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プロローグ (2) 台風の夜。2,3

本作品に登場するすべての人物、団体、国家及び事件は全て作者の創作物であり、実在とは無関係です。

すべてフィクションですので、楽しんでお読みください。



2. 台風の夜。






――ゴォォォォ――


暗い青い波の上に巨大な津波が揺らめいていた。

小さなサメ、その生き物は波と稲妻、降り注ぐ雨を突き破り逃げていた。

機雷が爆発した。


パン!パン!


水中の爆発音が何千もの水滴のように皮膚を裂いた。

ひれの一部が裂け、尾には魚雷の破片が刺さっていた。

海水は赤く染まった。

追いかけてきたのは人間だった。

潜水服を着た隊員たち、そして無人潜水ドローン。


機関銃が水面下で閃光のように炸裂し、弾丸が彼の横をかすめた。

一つは尾ひれを貫通した。

血の筋が渦巻くように広がった。


追跡機から再び「ピー――」という音が鳴ったが、

数秒後、衝撃で外れ海底に沈んだ。


彼はその瞬間を好機と考えた。

しかし逃げられるという希望は長くは続かなかった。

彼の前に立ちはだかったのは別のサメたちだった。

異常な体、

奇形的に黄緑とピンクの蛍光色に膨れ上がった筋肉と鋭い骨の突起。

彼らもこの汚染された海で生まれた怪物だった。


水中で互いに唸る奇妙な音。

一匹が襲いかかった。

彼は避けた。

だが避けるたびに人間から負った傷が広がった。


血の匂いを嗅ぎつけた醜いサメたちがさらに集まった。

彼は最終的に方向を変えて逃げた。

東へ、海流に乗り日本北部秋田地方の港を目指して。

彼は知らなかった。

なぜそこへ向かっているのか。

何かに導かれる本能が告げていた。

「そこへ行かなければならない」と。


闇の中で、彼は終わりなき苦痛と血の軌跡を残しながら泳いだ。

雷が水面を切るように落ち、

海は彼を隠すようでいて、また押し出すように絡み合った。

そうして彼は生き残るために必死に泳ぎ続けた。





3. 出会いそして別れ.



アオイはいつものように、古びた倉庫の扉を開けて中に入った。

海辺の埠頭のそばにあるその古い倉庫は、彼女の秘密の作業場だった。

人々はこの場所を忘れていたが、アオイにとっては海と交信する道具を作る神秘的な空間だった。

その日も、小さな手で電線をつなぎながら電気信号を試していた。

すると、戸外から不思議な気配を感じた。


「ん?」


埠頭の船が上がる坂のところで、何かが半分水の外に現れていた。

赤い血が水に混ざり流れており、奇妙な形が床に力なく垂れていた。


「へぇ!サメだ!」


約1.2メートルのホオジロザメだった。

大きすぎず小さすぎず、しかし蛍光色に輝くその存在感は強烈だった。

アオイは無意識に呟いた。


「3歳くらいかな…ホオジロザメにしては賢そう。目が…生きてる。」


サメの体のあちこちには銃弾が刺さっており、ひれは裂けて血がしたたり落ちていた。

だが背中には微かに電流が流れ、ほのかな光はまだ生きていることを知らせる動きだった。


「君は本当に不思議なサメだ…突然変異?いや、何か違うよね。」


アオイは普段は想像の中だけで描いていた海の生き物を目の前にして、興奮を抑えつつ素早く動いた。

慌てて家へ走り、薬や消毒液、動物用治療薬、自作の医療道具をたくさん持って戻ってきた。

慎重にピンセットで銃弾を抜き取り、それぞれの傷に合った薬を塗った。

サメは気絶していたが、アオイは諦めなかった。

小さな電極を付けて微弱な電気刺激で心拍をチェックし、血流を安定させる試みまで行った。

数日が過ぎた。

倉庫は次第に海洋動物の病室のようになり、アオイの目には疲れが見えたが、その代わりに瞳はより一層輝いていた。

ある日、サメが目を開けた。


「目が開いた…ヒヒ」


アオイは微笑みながら、慎重に自作した電気信号装置をサメの頭にあてた。


「私の声、聞こえる……?」


そして、続いた電流の反応。パチッ、パチン。電流のパターンが一定の周期で変化した。それはランダムではなかった。


「応答した……!君、戦うのが嫌いなんだね。」


その言葉に、サメは微かにまばたきをした。その瞬間、アオイは確信した。このサメは、ただの動物じゃない。

学んでいる。

反応している。

理解している。

さらに数日が過ぎた。

傷は癒え、サメは弱々しくも餌を口にすることができるようになっていた。


アオイは家から薬と魚を持って、再び倉庫へ向かった。

しかしその夜、村には黒いスーツを着た者たちが現れた。音もなく動くエージェントたち。軍用SUVから降りてきた見知らぬ外国人たち。

アオイは彼らを見た瞬間、直感した。


「彼ら……サメを追ってきたんだ。」


彼女は振り返ることなく走り出した。

外部の人間が来たことで、数人の村の大人たちがアオイを逃がすようにして道をふさいだ。


「アオイ!どうしたんだ?何があったんだ!」

「この子も、うちの村の子だ!」


アオイは走った。息が切れ、視界が霞んでも止まれなかった。

サメは今、一人かもしれない。

私が救った命、私が作った友達。絶対に、守らなきゃ。


サメは大きな目でアオイを見上げた。

まるで「く?」と問いかけるように、

本能だけで反応するまなざしだった。

アオイはほっとしたように、そっとサメを抱きしめた。


「はぁ、はぁ……大丈夫、大丈夫だから。」


サメは大きな目であおいを見上げた。 まるで「ク?」と尋ねるように、本能だけで反応する目つきだった。

葵は安心したようにサメを抱きしめた。


「はっはっ、大丈夫だよ··· 大丈夫だよ。」


しかし、その瞬間。

ガンガン——

倉庫のドアが乱暴に開いた。


背が高くて冷たく輝く青い瞳を持った見知らぬ男たちが入ってきた。

黒いスーツに無表情な顔、言葉は一つも聞き取れなかった。 あおいは直感した。


あの人たち、サメを殺しに来たんだ。


アオイの前に、冷たく光る銃口が突きつけられた。

サメの瞳は鋭い捕食者のように赤く光ったが、傷ついたその体は無力にそこへ横たわっているだけだった。


「ショット(Shot.)」


冷酷な命令と共に銃声が響いた。

前に出て、身を挺してサメをかばったアオイの背中に鮮血が弾けた。

だが結局、彼女は敵の銃弾に心臓を貫かれてしまった。


そのまま、サメと共に海へ倒れ込んだ。

アオイはサメの額にそっと自分の額を寄せ、囁いた。


「私を食べて……私のすべてを、君にあげる。」


サメは彼女の涙と血を飲み込んだ。

そして彼女と共に、海の中へと消えていった。


「君はアサメ、アサメなんだよ……」


最後の言葉のあと、アオイの体温は急速に冷たくなった。

サメは微細な電気信号でその事実を感じ取った。

心臓は止まり、まぶたは静かに閉じられた。


深海の中で、サメは苦しみ、もがいた。

そのヒレの先から青い電流が走り、火花のように広がっていった。

アオイを飲み込んだ彼の体内で、未知なる変化が始まろうとしていた。


いつも読んでくださって、本当にありがとうございます。


作者Twitterはこちらになります。

→ https://x.com/KingPG_novel


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