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幽霊と探偵  作者: aqri
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霊感者のスルースキル2 やっかいな悪霊

 今は清水という男に取り憑いている。現在六十二歳、しかしよほど生き生きとした人生を送ってきたらしく年齢を感じさせないパワフルさがある。長年スポーツをやっているらしく六十代とは思えない筋肉の付き方だ。姿勢も綺麗でああいう歳の取り方したよなと思うくらいにはうらやましい。そんな清水が悪霊が後ろからしがみついた途端に急にけつまずいた。


「おっと」

「あぶね。大丈夫ですか?」


 すぐ近くにいた他の同僚、戸波が声をかける。見ればパソコン等をつないでいる電気コードに足を取られたようだ。


「おかしいな、それさっき片付けたんですけど。すみません」

「ははは、歳だからね。戸波君のせいじゃないよ。機材が増えてコード増えたからなあ。時間を作って掃除したときにもう少し数を減らすか、机の内側に這わせておこう」


 その会話を聞きつつ中嶋と小杉はちょっと嫌な予感がした。戸波が邪魔にならないようにコードを片付けたのはついさっきのことで、二人はそれを見ていた。清水がコードにけつまずくような弱い足腰じゃない……先月トライアスロン完走をしている人にはありえないことなどわかりきっている。つまりコードが急に出てきたということだ。


(あの野郎、軽くポルターガイストもできるのか)


 物を直接動かすことができるのは思いの強さに比例する。つまりこの悪霊、自分が思っている以上にかなり厄介な相手ということだ。居心地が良いとわかったら住み着いてしまうかもしれない、なんとかしなくては。おそらく小杉が既に佐藤に連絡をとっているはずだ。佐藤から何かアクションが来るまでやり過ごすしかない。

 悪霊はしばらく清水についていたが、自分の気配を感じていないとわかり離れた。そしてふらふらと部屋を歩きながら、とうとう中嶋に近づいてきた。その様子を周囲に悟られないようにしながらも小杉がチラリと心配そうに見る。

感じる力、霊感力で言えばおそらく中嶋の方が強い。幽霊の記憶なども触れていないのに見ることもあるらしい。子供の頃交通事故で死んだ地縛霊が自分の体をすり抜けて行ったときに、事故の衝撃のようなものが体で再現されて気絶したことがあったそうだ。中嶋自身がお守りを持っているので憑依はされないだろうがどんな影響があるのか。


「サトさん、この間揉め事があった方の浮気調査の件報告書上がりそうですか」

「あー、自分で浮気現場に勝手に突撃しておいて逆ギレした旦那が家出してお前らのせいだってくってかかってるアホ女の件か」


 業務妨害になるので依頼人が自分から動くのはNGだと契約の時に伝えているのに、今回の女性は自分で浮気現場を調べて行ってしまったのだ。そして揉めに揉めてなぜかどう責任とってくれるんだとこちらに食ってかかってきている。そっちがその気ならこっちも法的手段を取ろうと中嶋がノリノリで対処を進めているところだった。


 小杉としてはいつも通りの業務、さりげなく会話を広げて外に出向くような仕事の向け方にしたかったのだが。中嶋の発した「アホ女」という単語に明らかに悪霊の雰囲気が変わった。どうやら不倫や男関係で惨めな思いをして死んだらしい。そうかこの人男に裏切られたことからの飛び降り自殺だと気付いた時には遅かった。あ、まずい、と小杉が内心焦るものの一度火がついてしまったものにはどうしようもない。中嶋は表面上全く気にした様子はないが。


「所長からも調査は打ち切り許可もらってる。相手が戦うようだったら徹底的に叩き潰していいって言われてるから。先手うたないと口コミとかボロクソに入力するだろうからこっちも全力で行くわ、報告書は明日まで待ってくれ。こいつに対する落とし前……落としどころつけたらそれ書き加えて提出する」

「今落とし前って言わなかった?」


 二人の会話に他の同僚がツッコミを入れてくるが、中嶋がこういうキャラだというのはわかっているので半分呆れた様子だ。


「落とし前でも別に間違っていないというか、そのまま落とし前なんだからいいんじゃないですかね?」

「まあ、それはそうか」

「プロに歯向かったらどうなるか、足りない脳みそに叩き込むだけなんで心配しないでください」


 他の同僚たちにそう声をかけている中嶋の頭を、悪霊が真上から思いっきり鷲掴みにしている。そして何故かその場で中嶋に向かってヘッドバンキングを始めた。


(はあ!?)

 

 その様子が見えてしまう小杉からすれば気が気ではない。何せ幽霊からのダメージは霊感者にとってそのまま物理攻撃のように影響がある。つまり今中嶋は激しい頭突きをくらっている状態なのだが、眉一つ動かさずにパソコンに向かっている。


『きいいいいい!!』


 しかもとんでもない奇声をあげている。アマゾンに珍しい動物の取材に行った動物専門番組でしか聞かないような金切り声だ。


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