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幽霊と探偵  作者: aqri
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悪魔召喚6 マニュアル召喚

「ごまかしたりまわりくどかったら速攻ブチ殺す。何しようとしてた、今何が起きてる!」


 殺気立った声で怒鳴れば相手はビクリと肩を震わせる。しかし顔にはいまだにあの三角覆面をしているので、なんだか緊張感のカケラもないマヌケな絵にしか見えない。イライラした様子で布を無理やり引っぺがすと、案の定その顔はターゲットの女性……。


「あれ?」


 ではなかった。女性ではあるが、まったくの別人だ。思わずきょとんとする中嶋は、ポツリと呟いた。


「えーっと。誰?」

「あ、アンタこそ誰!?」

『いやはやごもっとも』

「まあ誰でもいいや。この雰囲気はなんだ」


 凶悪な顔で問いかければ相手はヒっと脅えた息を呑む。きょろきょろとあたりを見渡し、半泣き状態で。


「わ、わかんない」

「ああ!?」


 ヤクザかチンピラのような凄み方に女は飛び跳ねる勢で肩を振るわせた。


「だって、だって私説明書読んでやっただけだし!」

「マニュアルなんてあるのかよ!? すげーな! まあどうでもいいけどな! この状況が物凄くヤバイって事だけ理解しろ! 悪魔か何か出てきて俺達全員の魂貰いますとか言ったらその場でテメエをぐちゃぐちゃにするからな!」


 完全に切れている中嶋をよそに、一華はあたりを見渡す。そして机の上にある紙を見つけた。


『サトちゃん、これ説明書じゃない? 詳しい事わかれば止められるかも!』


 一華の指差す方向にある紙を掴み読む。女子高生も横から覗き込んだ。


「セミテグスタンの呼び方。部屋を血まみれにして下の絵の魔方陣を描き生贄を捧げます。出てきたら願いを言うとかなえてくれます。願いをかなえれば帰ってくれます、以上」


 淡々と読み上げる女子高生の無機質な声が辺りに響く。中嶋と女子高生が完全に冷たい目、というよりカワイソウな人を見る目で女を振り返る。女に霊感があれば、ここに同じような目をした一華が見えていた。


「子供チャレンジだってもうちょいマシな作文作るぞ」

「三分クッキング以下なんだけど。え、これのために私殺されそうになったとか冗談でしょ?」

「今日のみずがめ座のラッキーアイテムは壊れた鳩時計ですって言われたほうがまだマシなレベル」

「つーかこのババア蹴っていい?」


 女子高生にまで侮蔑の目で見られ、女はウっと言葉を詰まらせる。恐怖とはまた違った意味で今にも泣きそうだ。

 一華はやれやれと首を振ったが、ふと気づいた。


『待って、この人が殺されてないってことは儀式完成してないはずなのに何でイヤな雰囲気なの?』

「そういえば何でだ」

「え? なに?」


 一華の声は聞こえていないので、中嶋の言葉しか聞いていない女子高生は不思議そうな反応をする。


「アンタが殺されてないなら、このヤバイ雰囲気は何でだ」

『そういえばさっきの魔方陣みたいなのは』


 くだらないやり取りをしている間に部屋に撒き散らしていた血はすべて魔方陣に吸い込まれたようだ。きれいさっぱり跡形もなくなくなっている。

 パキンという音はしない。そのかわり、地鳴りのような低い音がし始めた。その音は魔方陣から聞こえてくるのがわかる。


「ねえ、やばくない? 逃げた方がいいんじゃ」


 わずかに顔を引きつらせながら女子高生が一歩後ずさる。しかしすぐにズン、ズンと大きな音が響き始める。まるで大きな何かの足音のように。中嶋は魔方陣を指差し、小声で一華に話しかける。


「ちょっと様子見てきて」

『ふざけんな』


 額に青筋を浮かべ速攻一華に拒否され舌打ちをした。仕方ないとばかりに中嶋は女の胸倉を掴み怒鳴る。


「これの中止の方法は」

「え、あ、説明書に書いてないからわかんない」


 その言葉にブチっと中嶋の何かが切れる。いや、先ほどから十分切れまくっているのだが。何故女というのはこう、マニュアルを理解していないうちに手を出すのか。それで何か一つ手に詰まると「わからない」「書いてない」「っていうかこれ壊れてるんじゃない?」と常に自分の非を認めず放置しようとする。


「アホかコックリさんだってお帰り頂く方法ゴロゴロしてんだぞ! 説明書の読む順番ってのはスタートアップの次は”故障かな? と思ったら”の項目だろうが!」


 もはやアレがマニュアル云々以前の問題なのだが、目の前の女が本当に役に立たないことはよくわかった。掴んでいた胸倉を離す、というか床に放り投げる勢いで突き飛ばすと女は床に倒れこむ。

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