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01-04 護衛の奮闘

「シスターマーサ」ジャコビンはため息交じりに話す。「ニール様の傷を手当してやってください」

マーサがニールの傷を見ようとしたところ、横からまた別の声がかかった。

「おい、ニール。このままだと夜になってしまう。早く町に進んじゃった方がいい。」と護衛のダグラスが話しかける。

「その魔術とやら時間かかるのなら、馬車が動いているときにやらねえか。また獣が襲ってきたら、たまらんぞ」

その忠告を受けると、ジャコビンは空を見上げた。確かに太陽はもうほとんど向こう側に隠れてしまっていて、空が暗くなっていた。深い橙色の空にピンク色の雲に少しづつ陰りが見える。周りが林に囲まれているだけに、暗さが一層引き立てられた。

「…そうですね…、馬車の中で手当てをしましょう。これ以上ここにいるのは危険でしょう」

「分かった。シスター、中で頼む」


そう決まると、ジャコビンは声を上げてシスター達を呼び寄せた。ちゃんと全員いるか点呼する必要があった。十五人全員いるのを確認できた後、三台の馬車に割り当てられた。

ニールとダグラスと一緒に相乗りしたいと、希望するシスターが出てきて、中々収集がつかなかった。活躍した英雄とお話ができる絶好のチャンスと見て希望する子が多かった。結局、ほとんどのシスターは真ん中の馬車、ダグラスの乗るものへとなだれ込んだ。ニールが乗る一番後方の馬車に関しては、ジャコビンはが睨みを利かせたので、他のシスターは彼と相乗りするのをあきらめた。


「あの、マザージャコビン」いつの間にか横に現れたケルシーが恐る恐る尋ねる。

「なんですか、シスターケルシー」

「あたしとグレイスですが、一緒に後ろの馬車の方に乗っていいですか」


グレイスは他のシスター仲間達と距離を置きたいというのをケルシーが察したため、彼女はそう申し出た。グレイスに嫌がらせをする子もいるので、その者らと別の馬車に乗せてあげたいという考えだ。ジャコビンは断ろうと思ったが、これ以上もめるのは得策ではないと思い、舌打ちとともに苛立たし気に承諾した。

「早く乗りなさい」

考えが変わる前に、ケルシーはグレイスの手を引いて、急いで後方の馬車の荷台の中へ駆け込む。中では、ニールは腕のシャツをめくっていて、患部をマーサに見せていたところだった。荷台の一番奥には狼の死骸が束ねてあったため、他の馬車程の空きスペースは少なかった。


護衛を含めた全員が馬車に乗り込んだのを確認すると、それぞれの御者が鞭を振るった。ギシ、ギシという音とともに車輪がゆっくりと回り始めて、三台の馬車が動き出した。そのころには、太陽は完全に隠れてしまっていて、一日の仕事を終えた後の眠りについていた。代わりに月が反対側にその姿を少しずつと存在を強めていて、夜の到来をお知らせしていた。


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