青い天使が
1
青い天使が浮いていた。
体長は30センチほど。
全体が青く輝いていて
羽があり、ギリシャ衣装。
中性的な顔立ち、無表情。
「やあ」テレパシーが頭の中で。
私「あ、どうも。あなたは?」
青い天使「見ての通りの天使だ」
私「え、えーと、それで私に何かの用ですか?」
「何か願い事はあるか?あれば叶えてやろう」
「・・・・」
「どうした?」
「あまりにも、うまい話すぎて・・・もしかして
叶える代わりに魂をよこせとか?」
「そんなことは言わない。
私はインチキ魔神でも悪魔でも死神でもない、天使だ」
「そうですねえ・・・ええと、ここは思案のしどころ、一生の分かれ道・・・」
その時、表から「グエー!」とキチガイの叫ぶ声。
毎朝、ヤクザのような気違い爺いが大声出してのし歩いてる。
大迷惑。ツバやゴミのポイ捨てをしながら。害虫。
「まずあれだな、あいつを殺してくれ!」
「わかった」ザギッ!異音が響く。
窓を開けてアパートの前を見ると。
赤黒い塊がアスファルトに3メートルほど付いてる。
「あいつをペッシャンコに。よくやってくれました、ありがとう、
でもあれを消すことはできますか?」
「できる」ゴオッと炎。塊が高温で焼かれて消えた。
「これは嬉しい、凄く迷惑していたので。
このあたり、ああいう悪党が多くて」
振り返ると。天使が寄ってきて私の眉を撫でる仕草をした。
「これでよし、ではさらばだ」パッと消える。
2
「今のはダンテ「神曲」で波長を上げる術。ということは!」
体の中に魔力を感じる。「火よ」手のひらから炎が出る。
体が浮く。念力。壁の向こうが見える。透視。
「エスパー能力か。ありがたい。・・・では、まずは透明化!」
体が見えなくなる。壁抜けして外へ。空中移動。
駅前の裏街へ。オーラ視。悪党が判別できる。
「いた!あいつら」自転車、バイク、自動車を
毎日うろついて壊してる連中が30年以上いる。
警察に捕まってもやめない。
「あいつら消えろ!」魔力の網をかける。
6匹ほど座ってタバコを吸ってる連中が苦しみ、倒れて死ぬ。
「熱線!」死体が高温で燃えて灰に変わる。
3
「よし、もっと大掛かりにやろう!」
上空へ。霊体を拡大。もっともっと。
地球全体を覆う。「オーラ視!」
70億人のうち1割、7億人ぐらいは、
他人を痛めつけてヘラヘラ喜ぶ蛆虫とわかった。
「消えろ、悪党ども!」
オーラが黒い連中に魔力の網をかけて血の流れをストップ。
心臓が止まって7億人が倒れて死んだ。
「ふう・・・」霊体を元の大きさへ。
アパートの部屋に戻る。
「これで基本的には他人に親切に接する人間ばかりになったはず。
他人に犬のように、うなったり、汚い声を浴びせる、気違い、
へどはき蛆虫は死滅した。
これでまともな生活ができるようになると思うが・・・」
4
空中浮遊から壁抜けしてアパートの自室へ。
青天使がパソコンの前で浮かび、マウスを
念力で動かしてネットを見ていた。
「えーと、何を?」
「ああ、君は行動が早いな。大工男よりずっと。
あいつは頭が固くてややこしいやり方をしたが。
簡単に目標達成できたので、ご褒美をあげようと思って。
私は君の理解で言うと「超革中」の「宇宙人X」のような者だ」
「地球人の数人をエスパーにして人類を破滅させようと?」
「いや、狙いは君を選んで、君がやった事をさせるためだ。計算通りだった。
ボーナスだ。もう一度、君の意識を拡大させる」
視界が広がった。日本列島から地球サイズへ。先ほどの状態。
「さらに大きく」青天使の声。
太陽を中心に冥王星までを意識。
「ここで知覚を」
「太陽系には生命は地球しかいないようですね。オーラが感じられない。
おお、地球人の意識がわかる。何十億人も。ごく大雑把だけど」
「そう、オーラを認識できる。さっきまでは黒いオーラも多かった」
「悪人削除が目的?」
「そうだ。農作物を農薬で消毒するような事だ。
腐ったミカンは取り除かないと周囲まで腐らせてしまう」
「農作物というと、食うのが目的とか?」
「もちろん違う。エネルギー生命体として進化してほしいだけだ。
黒いエネ生はお断りだ。たとえば」
さらに意識が拡大。銀河系サイズに。
「さて、わかるかね?」
「光生命エネルギーが、あちこちに感じられますね。でも黒いのもいる」
「そう、君の知識でのベリアル、幻魔大王、ゴブーリキ。
他人を苦しめて殺すのが心の底から楽しい悪魔連中だ。
連中の仲間を増やしたくは無い」
青天使が手を振る。
さっきの部屋に戻る。
「私の任務が短時間で終わった。
私自身で行うのはちょっと。よくやってくれた。では」
私の中の魔力が消える。
喪失感で倒れる。
すでに青天使は消えていた。
パソコンはネット状態で放置。
ネットニュースで世界中で原因不明の突然死が大量発生、
と流れていた。悪人ばかりとは判明していない。
5
1時間後。
さて。図書館の本を返して食料の買出しに。
身支度して、アパートのドアを開けると。
闇だった。「?」振り返ると部屋も消えてる。
床が柔らかく変化。「これは・・・」
「何だと思う?」悪意のチンピラ声。
「悪いエネルギー生命体、ザメディのような」
「ん~・・・ああ、合ってる。そういう状況だ。
隠れんぼで、うまいやり方は知ってるか?」
「鬼の後をついていく・・・」
「そうだ。青天使の後ろを気配を隠して追跡した。
この星の人間は悪党が生じやすい血筋。
最初から黒チームのテリトリーだ。
光側が来た時からずっと見張ってた。
おまえは悪人を大量に殺したが、そいつらの魂を俺が吸収した。
そのせいでパワーアップできた。たとえば」
黒い球体が闇壁から出てくる。
透明に変わった。中に青天使が捕まっている。
「で、おまえが今回の救世主・・・さっそく死んでもらう」
黒い手が四方から伸びてくる。たちまち捕まる。
「どうした、抵抗しないのか?
・・・ああ、力を消されてるのか、気の毒に。じゃあ・・・」
ピカッ!光るサーベルを持った青天使が球体を
破って飛び出し、黒い手を切り裂く。
「おッ抵抗できるか?」
「浄化火炎メギド!」闇壁が燃える。
「グワアアア!」
今度は光の球体バリアが、青天使と私を包む。
そして燃える闇壁に突入、突き抜ける。
体長50メートルほどの黒いティラノザウルスが
消えない炎に苦しんでいる。
「グエエエエエ!」ティラノが甲高い叫び声。
雷鳴、雷が落ちる。
そこから黒い亜空間通路が開き、怪物たちが無数に出現。
「大丈夫、こちらも」空に魔法陣。天使軍が飛び出す。
魔獣軍団数万と天使軍数万の激闘。
「デビルマンワールドだな・・・」私は青天使のバリヤーから見物。
15分後。「互角っぽいですね・・・」
「いや、そろそろ決着がつく。君の知覚を開いておこう」
淡路島が浮上、琵琶湖に着陸。鍵が鍵穴に収まるように収納される。
すると。ゴゴゴゴゴ・・・
日本列島が恐竜のような生き物に変化。
他の大陸すべても同様。
口から光の網を放射。
黒い魔獣を捕らえて口に網を戻して飲み込んでいく。
魔獣たちは立ち向かっても無駄、と分かると逃げようとするが。
地球が光の網に包まれていて外に出れない。
30分ほどで決着。数万の魔獣はすべて食われた。
大陸恐竜たちは元の位置で、大陸に戻る。
日本列島恐竜も横たわって列島に戻る。
琵琶湖から淡路島パーツが浮上して大阪湾へ。
私「これはどういうことでしょう?」
「ん~、地球は掃除機ってことやね~」
目の前に目立つ光の人が出現。
「あなたは・・・坂田としお?」
「あんたの認識イメージに合わせて登場しただけやけど~私が神さまやね~。
この星は定期的に、こうやって悪魔ホイホイをしてんねんで~。
食った悪魔獣は、この星の生命エネルギー、意志の消えた熱源として使われてんねん~
地球は魔獣食いの星ってこと~それじゃごきげんよう~」
おかしな歩き方で去っていく。
透明になって見えなくなる。
「人間は全滅したってことですか?」
青天使
「いや、時空ポイントに戻れる。こうやって」
私はアパートの自室に立っていた。
青天使も目の前に浮遊。
「君が悪人削除した後の時間だ」
「ああ、こういうのがありなんですね」
「今度こそこれで」
青天使は姿を消した。