罪人転生す
床が冷たい
食事も冷たい
今はスプーンを握っているはずなのに
あの時の手の感触が無くならない
俺が犯してしまった罪も無くならない
俺はあの日全てを失った
もうやり直す機会はきっとない
短かった人生だったが
楽しいこともたくさんあった
お父さん、お母さん
こんな息子でごめんよ
でももう大丈夫
俺はこの世界からいなくなるから
サクッ
あー本当に終わるんだな
床が赤く染まっていく あの時のように
俺はきっと地獄に行くだろう
天国にいるあいつに会うこともない
あー
これもう死ぬわ
もし本当に神様がいるのなら
もう一度好きなやつの笑っている顔くらい
見せてくれてもいいのにな
目を開けると、そこは童話にでも出てきそうなほどに美しい青空が広がっていた。
先ほど切った首の筋を掻きながら足元をみると、そこは雲の上。
どうやら無事死ねたらしい
「でも、どう見てもここ天国だよな」
俺がそう呟くと後ろから声が聞こえた。
「ここは天国ではないぞ」
後ろを振り返るとそこには八重歯の尖った小さな女がいた。
羽が生えてるところをみるに妖精?なのだろうか。
宙にぷかぷかと浮いている
「じゃあ、地獄にいけたのか。そうか、よかった」
俺みたいな罪人が天国なんかにいるはずがない。
ようやく地獄に行って罪滅ぼしができるようだ。
「地獄に行って喜ぶ奴か、お前変な奴じゃの。理由を聞いてもいいか」
不気味な笑みを浮かべながらその女は俺にそう言ってくる
「俺はやってはいけないことをした。それだけだ」
にやけたまま女は俺を見つめる。
「ここが地獄なら、お前は閻魔大王とかそんなかんじなの?
なら早くもっと地獄らしいとこ連れてってよ」
「ふふっ。自ら地獄を望むか、、、気に入ったぞ」
さっきからこの女は何者なんだ
気に入った?
閻魔大王に気に入られるとなんかすごいこと起こりそうだな
「お前。自らが犯した罪を拭いたいといったところか」
「ああ」
なんだ、何を企んでる。
すると疑っている俺の耳に想像もできないような言葉が入ってくる。
「お前、もう一度人生をやり直して見ないか?」
えっ。じ、人生をやり直す?
それって、、、
「転生、、ってことでいいのか」
「イエス、こことは違う世界になるがな」
俺にむけて親指を立ててそう述べる
「無理にとは言わん。ただ、そんな終わり方でお前は満足なのか」
満足か、そんなもんできるわけないだろ。
でも、でも、、、
「私も忙しいんだ、返事は?」
俺にもできるのだろうか。
罪を犯した俺にも
悲しみの涙を喜びの涙に変えることが
ふーっと息を吐き俺が出した結論は
「イエスだ」
俺は女に向かって親指を立て返した。
「よろしい」
そういうと女は何かの呪文を唱え始めた
しばらくすると、そいつの手元に光が集まって行き、
扉が生成された。
それはこの風景に似合わない地獄の顔つき。
「それでは、地獄の旅を〜〜」
「えっ」
その扉に恐れおののかされていた俺の尻を、その女は蹴り飛ばして無理やり扉の中に入れてきた。
閉まりゆく扉に俺は2つの疑問をぶつける
「お前は一体何者なんだ。それと、俺はそっちの世界で何をすればいい!」
俺がそう聞くとその女は
「私の名前はリン。まあ、いずれまた出会うことになるだろう。
その時に話してやる」
俺に背を向けて去っていく。
「ちょ、2つ目の方は?!」
するとハッと思い出したかのように俺の2つ目の質問の回答を
「あ、そうじゃった。お主はあっちの世界で、、、、」
ガシャン。
大きな音を立てて扉はしまった。
肝心な2つ目の問いの答えはギリギリで聞けなかったようだ。
それにしても
「こっちの方が地獄みてえだな」
あたりは真っ暗。何が出てくるかもわからない恐怖に怯えていると。
「あれ?」
だんだんとめまいと同時に意識が遠のいていく。
これ、大丈夫なや、、つ、、、




