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俺は、俺を信じてる

掲載日:2026/05/28

15分短編です

 仕事がひと段落して、自室でPCを開いた。起動してすぐ、ハードディスクの中身を確認する。

 小説家の俺は、ハードディスクにたくさんのネタをため込んでいる。というか、先が浮かばなくて書けなかったものが“ネタ”という形で溜まっているだけなんだけど。

 今は仕事の傍ら、休みを使って執筆活動にいそしんでいる、いわゆるアマチュアの文字書きだけど、俺はいつか、大物小説家になって、印税で暮らすんだ。だから一つでも多く、このネタたちを消化して、小説家としての実績を積み上げていくぞ!とそう思ってはいるんだけど・・・。

「おか」

 思わず声に出してしまったけど、口に出しても何の記憶も引っ張り出せない。ネタ一覧の中に、“おか”の二文字だけのファイルがあった。中身を開いてみると、何も書かれていない。真っ白な画面が姿を現した。

 またこれだ。俺はいったい何を未来の俺に伝えたかったんだろう。

 以前は「主人公は○○だった話」というタイトルのファイルを開いたら、まったく同じ文言が書かれていて絶望したことがある。今回の“おか”はそれを上回る絶望だ。

 なんだよ、おかって。岡田か!?岡本か!?それともお菓子とか!?お母さん!?お買い物とか、オカリナとか・・・“おか”から始まる単語って意外とあるもんだな。いや、そうじゃなくて、おか、なんなんだよ。それともおかの二文字で小説を書けってことなのか!?

 自分の行動ながら、過去の自分にイライラする。まったく、俺ってやつは、未来の自分を混乱させて、何が楽しいんだか。

 俺は迷わずゴミ箱のマークを押した。「本当に削除しますか?」の定型文が開いて、ちょっとだけ迷った。実は今、俺はスランプ気味で、ネットにアップした小説に読者がつかなくて、全然バズの欠片もないんだ。今までと違う切り口の、何か新しいモノを始めろという、過去の俺から俺への挑戦状なのかもしれない。

 一旦俺は“いいえ”を押して“おか”は削除を免れた。

 過去の自分にイライラしたって、過去は変えられない。先ずはこの“おか”を書いた時のことを思い出してみよう。

 保存された日時を確認すると、つい昨日の事だった。時間は夜の22時、寝る前に保存したものだろう。その時俺は、何を考えていたっけ?

 夕飯を食べ終えて、続き物のアニメの続きを見るか、小説を進めるかで少し悩んでから、昨日も同じようにお題一覧を開いたんだっけ。でもネタが降りてこなくて、創作意欲を高めるために、アニメを見始めたんじゃなかっただろうか。

 そのまま3時間くらい経って、アニメを一気見したんじゃなかったっけ?あれ、そうなると、この“おか”を昨日保存したのはおかしな話になるな。昨日俺は小説を書いていない。そもそもパソコンを開いたんだろうか?あれ?自分の行動がはっきり思い出せない。

 “おか”を残したのは昨日の22時で間違いない。でも俺は昨日パソコンを開いた記憶がない・・・。ど、どういうことなんだ!?

 開いていたワードに「なんなんだ?」と打ち込んで、上書き保存をかけた。

 これで明日の俺が、この中身を読んで何か答えをくれるだろう。今日はもう寝よう。俺

、きっと疲れてるんだ。うん。そうに違いない。

 一旦“おか”の事は忘れよう。うん、ソレが良い。お休み。あとは頼んだぞ、明日の俺。



——そして歴史は繰り返す——

「昨日の俺!この野郎!!」

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