探検ではない, 探検 8
本作品に登場するすべての人物、団体、国家及び事件は全て作者の創作物であり、実在とは無関係です。
すべてフィクションですので、楽しんでお読みください。
8. 探検ではない, 探検
アサメが背を向けたその瞬間、
サズキの表情は冷たく鋭く変わった。
目は鋭さを増し、身体は自然と毅然とした構えに切り替わる。
「ボディガードたち、集中して。」
サズキが低く厳かな声で命じた。
「これはただの護衛じゃない。作戦中だ。
それぞれの任務を正確に遂行し、周囲の動きにも常に注意を払って。」
「小さな脅威でも見逃さないで。特に周囲の警戒を強化して。」
ボディガードたちは神妙にうなずき、サズキの指示に従った。
サズキは完璧に状況を掌握し、寸分の狂いも許さぬ指揮官の顔に戻っていた。
重装備のボディガード12名と共に、ボートに乗り込む。
サズキが静かに言った。
「ここから一時間くらい。」
アサメが首をかしげながら返す。
「えー、泳いだほうが早いってば。一緒に泳ごうよ~」
サズキは眉間にしわを寄せ、答えた。
「装備もあるし、君も体を労わるべきよ。今回は……私からのお願い。」
アサメはいたずらっぽく笑って頷いた。
「わかった、じゃあ一緒に行こう。」
ボートは海を裂きながら、巨大タンカーのある座標へと向かった。
一時間後、彼らはロシア製の超大型タンカーに到着する。
その船は静かに、不吉な気配を放っていた。
サズキが先に慎重に接近し、確認した。
「……誰もいない。」
目に入ったのは、甲板に点々と残された血痕だった。
サズキが緊張した声で言う。
「血痕があちこちに……誰か、負傷してる。」
アサメが即座に操縦室を調べた。
「操縦系が壊れてるみたい。まったく反応しない。」
ボディガードの一人が現状を伝える。
「このままでは、エンジンが止まらないか故障すれば、大事故に繋がります。」
サズキは固い表情で言った。
「私たちが原因を突き止めないと。放っておけないわ。」
案内板によれば、エンジン室は地下5階にある。
一歩ずつ降りるたび、海中から蛍光色の何かが微かに光り、まるで呼吸するように脈動していた。
深海から浮かび上がるように、巨大な影がゆっくりと近づいてくる。
水中でゆらめくように身体を動かすそれは、姿を一目でも見た者の心を凍らせた。
その蛍光は不規則に点滅し、生き物の鼓動のように明滅する。
太く硬い鱗が鎧のように全身を覆い、
その目は、地獄の業火を宿したかのように真紅に光っていた。
サズキの心臓が激しく脈打ち始める。
彼女は静かにアサメを見た。
その生き物の身体は重々しく、鋼鉄のような鱗が筋肉を覆っていた。
背中は深い青緑色に輝き、腹部は淡く蛍光を放つ銀色。
巨大な口元はまるで鉄槌のように重たく、
上顎には鋸のような鋭い牙が並んでいた。
瞳は深海の底を思わせる冷たく無慈悲な紅。
戦闘が始まると、巨体の尾が水を裂き、まるで海の怪獣のように波を切り裂いた。
その瞬間、アサメの髪が逆立ち、瞳が紅く染まり、
本能的な野性の気配を発した。
そして静かに、こう言った。
「あいつらだ。」
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