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幽霊と探偵  作者: aqri
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ストーカー3 部屋に置かれた物

 部屋に入り見た感じでは確かに物が少なく、一応調べたがカメラはなし。機材を使って盗聴器を探したが見つからなかった。ベランダを見たが隣から覗けるポイントもない。部屋にも穴などはなく、第三者が外から中を覗くのは無理そうだ。

 しかしそれらの調査はすべて無駄だと中嶋にはわかっていた。何故なら部屋に入った時から奇妙なものを感じていたからだ。玄関から部屋の中が妙に寒い。まるでそこだけ気温がぐっと下がったかのような肌寒さを感じた。

 女性と何気ない会話をしながら、一点を注視しないよう気をつけつつ部屋を見渡す。ここで何かをじろじろ見たら相手に何か気づかれてしまうかもしれない。今のところ中嶋には幽霊の類は見えなかった。異常なのは部屋の中が寒いという点だけだ。

 そして、ふとある事を思いつきある細工を施した。説明が面倒なので依頼人には気づかれないように。そして依頼人に近づき、耳元に小声で告げる。


「今日俺がここに来て調査をしている事ももしかしたら筒抜けかもしれません。誰かが探りを入れるような事を言ったり、行動してきたときはさりげなく会話をかわして連絡をお願いします」

「わかりました」


 女性から了承をもらい、その日はひとまずそれだけにして事務所へと戻る。相手が何か行動を起こしてくれればいいのだが。

 それから二日後、依頼人から連絡が入った。おかしな行動かどうかはわからないが、普段あまりしゃべらない同僚からアクションがあったというのだ。詳しく聞きたいからと言い、事務所に来てもらうよう頼んで電話を切った。


『何があったんですか?』

「普段交流のない同僚から鏡をもらったそうだ。知人から貰った物だけど女性向けなデザインだからどうぞってな。たぶんコイツが黒だな」

『何で?』

「この間依頼人の部屋に鏡を置いてきたから。その鏡が邪魔だから、ちょっと高価な鏡を渡すことでその鏡を捨ててもらおうって作戦なんだろ。甘い甘い、依頼人も鏡があるのは知らない。何故なら鏡置いたの説明してないし見えづらいとこ置いてきたからな」


 ふん、とふん反りかえる中嶋に一華はなんのこっちゃという顔をするが、小杉が振り返った。


「もしかして鬼門に置いてきたんですか」

「ご名答」

『鬼門? なんか、風水とかで聞きますけど』

「霊の通り道だな、鏡を置くと悪いモノを跳ね返す。ま、応急処置にしかならないが結果オーライ。犯人あぶり出しには十分だったな。どんな手段使ったか知らんが、そういう処置をされると困る程度のもんだってのはわかった」


 ペラペラと話す中嶋を、一華は不思議な気分で見つめる。総弦はともかく中嶋も幽霊やら何やらに詳しいとは思っていたが、ここまでいろいろ知っているとは。霊感はある日突然目覚めることもあるらしいが、中嶋は生まれた時から持っている能力だったと聞く。総弦もそうだが、幼い頃からそういうものがあると自然とついてしまう知識なのだろう。むしろ、知らないと自分の命に関わるのかもしれない。


「一華、依頼人が来たら憑依頼む。今日鏡を渡してきた男の記憶を見てから、過去どんな関わりがあったかを中心に。なるべく話引き伸ばして時間稼ぐから細かいとこまで頼む」

『りょーかい』


 中嶋が依頼人を出迎え、すぐに一華がとりつく。鏡を見せてもらったり、その男の特徴を聞いたりと中嶋も出来る限りの事をした。しばらくすると一華が女性から出てきて手でOKサインをする。


「では、今日はこの辺で。まだその男性が犯人と決まったわけではないので、くれぐれも不信感を抱かせる言動は控えてください」

「はい、気をつけます。もともと会話しませんけどね」

「ああそうだ、その鏡玄関入って一番奥の真正面につけてはいかがでしょう。あそこ何もなかったですし。誰か会社で仲良い人を呼んで部屋を見せればその鏡を使ってるんだとアピールできます」

「ええ? 使ってるって他の人に知られるの嫌なんですけど。まあ怪しまれないために必要なら。犯人がわかるまでの間だけですよ」


 女性にお礼を言い、ドアがバタンと閉まった途端中嶋がクックックと邪悪な笑みを浮かべる。


「鏡なんぞ渡すからこうなるんだ馬鹿め。同じ場所に鏡を置くかもっつー可能性まで考えないのかねえ」

『さらにでっかい鏡になると効果抜群なんですか?』

「いんや、さっき鏡返す前に裏側の淵の内側に総弦お手製魔除け付けといた。総弦からくすねた魔除けとっておいてよかった」

「スリもびっくりな手際の良さですね、さすがピッキングの達人」


 褒めているのか呆れているのかわからない小杉のリアクションには反応せず、中嶋は一華を呼ぶ。一応小杉には後頭部にデコピンをしておいた。

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