表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/8

挿入。

 朝方。


 挿し込むべき鍵が、完成した。

 

 下ネタではない。

 

 少女に刻まれた「謎の呪い」の穴を突き、奥まで挿し込み、ぐりりと回す鍵のことである。

 

 

 ……断じて下ネタではない。

 疑いの目を向けるのはやめてもらえるか?


「じゃ……挿れるね……」


 我が輩は生成した空中で光る青い光――魔術鍵を指で摘まむ。

 それから、少女の胸元に浮き出たせた術式の「穴」に、それをゆっくりと挿れていった。

 


 ――このとき、我が輩は特に何かを期待したわけではなかった。


 呪いというものに最も有効なのは、問答無用で解呪してしまうことである。

 解く過程でそれが必要ならばまだしも、それがどんな呪いなのか、なにが起きるかなどを考察する必要はない。


「呪いと対話するな」とは、解呪師の資格講座教本などでも一ページ目に書いてある大鉄則なのである。

 呪いを解く者は、自身が呪術者にならぬように気をつけなければならない。


 必然、これを解呪する段になってさえ、「謎の呪い」は謎の呪いのままであった。


 だから、そう。

 まさかあんなことになるとは、思わなかったのだ。




 《《膨張した》》。

 

 少女の身体ではない。

 しかしそれ以外の少女の全てが、である。

 

 それは魔力であり、あるいは魂であった。

 

「っ…………」


 押しつぶされるような幻視をして、我が輩は思わず息を呑んだ。

 それはおそらく、コーラの中にメントスを入れた最初の人類の驚きと同様であろう。

 

 あまりに強い魔力に、目がくらむ。

 這うように逃げだとしてから、慌てて視界を切り替え、通常の目――魔力を不可視に戻す。

 あわや、視神経を焼き切られるところであった。


 な……なんなのだこれは。


 そうして視界を切り替えたそのとき、少女が身を起こしているのが見えた。


「――どうしてそんな隅にいるんです?」


 声がした。

 透き通るような声である。

 

 この部屋に、我が輩の他にはもう一人しかいない。

 ――それが分かっていても、我が輩は尋ねずにはいられなかった。


「……お、お前は、誰だ?」


「誰と言われても」


 魔力焼けした視界が、ようやく戻ってくる。

 先ほどまで意識のなかった少女は、座してこちらを見たまま首を傾げた。



「あなたの奴隷ですよ、ご主人様」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ