカニバに持っていきましたが…
いかがでしたか?
初めて書いた小説なものでまだまだ未熟ですが、感想等送って頂けると嬉しいです。