奴隷契約と、絡みつくなにか。
常時勃起状態で屋敷に帰り、出迎えてくれた家政婦のキヨさん(48)に少女を預ける。
湯浴びをさせるためである。
ちなみにキヨさんには、少女のことを「や、なんか着いてきちゃってえ……」で押し通した。
…………押し通せたかは難しいところではあるが、じゃーん! 性奴隷を買いました! と喧伝できるわけもないので仕方がないのだ。
これでもこちらはわりと名君として通っているのである。凡夫である諸君には理解できないかもしれないが、体裁というものがあるのだ。
「どうしたものかなあ……」
疲れてはいたが、自室や寝室に行くと普通に出がらしになるまでシコってしまいそうなので敢えて執務室の椅子に腰掛ける。
初対面から道中に至るまでに薄々感じていたことではあったが——少女には、およそ意思と呼べるものが欠落していた。
こちらの言葉や意図を解せず、ただひたすら「奴隷契約」に従って愛情を表現する……。
これでは一人の少女というより、愛玩動物に近い。
「ううむ……」
いやまあそれはそれで……という感じもぶっちゃけあるのだが、なんかちょっと違う。
そのようなものは純然たるエッチではない。
デラックス自慰とでも呼ぶべき代物である。
我が輩が少女を見る。少女も我が輩を見つめる。
アクションに対するリアクション。
これこそが「エッチ」というものではないのか。
湯浴びを終えた少女が、キヨさんに背を押されて入室してくる。
「ボンダンドール様は……この子を、見過ごせなかったんですね……」などと目を潤ませていた。
どうやらキヨさんの中では「酷い扱いに正気を失した美少女を我が輩が救い出した」というストーリーが出来上がっているらしい。
ま、まあ、そうだね、おおむね、そのような、ね。
「……ん?」
とんでもなく可愛くてエッチな犬を撫でている気分で、少女の頭に手を置いて逡巡していたそのとき。
我が輩は、その繊細なぷくぷくの指先でなにか違和感を感じ取った。
それは物理的なものではない。
魔力的なものである。
「奴隷契約のアレか……?」
奴隷契約とは、たしかに一種の強力な魔術的呪いである。
……しかし、否。
注意深く感じ取れば、それが別物であると分かる。
いま我が輩が首を傾げて探っている《《それ》》は、奴隷契約とは別の《《ナニか》》だ。
それは少女の魂に絡みつき、その形を変えるほどに捕縛している。
……なんなんだ、これは。
「――ふーっ、ふーっ……」
夢中になって弄っていたら、少女が顔をゆでだこのようにして息を荒げていた。
目を潤ませて顔を見上げている。
もう……いいよね?
ゴールしても……いいんだよね?
正気を失していても、穴はあるんだよな……。
「いや、しかし……!」
待て待て!
この謎の呪いのことも気にはなるだろう……!
そも、性交をきっかけとして“感染”する呪いだったらどうする。
こんな美少女を抱けるならそれも本望だ――とも言い切れん。
呪いとは、「相手を死ぬよりも惨い目に遭わせたい」という願いの別名でもあるからだ。
というわけで、我が輩がケダモノにならずに呪いの分析を行う唯一の手段は。
「……命令する。“眠れ”」
これだ。
奴隷は主人には逆らえない。
たとえ生理的現象であってもそうである。
「――――」
ぷつり、と糸が切れたように少女が意識を失う。
これで、きゃつの熱っぽい悩ましい視線とは縁が切れた。
残されたのは、白い肢体と湯上がりの甘い匂いを漂わせる艶美な黒髪と、少し高い体温の――いやむりむりむりもう抱く絶対抱く。