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幽霊と探偵  作者: aqri
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生霊7 生霊への対処(物理)

「年齢を考えればその話は女性にとって悲願だったでしょうに、酷い話です」

『ほんとほんと、相手の気持ちを踏みにじる最低な……あれ? 総弦さんどうしたの?』


 わずかにピリピリした空気を感じ取った一華が総弦に声をかける。その声に中嶋と小杉が総弦を見れば、二人とも「あ」と声をハモらせた。


「つまりアレか、生霊の女には非がなく男の事を思って尽くしたのに裏切られたと。いや裏切るは違うか、元から気持ちもクソもなかったんだからな」


 口元に笑みを浮かべているが目がまったく笑っていない総弦に一華はやや引く。今の話の一体どこにそこまで怒るポイントがあったのかわからず、もしかして物凄い正義感強い人なんだろうかとさえ思ったほどだ。


「めんどくせえからほっとこうかと思ったけど気が変わった。解決を手伝ってやろうじゃねえか」

『ものっすごい邪悪な顔してるけど大丈夫?』


 悪魔のような笑顔を浮かべる総弦を指差して一華は中嶋を振り返る。中嶋はわずかに苦笑しているが、反対する様子はないようだ。


「まあ、なんとなくどういう事するのかは想像つくからいい。そっちは任せる」


 変なスイッチの入った総弦は家に帰った。中嶋は依頼人に電話をし、事務所に来てもらった。なんのことはない、調査報告をしたのだ。女は入院中でとても歩ける状態ではない事、病院の管理はしっかりしていて抜け出したりできないこと、さらに受付の人にそれとなく話を聞きだし彼女には見舞いに来る人物はいないこと、彼女の部屋にパソコンや電話がないことを確認していた。

 自分ではできないからと誰かに頼むのは難しいであろうことを付け加え、彼女が犯人ではないという結論に至ったと説明した。依頼人の男はどこか納得していない様子ではあったが、実行不可能だという確証をもらっては何も言えない。依頼料を支払い帰って行った。相変わらず、生霊の女は傍にピタリとくっついていたが。


 その日の夜、とあるマンションの一室。そこは依頼人の男の住んでいるマンションだ。


『ここまでやっておいて今更だけど、本当にやるんですか』


 呆れた様子で一華がぼやけば中嶋は肩をすくめ、総弦は答えない。ため息をついた一華の視線の先にはぐっすりと眠る依頼人の男がいた。

 要するに男のマンションに不法侵入しこれから派手な事をしようというわけで、総弦はどこかウキウキとした様子で手際よく準備を進める。ただその様子は一華には見えていない。総弦は今姿が見えなくなる細工をしているからだ。具体的に何をするとは聞いていないが、ろくでもないことには違いないと思う。何故なら侵入するとき総弦が一番楽しそうだったのだから。

 ソファの後ろに身を隠している中嶋が一華に自分に憑依するよう指で合図をし、一華が中嶋にのりうつる。一華の目にははっきりと総弦の姿を確認することができた。総弦の回りには仏具にありそうないくつかの道具が並び、数珠を片手に何かを唱え始める。


(アレ何してるの?)

(魂抜きの一種だと思う。魂抜きの詳細は俺の記憶から探しとけ。要はあのおっさんから魂引っこ抜いてるんだろ)


 憑依している状態では魂同士で会話ができる。こうでもしないと、会話をしたら男の寝顔を睨みつけている生霊に声が聞かれてしまうかもしれない。

 男の心臓部分から、するっと白いものが抜ける。それは煙のようにもやもやとしていたが、あっという間に男の形になる。細い糸のようなもので肉体と繋がっているので、死んでいるわけではないのがなんとなくイメージできる姿だ。それを見た総弦は数珠を右手に巻き、ごく自然な流れでブン殴った。


『ぐあ!?』


 男は悲鳴をあげて飛び起きる。と言っても飛び起きたのは魂の方で、肉体はグースカ寝ている。総弦が見えていない男は混乱しているようだ。総弦は足元にあった道具の一つを蹴飛ばしひっくり返す。すると総弦の姿が見えるようになり、男は混乱しながらも総弦に向き合う。


『な、なんだお前は!』


 声を張り上げて怒鳴るも総弦はまったく気にした様子がなく、据わった目で男を見下ろす。


「通りすがりの詐欺撲滅委員会だ」


(通りすがりだろうと撲滅委員だろうと不法侵入も暴力もイカンと思う)

(つーかせっかく姿見えないよう細工したのに自分から壊すなよ。姿見えないと面白くないからそうしたんだろうけど)


 一華と中嶋のツッコミが総弦に届くはずもなく、総弦は男の胸倉を掴む。

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