恋占い6 ただの自殺じゃない
聞いている限りはおかしなところはない。お似合いの相手を見つけるきっかけを提供し、見つけたら何をすれば仲良くなれるかのアドバイス。定型文が決まっていて当たり障りのない文章はランダムに出ているだけの可能性が高い。それならそれが自殺の原因とは考えにくい。
『私はその時テル君と付き合ってたからやらなかった。でも、今回みたいな友達が詳しい事教えてくれないっていうのは別になかった……いや、あったかな? 友達がその後続けてて、あれからどうよって聞いたら彼氏いる奴には教えん! って言われたっけ。もちろん冗談っぽかったけど』
「で、結局教えてもらったのかその後の事は」
『あ、そういえば教えてもらってないかなあ』
その後友人達は楽しそうにそのサイトを利用していたように思える。しかしすぐに飽きてしまったのか、その後そのサイトの話をする事はなかった。
「つまり両思いになったり付き合ってる奴がいるのはそこで除外されて、具体的な片思いしてる奴や本気で恋人が欲しい奴限定の追加サービスか何かあったのかもな。その辺は清水さんたちが掴むだろう。それが魅力的……魅惑的か? どっぷりハマりこむ何かがあったのかもしれない。ただそれが直接自殺と繋がるとは思えないんだよな」
考え込む中嶋に一華も少し考えたが、『あ』と声を上げた。
『好きな人に振られたとか』
「たったそれだけで自殺はしないだろ。俺がそういう恋愛ごとに興味ないから、っていう理由は省くぞ。長年付き合ってたとかならまだわかるが、付き合う前じゃ普通に考えたってそれはない」
それに友人達の口が堅かった件もある。好きな人に振られただけならサイトの事をしゃべろうとしないのは不自然だ。
『そうなんですよね。でも例えばこのサイトに好きな人に振り向いてもらえるアドバイスを貰ってて、それを実行してもフラれたとかだったらどうですか? 凄く信じ込みやすい人だったとか』
一華の案に中嶋は少々考え込む。その線で考えれば確かに可能性はゼロではない。おかしな宗教や自称占い師に言いくるめられて被害にあう人は何年たっても減らないし、海外でも悪魔祓いが形だけの虐待行為である事も少なくない。信じていれば救われる、報われるという考えは万国共通だ。思い込みが激しかったりそういうのにすぐにはまりこんでしまう人間はどこにでもいるのだ。いつの時代でも、どんなところでも。
今まで依頼人と話して培ってきた経験を生かし、少し情報を整理する。人の考え方や行動の特徴からある推論を立てた。
「思い込みが激しいかどうかはひとまず置いておく。ただ、友達が死んでなお怪しいと思われるサイトに関して口を割らない理由は限定されてくる。今回の場合だと、たぶん後ろめたい事があるから隠したいのかもしれない」
『っていうと?』
「出会い系サイトとかじゃよく聞く話なんだが、本当の出会いを提供するんじゃなく最初から金を巻き上げるのが目的の偽サイトっていうのは星の数ほどある。異性のふりをしたサクラがやり取りをし続けて金を巻き上げていくっていう方法だ。結局被害者はマインドコントロールされたまま言いなりになる。でも、他人の言葉とかであっさり断ち切れるもんなんだよこういうのは」
『まあそうですよね。他人が聞いたらおかしいなって思いますし』
たとえ身近な人が指摘をしなくても、余程のお人よしでない限りはおかしいとは自分でも気づく。常に金がかかるうえ、直接会ったりそれ以上の仲に発展する事がないのだから。
「今回の場合なら金じゃなく行動だな、アドバイスに従ったんだろう。もしそれがこれってヤバイんじゃないかと思うような内容……人殺しとかじゃなく単純に軽犯罪とかだったら途中で我に返るだろ。これおかしいんじゃないか、本当にこんな事して思いが叶うのかってな」
『あ、そっか。それでもし叶わなかったら……』
「さっき一華が言った振られたから自殺ってのも当てはまる。そこに至るまでに不安や恐怖がたまってて、告白の失敗がトドメになってるとしたら違和感ない。ついでにそういうヤバそうなサイトだって気づいてた友人達の口が堅いのも事情を知ってたか、自分達も一枚噛んでる場合だな。言ったら自分たちまでしょっぴかれる対象になるから言えない。口の堅さが中途半端なのも自分達の身がヤバイっていう思いと友達の自殺の真相をなんとか告げたいっていう思いがあるから、とかか?」
『そうなると一応全部違和感なくスッキリ説明できますね。は~、サトちゃんって凄いんだ。プロファイリングとかやったら? 本当にアニメとかに出てくる探偵になれるかも』
「考えとく」
あまり興味がなさそうにそれだけ告げると中嶋は事務所へと戻った。
他人のゴタゴタに首を突っ込んで、謎を解き明かしてドヤ顔する馬鹿になど、絶対になりたくない。……他人の命の責任もとれないくせに。




